WRITERS' COLUMN
ライター 天野 史彬の『ベッドルームひとりぼっち』
2015年03月号掲載
0.8秒と衝撃。の新曲「ジャスミンの恋人」がとてもいい。彼らが元来持っている叙情的でメロディアスな側面と、ソリッドなビートで躍らせるダンサブルな側面が、とても高い次元で融和している。過剰に泣かせるわけでも過剰に踊らせるわけでもなく、そのぶん、聴く者の生活の中の繊細な心の揺れ動きにそっと寄り添ってくれるような曲だ。アレンジがシンプルになったことで、今まで以上にメロディとビートの輪郭がはっきりと聴こえてくるようになったことも、その要因だろう。アコギとトラックが同時にグルーヴを生み出していくカタルシスがたまらないし、J.M.の歌唱は、クールな楽曲に対して唯一無二のエモーションをこの曲に与えている。間違いなく、この先のハチゲキの指針となる1曲だろう。
ハチゲキの音楽的な思想の根本にあるのは、ポスト・パンクの発想だ。"ポスト・パンク"というのは明確な音楽ジャンルではなく、70年代後半のパンク・ムーヴメント直後に登場した実験性と越境性を武器にロックを刷新していったバンドたちの総称のようなものである。当時のポスト・パンク・バンドたちは、決して技術に優れていたわけではない。ただ、彼らには斬新なアイディアと、そして、ロックだけには留まらない音楽愛があった。ある者はかつてのファンクやジャズを取り入れ、ある者は最先端のエレクトロニック・ミュージックに手を出す。そうやって実験を繰り返していく彼らの音楽は、決してわかりやすいものではなく、言ってしまえばファンクやジャズをやりたくても演奏が下手過ぎてできていない、みたいな場合も多々あった。だが、だからこそ彼らの音楽は、これまで存在しなかった音楽を産み出し、聴く者を驚かせ、今やスタンダード的な扱いを受けているものも多くあるのだ。ハチゲキも、かつての音楽を参照し、実験を繰り返しながら、現在のこの国の音楽シーンでは他に類を見ない音楽を産み出している。「ジャスミンの恋人」は、そんなポスト・パンク的な土台の上に立ち、尚且つ、そこに塔山のフォーク的な内省とJ.M.の拳の効いた歌声が重なり合うことで生まれる独特の歌謡性がミックスされることで、類まれなる名曲として仕上がっているのだ。
ハチゲキはずっと一貫したメッセージを放ってきたバンドだ。それは端的に言えば、"君は君であれ"ということだ。そう、かつてのポスト・パンク・バンドたちが、下手くそで、歪で、他のどんな音楽とも違っていて、でも、その持ち前の愛とアイディアゆえに、オリジナルな存在で在り続け、今やひとつのスタンダードとして認知されているように、"正しくなくたっていい。君はどんなに周りと違い、間違っても、君はただひとりの君なのだ"と、ハチゲキはその音楽性でもって聴く者に伝えている。僕はハチゲキなら、他のどんなバンドも見せたことのない景色を日本の若者に見せてくれると信じている。
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