WRITERS' COLUMN
ライター 天野 史彬の『ベッドルームひとりぼっち』
2014年11月号掲載
SEBASTIAN Xがメジャー・デビュー作のタイトルに『イェーイ』と名付けたのはとても重要なことだと思っている。"イェーイ"――具体的な意味やメッセージ性を持たないこの言葉でSEBASTIAN Xが、永原真夏が捕らえようとしたもの、それは"音楽の可能性"そのものであり、私にとってそれは"音楽を語ることの可能性"そのものでもあった。
私はSEBASTIAN Xに関して原稿を書くとき、自分自身に対して制約を設けてきたフシがある。それはどういう制約かといえば、たとえば"生命力"のような抽象的かつ漠然とした言葉をなるべく使わない、ということである。まぁ、そこまで厳しく自分に言い聞かせていたわけではないので、どこかで無意識的に使っているかもしれない。ただ、SEBASTIAN Xについて文章を書くときは自分の思考と妄想を最大限駆使した上で、それをなるべく抽象的にならないように、あくまでも社会やシーンと照らし合わせながら、具体的な分析と説明をもって言葉にしようとを心がけてきた。故に文章が異様に長くなってしまうこともあったが、その"長さ"も本望だった。何故かと言えば、彼らの音楽を言葉数少なく抽象的な言葉で書ききってしまうのが、何はともあれ"もったいなかった"からである。
SEBASTIAN Xが一貫して表現し続けていること、その本質にあるもの、それは言ってしまえば"音楽そのもの"である。音楽が鳴る――その瞬間の空気の震える感触、温度、匂い、色彩、感情......ジャンルにカテゴライズされる以前、"商品"としてパッケージングされる以前に人と音が触れる瞬間に生まれる感動や熱量そのもの。それがSEBASTIAN Xである。だからこそ、そこには明確に言語化できる意味やメッセージが存在しない。言葉で定義できる"正解"が存在しないのである。しかし裏を返せばそれは、聴き手ひとりひとりがそれぞれ自由な景色や想い、物語をSEBASTIAN Xの音楽の中に見出すことができる、ということでもある。音が鳴る瞬間、永原真夏が"イェーイ!"と叫ぶ瞬間――そこで私たちが得る感動はそれぞれ違う。"イェーイ"に喜びを見出す人もいれば哀しみを見出す人、あるいは怒りを見出す人もいるだろう。それを聴く場所やタイミングによっても、感じ方は異なるはずだ。"イェーイ"という叫びが持つ意味を完全に証明し切ることなんて誰にもできない。だがそれ故に、この叫びの裏には何百何万という"解釈"の可能性も秘められているのである。私が抽象的な言葉で彼らの音楽を語ることを"もったいない"と思う理由はここにある。私にとってSEBASTIAN Xの音楽に触れることは、音楽の無限の可能性に触れる瞬間であり、そして言葉と思考の無限の可能性に触れる瞬間でもあるのだ。私は"音楽批評"という行為の存在意義すら、SEBASTIAN Xの音楽に触れるたびに再確認されられている。音楽の前では私たちはどこまでも自由だということを、SEBASTIAN Xはいつも教えてくれる。
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