WRITERS' COLUMN
ライター 天野 史彬の『ベッドルームひとりぼっち』
2014年12月号掲載
今月の大森靖子インタビューは自分にとってとても大きな出来事だった。インタビューと言っても、彼女の発言に対して、私はほとんど頷くことしかできなかったのだけど。取材が決まったのも、『洗脳』の音源が届いたのも取材日の前日だった、という言い訳は意味を成さないだろう。『洗脳』をもっと聴き込んで臨んでも、きっと私には頷くことしかできなかっただろうな、と思う。そのぐらい、大森靖子というアーティストは自分自身を理解しているし、自己プロデュースできているし、目的意識がはっきりしている。今回のインタビュー、私が彼女から引き出したかった言葉の約7割は、取材開始15分ほどの段階ですべて、彼女自身の口から率先して語られた。まず、そこに驚いた。1年前、アルバム『絶対少女』リリース時にインタビューした時の大森靖子は、ここまで説明的ではなかった。むしろすべての意図をはぐらかすことに意識を向けているように見えたのだが、きっと大森自身が、このメジャー1stアルバムのタイミングでは説明しなければいけない、語らなければいけないと判断したのだろうと思う。
今回のインタビューの中で大森が語る"本質"という言葉は、この時代、とても重いものとして響く。この"本質"という言葉を私なりに翻訳すれば、それは"人間"とか"感情"とか"命"とか、そんな言葉になる。こんなこと書くと、感覚的すぎると怒られるのかもしれない。でも、敢えて今は感覚的でいたいのだ。大森靖子も本当は説明なんてしたくないはずだ。重箱の隅を突いて知ったような顔をするのではなく、わかる/わからないで物事を判断するのではなく、好きか嫌いかを大声で叫びたい――そんな思いに突き動かされる今の自分がいる。生きることに、あなたとの関係に当事者でいたいと思う自分がいる。
七尾旅人が2010年のアルバム『billion voices』で描いた"数多の声"の時代。あのアルバムが描いたように、ネット・カルチャーの発達により、私たちは"声"を手に入れた。しかし、どれほどの人々が、"返事じゃない言葉"を発することができているのだろうか。"いいね!"やリツイートなんかでコミュニケーションは取れないと誰もが気づいているはずなのだ。だから大森靖子は生身でこの世界と擦れ合いながら、感情的であることを肯定し続ける。ゆえに、『洗脳』のジャケ写を撮影したのが、"感情が、全ての人達に、降り注ぎますように。"と歌う「永遠なるもの」を収録した中村一義の97年の大傑作『金字塔』のジャケ写を撮った写真家・佐内正史だということにも、何かしらの意味を感じてしまう。
もちろん、"本質"を追い求めることは綱渡りのような作業であり、大森靖子自身、多くのリスクを背負っていると思う。でも、やらなきゃいけない。そんな彼女の覚悟に打ち震えている。
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