WRITERS' COLUMN
ライター 天野 史彬の『ベッドルームひとりぼっち』
2015年04月号掲載
今月は、"日常"と密接に結びついた音楽の話。
Courtney Barnettの『Sometimes I Sit and Think, And Sometimes I Just Sit』、そしてシャムキャッツの『TAKE CARE』。この1週間ほど、この2作品に彩られながら日々を送っている。どちらも素晴らしい作品である。
"心の微振動"――オーストラリアはメルボルンを拠点に活動する女性SSW、Courtney Barnett。彼女の音楽に私は勝手にこんなコピーを付けている。幸福でもなければ不幸でもない......というか、毎日がその両極をちょっとずつ行ったり来たりしている。そんな日常生活の中で感じる人の心の細やかな揺れ動きが、そのノイジーなギター・サウンドに表れている。ぼんやりと電車に揺られながら聴いたりすると、とても心地よい。彼女の音楽とよく引き合いに出されるのは、90年代のグランジ――Courtney自身が影響を公言しているNIRVANAや、カヴァーもしているLEMONHEADS、あるいはDINOSAUR JR.あたりだが、"虚無"や"無気力"といった感情(というか、精神状態)を剥き出しのノイズとメロディに宿して吐き出していた当時のバンドたちと、Courtneyの音楽は確かに地続きだ(引き合いに出したバンドに比べ、Courtneyはあっけらかんとしてユーモラスだが。ここには世代の差もある気がする)。巨大な理想や幻想を描きはしないが、その分、どこまでも実直に"人"を見つめる、その冷静な眼差しと屈託のないエモーションが、起き抜けのホットコーヒーのように沁み渡る、苦くて優しい音楽である。
"予感"――街をぶらぶらと歩きながら聴くシャムキャッツのミニ・アルバム『TAKE CARE』は格別だ。その1曲目を飾る「GIRL AT THE BUS STOP」は、少しばかり心を浮き立たせる。清涼感の溢れるメロディと囁くような歌声、そして"ちょっとした"躍動感をはらんだビートに合わせて歩きながら、何か素敵なことが起こりそうな予感を抱く。去年リリースされたアルバム『AFTER HOURS』が私たちの"くだらなくて美しい日々"そのものだったとしたら、『TAKE CARE』は、そこからちょっとだけ浮き上がる。『AFTER HOURS』は、私たちの日々が何の変哲もなく"続く"ことを抱きしめたが、『TAKE CARE』は、その続く日々の中にも宿る小さな奇跡――それはまるで、あの娘と目配せをするような――があることを教えてくれるのだ。これは、サニーデイ・サービスの「恋におちたら」やスピッツの「正夢」と同じ効能だ。「GIRL AT THE BUS STOP」の歌詞に出てくる"天使"という言葉は、そんな"小さな奇跡"の象徴のような気がする。Courtney Barnettがコーヒーだとしたら、こちらは渇いた喉を潤すサイダーのような、甘くて微かな刺激が気持ちのいい音楽である。
Courtney Barnettとシャムキャッツ――彼らの音楽は、私たちの日常が淡々と、しかしドラマティックに動き続けていることを教えてくれる。彼らの音楽には、そんな日常を優しく受け入れ、そこに小さくて、でも大きな変化を与える力がある。
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