WRITERS' COLUMN
ライター 天野 史彬の『ベッドルームひとりぼっち』
2014年05月号掲載
ここ最近はずっとART-SCHOOLの新作『YOU』ばかり聴いている。痛みと哀しみによって紡がれた音楽が、こんなにも聴き手にとって優しい存在になるのかと強く思い知らされるようなアルバムだ。
このアルバムは「革命家は夢を観る」という、盟友ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文をプロデューサーに据え、環ROYのラップを大胆にフィーチャーした、これまでのART-SCHOOLの曲群の中でも異彩を放つ楽曲で幕を開ける。この曲は、言わば"宣誓"である。爪弾かれる美しいメロディと、矢継ぎ早に繰り出される環のラップ。そこから浮き彫りになるのは、"革命家"――あるいは"夢想家"、"理想主義者"と言い換えてもいいだろう――としてのART-SCHOOLの、青臭くもピュアで確信に満ちた姿だ。この曲でART-SCHOOLは、夢を観ることの困難さを受け入れながらも、ただひとつ、"音楽は人を変える"という、その確信だけは手放そうとしない。
しかし、そんな繊細ながらも強い意志に満ちた宣誓の後に広がるのは、未だ満たされることのない痛みと哀しみの景色である。だがそれこそが、ART-SCHOOLが"あなた"に対して観せることのできる、そして彼ら自身が観続けている"夢"なのだ。そもそもART-SCHOOLとは、90年代グランジやシューゲイザー的な価値観を根っこに持ち、その繊細な魂と世界とがぶつかり合い、擦れあった傷跡から滲み出る鮮血の中にこそ自らの聖域を築いてきたバンドだ。彼らは、常に孤独と憎しみの繭に包まれていた。それは今も変わらない。しかしこの『YOU』というアルバムにおいて彼らは、そんな孤独と憎しみの繭を、今度はあなたを包むものとして、怒りではなく優しさによって紡いでみせた。それはまるで"あなたの心が穏やかでありますように"と、そんな祈りを捧げるように。たとえ細い腕だろうと、少しでもぬくもりを与えたくて抱きしめるように。このアルバムの音が――たとえ激しくバーストする曲だとしても―――貫して滑らかなシルクのような質感を持っているのはそのためだ。このアルバムは、これまで幅広い音楽素養や高いソングライティング能力によって逆に包み隠されてきたART-SCHOOLの本質を露にしている。それは"隔てる"ためではなく"守る"ための高潔な強さだ。
このアルバムは、正真正銘"あなた"のために作られたアルバムである。それは今、この原稿を読んでいる"あなた"のことでもある。私はこのアルバムを聴くたびに、初めて『LOVE/HATE』というアルバムに出会い、部屋でずっとその作品を聴き続けていた高校生の頃の自分を思い出すし、90年代にRADIOHEADやNIRVANAに出会って人生が変わったという、10代の頃の木下理樹の姿すら想起することができる。どうか、今までART-SCHOOLを聴いたことがない人や聴かず嫌いだった人にも、この『YOU』という作品は手にとってみてほしいと思う。そんな"あなた"のために、私はこの原稿を書いた。
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