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INTERVIEW

Japanese

fhána

2024年01月号掲載

fhána

Member:佐藤 純一(Key/Cho) towana(Vo) kevin mitsunaga(Sampler etc)

Interviewer:吉羽 さおり

-kevinさんも10周年ライヴ終わりで曲を作っていた感じですか。

kevin:そうですね。僕は4曲目の「Turing」を作曲したんですけど、これは佐藤さんから明確にオーダーがありました。僕の書く曲ってもともと、fhánaの結成以前からハッピーで祝祭感のあるものばかり作っていたんですけど、今回はまさにそういう曲をやってほしいという話で。今回のEPは"夢"、"ドリーマー"がキーワードだったので、ファンタジックなほうの夢を押し出していったのがこの「Turing」でした。タイトルや歌詞については佐藤さんと林(英樹)さんにお任せをしているんですけど。

-kevinさんの曲らしいポップでファンタジックなサウンド世界ですが、歌詞が乗ることでそのニュアンスも変わってくるというか、皮肉がたっぷりこもった曲でもありますね。

kevin:そうかも。

佐藤:この「Turing」は、映画"イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密"にもなった、コンピューターの父と言われているイギリスの数学者 アラン・チューリングから取っていて。

-第2次世界大戦で、ナチスが用いたエニグマ暗号を解読したという人ですね。

佐藤:歌詞の内容はAIだったり、システムに管理されている社会みたいなことに対する皮肉が込められていますね。歌詞には"彼は羊の夢見る?"とかも出てきますけど──。

-SFのモチーフも出てきますね。

佐藤:フィリップ・K・ディックの"アンドロイドは電気羊の夢を見るか?"じゃないですが、そんなテーマもあるので。それで「Turing」というタイトルで。kevin君に、明るくて祝祭感があって、ディズニー的なドリーミーな曲を作ってほしいとお願いしたんです。最近のkevin君は、なんか暗い曲を作りがちなところがあって──。

kevin:そうなんですよね。以前と僕の心境が変わったのか自分ではわからないんですけど、普通に作ると、ほかの人から見ると以前より明るくないぞっていう感じみたいで。

towana:どうしたの!?

佐藤:雰囲気がとかじゃなくて、明確にマイナー・コードとかの曲なんですよね。

kevin:自分ではそんな意識はなかったんですけどね。これは、もうちょっと明るくとか、さらにディレクションを受けて新しく作り直したりもしたんです。何か心境の変化でもあったのかな......大人になっちゃった(笑)?

towana:大人になっちゃったんだー。

kevin:あとは、最初に作ったデモではこんなにワルツ的なリズムではなかったんですけど、ディズニー感を出すならやっぱり3拍子が合うかなと思ってより振り切ってますね。

佐藤:最初にkevin君から上がってきたデモは、Aメロ、Bメロ、サビっていうJ-POP的なフォーマットの曲だったんです。でもkevin君の良さって、普通のフォーマットを無視したトラックメイカー的なかっこいい音、サウンドメイキングなので、構成とかも自由に作ってくれっていう話はしていましたね。

-そういうことでは、今回でkevinさんならではのポップスが再構築された感覚ですかね。さらに、この曲ではtowanaさんのヴォーカルがコンピューターっぽく歌っていて、歌のディレクションも細かくありそうですね。

towana:これは結構ディレクションも面白くて。fhánaは基本は作曲した人がヴォーカルのディレクションの席に着く方式なんですけど、いつもは佐藤さんがやっているから、あまりkevin君はディレクションに慣れていなくて。

kevin:むしろtowanaさんに"どう思います?"ってアドバイスを求めていました。

towana:その後ろで佐藤さんが"こっちのほうがいいんじゃない?"って助け舟を出すみたいな。平歌部分でコンピューターっぽく歌うのは佐藤さんのディレクションでしたね。

kevin:サビ以外の部分に関しては、ピッチ補正、オートチューンでちょっとケロらせているんです。ケロらせた音を重ねて、最終的に完成にもなっているから、よーく聴くとケロケロした感じもあって。そこもロボット感を出している感じになってますね。

-「Turing」がEPの真ん中あたりの曲で、このポップな曲を境に、後半へと向かっていく、いい流れも生んでいます。

towana:EPって、アルバムよりもストーリーづけがしやすいなっていうか。フル・アルバムで必然性のあることとかを考え出すと、曲数が多いぶん長いから大変だと思うんですけど、EPくらいのサイズ感ってすごくいいなって思いました、初めてやってみて。

佐藤:ちょうどいい感じはあるね。

towana:起承転結じゃないですけど、物語を作りやすいなって。それは新発見でもありました。

-EPは"夢"、"ドリーマー"がテーマとなったということですが、1曲目を飾る「夢」は制作のどの段階でできた曲ですか。

佐藤:曲を作った順で言うと、最後にできたのが「夢」でした。ただ、新体制となって初めてのツアー"fhána Looking for the New World Tour 2023"の登場SE曲として、この「夢」のもととなるインストの音源があって、これを歌にしたいなとは考えていたんです。それで歌モノに作り変えつつ、前半はポエトリー・リーディングで後半は歌になる、EPのオープニング的な曲にしようという感じで。当初はこの1曲目の「夢」が"Beautiful Dreamer"というタイトルで、3曲目の「Beautiful Dreamer」は別のタイトルでと考えていたんですけど、3曲目がすごくいい曲になったし、ドリーマーっぽいなと思ったのでこっちを"Beautiful Dreamer"にしようとなって、それで1曲目が"夢"というタイトルに落ち着きました。

-そうだったんですね。「夢」という語りで始まる作品はより印象的で、またどんな物語になっているんだろうという作品への期待感も募ります。

towana:私はポエトリー・リーディングには苦手意識があって(笑)。これって語りがうまくないと、世界観に入れないじゃないですか。でも佐藤さん、ポエトリー好きですよね?

佐藤:語りが好きなんですよね。語りが入ってるものがfhánaに限らず好きだったりするので、やりたくなるんですよね。歌ってる人が語ってる、もしくは歌詞を書いている人が語ってるというのが良くて――。

towana:あ、わかった。それ絶対、(佐藤が好きな)小沢健二さんでしょ? 私はオザケン(小沢健二)をやらされてるのか。