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INTERVIEW

Japanese

Lucky Kilimanjaro

 

Lucky Kilimanjaro

Member:熊木 幸丸(Vo)

Interviewer:蜂須賀 ちなみ

心はいったん置いておいて、身体だけで踊りましょう


-2曲目の「でんでん」は、ダンス・ミュージックだけどヴォーカルは和音階というLucky Kilimanjaroの得意技が炸裂しているような曲です。

『DAILY BOP』(2021年リリースのフル・アルバム)に収録されている「太陽」という曲から"パラレル・ワールドの和"というような雰囲気を、自分の面白い表現としてひとつ使っていて。言い方が変ですけど、その系譜でよりエグい曲ができたなと思っています。ベースとドラムでしっかり踊らせていくというところを構築し直した曲でもありますね。僕らの音楽はみんなの物語を助けていく側面がある一方、人生には、自分の物語を1回壊さなくてはいけない瞬間があると思っているんです。例えば僕にも、今まで使ってきた音楽的な手法を1回壊さないとその先に行けない瞬間が制作中にもあって。そういう"いったん全部忘れませんか"、"全部なかったことにして踊りましょう"という時間を作りたくて書いた曲です。だからある種、壊していくための曲ですね。

-だからこそ"幽体離脱 牢破り"という歌い出し。

そうです。心はいったん置いておいて、身体だけで踊りましょうと。最近のLucky Kilimanjaroは、自分の気持ちが移り変わっていくことを認めて、自分のアイデンティティをどんどんしなやかにさせていこうという発想で活動しているので、心の流動性を認められたら、自分の過去を死なせることもできるよね、という発想ですね。あと、夏といえばお化け屋敷じゃないですか。映画"平成狸合戦ぽんぽこ"のように、妖怪がパレードしているようなイメージで、何かを壊すことをテーマにパーティー的な音楽を作れるんじゃないかと考えていきました。

-この曲はとにかく気持ちよく聴けるなと。どのフレーズも、このメロディにこの歌詞以外ありえないと思わせられるほどしっくりハマっている。

曲を作るときは毎回"今伝えたい何か"が確実にあるんです。それは言語化できるかできないかわからないくらい抽象的なものなんですが、そのイメージに少しでも近づけるような音や詞を選んでいる感覚があって。どういう温度で、どういう光の当たり方がいいだろうとデザインしているような。「でんでん」は全編にわたって音と詞が上手くハマったなと感じています。特に"幽体離脱 牢破り/残るはただ燥げる body"というところは、すべてがすごく上手くハマったなと感じています。

-あと、"剥がす肩甲骨 All right"という歌詞がこのバンドらしいですね。

健康が一番おしゃれだと、自分たちで言ってしまっているので(笑)。ちゃんとご飯を食べてちゃんと寝ましょうというのは、 僕らの基本的なメッセージのひとつとして、どんどん発信していきたいです。

-偶然かもしれませんが、今回のシングルは2曲とも、仏教的な世界観を感じさせる曲ですね。

そうなんですよ。僕は無宗教ですし、仏教を学んだことがあるわけでもないんですが......強いて挙げるなら、手塚治虫の"火の鳥"からの影響なのかもしれません。"火の鳥"、すごく好きなんです。コンビニエンス・ストアでよく売っている大きなサイズの本が家にあって、小さい頃から何周も読んでいます。

-どういうところが好きなんですか?

何がいいんだろう......わからないけど、すごく好きなんですよね。輪廻の描き方が希望に満ちているから好きなのかもしれないです。神秘的でカッコいいなって。言葉選びの面で影響を受けている気がします。今回の2曲の歌詞にあるような単語が自然と出てきたのは"火の鳥"の影響かもしれませんし、他の曲の歌詞も含めて、僕が取り扱っている単語に"火"や"光"が多いのも、"火の鳥"の影響なんじゃないかと思ったりします。もちろん"火の鳥"だけではなく、今まで読んだいろいろな本、いろいろなインプットを経てこういう表現になっていると思うので......うん、ちょっと、わからないです(笑)。

-10月29日から[Lucky Kilimanjaro presents. TOUR "YAMAODORI 2023"]が始まります。今年2本目のツアーですね。

1本だと物足りないんです(笑)。年1枚アルバムをリリースして、アルバムのコンセプトを体現したツアーを1本、そうじゃないツアーを1本回るというのが、今のLucky Kilimanjaroのライフスタイルになっています。

-今回はアルバムを引っ提げないほうのツアー。そして"YAMAODORI"というワードを掲げたツアーは2022年にも行っていましたね([Lucky Kilimanjaro presents.TOUR "YAMAODORI 2022"])。

はい。"YAMAODORI"という単語は造語なんですが、Kilimanjaro=山ということで、Lucky Kilimanjaroで踊ることを"山踊り"と呼びましょうという僕の冗談から始まった言葉が、今ではツアー名になっています。2023年における"踊る楽しさ"を今のLucky Kilimanjaroが持っている曲で再解釈することがテーマのツアーです。簡単に言うと、Lucky Kilimanjaroらしく、心躍る2時間をみんなで作るツアーを予定しているということですね。

-そして現在は全国各地の夏フェスに出演中。手応えはいかがですか?

すごくいいですね。お客さんが期待を持って来てくれているというか、前よりもいろいろな人にLucky Kilimanjaroを知ってもらえているんだなと感じています。僕もアプローチしやすいですし、お客さんも自由になれていますし、非常にいい空気でフェスを回れています。メンバーも楽しそうです。

-来年で活動開始から10周年を迎えるLucky Kilimanjaro。"この感じはバンドを続けてきたからこそだな"と実感する瞬間はありますか?

最初にリリースした『FULLCOLOR』(2015年リリース)というミニ・アルバムがあるんですが、そこに収録されている「Burning Friday Night」という曲がTikTokを発端に、いわゆる"バズった"と言われる現象が起こって。2023年のライヴで「Burning Friday Night」でみんなで歌いながら踊る、しかもそれが他の曲にも接続しているという状況は、バンドを続けてきた重みがあるなと思います。それに、ライヴでお客さんが踊っているのを見て、"僕の作りたかった世界を少しずつ実現できている"と感じられているのは、続けてきたからこそだろうという感覚もあります。でも"もう10年経つんだ"、"3年くらいしかやっていない気がする"というのが率直な感覚です。自分たちが音楽的に実現させたいことや目標点を考えると、"まだまだスタート地点だな"と思います。

-現時点で思い描いているLucky Kilimanjaroの最終的なゴールは?

やはり踊ることのハードルがもっと下がっていてほしいんですよね。SNSでお客さんから"Lucky Kilimanjaroの曲を聴いていると、電車の中なのに踊りだしたくなっちゃう"と言われるんです。僕は内心"いや、踊ればいいんじゃない"と思っていて。たしかに電車の中で踊るという行為は日本ではまだ異端で、難しいことだと思います。でも海外から日本に遊びに来た人が、バスとかで音楽を流しながら普通に踊っているのを見ると"このくらいオープンでいいのに"って思います。"自分の思う楽しい音楽社会ってなんだろう?"と考えたときに、やはり、踊るという行為がライトなものになったらいいのにと思うんです。もしもそういう社会の空気が醸成されて、そこにLucky Kilimanjaroもひとつ貢献できたなと思うことができたら、ゴール......いや、達成したら達成したで、たぶんゴールだとは思わないだろうな(笑)。『FULLCOLOR』をリリースしたときは"Zeppでみんなで踊れたらすごくいいね"と言っていたのに、Zeppでライヴさせてもらえるようになった今でも、ゴールに辿り着いたという感覚はまったくないですね(笑)。

-なるほど。

でも、そういう社会を常に目指しているのは確かですね。もっとみんな自由でいいと思うんです。ダンスでも歌でもなんでもいいんですけど、自分のフィールを表現できるような何かをちゃんと持っている状態、悲しいことを悲しいと表現している人を他の人が認められている状態、それぞれが表現していることを互いに許容できる状態を作ることが、すごく重要だと僕は思っています。

-特に2020年以降、感情を外に出しづらい空気がより生まれつつある気がします。コロナ禍があって、行き場のない感情に悩まされた人も多かっただろうし。

僕もそう思います。コロナ禍以降、人の感情が箱のようなものにしまわれてしまったように感じます。一方で、この3年間の反動が今のライヴ・シーンの盛り上がりに繋がっていると思うので、この反動や心の動きをちゃんと運動エネルギーに変えていきたいですね。

RELEASE INFORMATION

デジタル・シングル
『後光』
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NOW ON SALE
 
1. 後光
2. でんでん

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