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INTERVIEW

Japanese

LACCO TOWER

2019年08月号掲載

LACCO TOWER

メンバー:松川 ケイスケ(Vo) 細川 大介(Gt) 塩﨑 啓示(Ba) 重田 雅俊(Dr) 真一ジェット(Key)

インタビュアー:山口 智男

現在のLACCO TOWERに迷いは微塵もない。前2作を経て、メンバーたちが、歌謡メロディとエモーショナルなロック・サウンドを掛け合わせた自分たちの音楽性に、より確信的になったことは明らかだが、そのうえで、LACCO TOWERらしさをより純粋に追求したメジャー5thアルバム『変現自在』。そこに収録された全10曲がファンを満足させることは、まず間違いない。その意味では安心の1枚と言うこともできそうだが、改めてメンバーたちに話を訊いてみたところ、実はバンドは静かに、静かに変化を遂げていた。結成18年目を迎え、バンドが見据えている未来も変わってきたようだ。


激情型の犯罪と言うよりは知能犯というか(笑)、そういうことができるようになってきた


-劇的な変化はないのですが、『遥』(2017年のメジャー3rdアルバム)、『若葉ノ頃』(2018年のメジャー4thアルバム)とリリースしてきて、今のLACCO TOWERには迷いなどこれっぽっちもなくて、ただいい音楽を作りたいとだけ考えていることが伝わってくるような、清々しい作品になりましたね。どんな思いと共に作っていったんでしょうか?

真一:おっしゃっていただいた通りだと思います。『若葉ノ頃』ってタイアップ曲が結構多かったんですよ。なので、考えながら作っちゃったんですよね。一番初めのもととなるものを作るときにタイアップのテーマに寄せがちだった。今思えばですけど。でも今回は、タイアップとか、前提とかが何もないところでイチから自由に作り始めた曲ばかりなので、"この曲は、激しい曲だから自分たちができる無茶を詰め込んでもっとやっちゃおう"とか、「若者」のような曲は、"もっといい曲に、もっといい曲にしよう"とか、そんなふうに一曲一曲振り切りながら作っていったんです。

-ある意味聴きやすい、何回でも繰り返し聴ける作品だと思うのですが、一曲一曲のアレンジは練り上げられているというか、磨き上げられているので、歌はもちろん、演奏という意味でもすごく聴き応えがあると感じました。

細川:今回、ギターにしても極力重ねることはせずに、自分が一番聴かせたい部分をメインにして、いつもだったらもう1本入れるところを入れずにすっきりさせました。とにかくすっきりさせたかったんですよ。すっきりさせてひとつひとつのフレーズを立たせたかったので、それが聴きやすさに繋がったのかな。音を抜けば抜くほどあるものが際立ってくるので、その感覚はすごく大事にしましたね。

-その感覚はリズム隊のおふたりも同じですか?

塩﨑:プリプロの段階では逆にいろいろやってみたんですよ。そこから引き算したものもあるし、そのままいっちゃったものもあるし。どちらかと言うと思いきりフルスイングした曲が多いので、いくんだったらいこう、聴かせるところは聴かせようってことを意識しました。

細川:今プリプロって出ましたけど、僕らプリプロをやらないバンドだったんです。

-え!?

細川:リハーサルだけやって、まずドラムとベースだけ録っちゃう。そこから録ったものに対してどうするか考えるっていう。でも、今回はちゃんと、いったん曲ができたらプリプロっていうのをやってみようって。もう17年やってきてアレなんですけど(笑)、ちゃんとスタジオに入って、人に届けられるぐらいのクオリティになるまで仕上げて、1回録ってから、その数ヶ月後にちゃんとレコーディングし直すってことを初めてやったんですよ。そういう意味でも曲をこれまで以上に磨き上げることができたというか――

塩﨑:当たり前のことなんですけどね(笑)。

-18年目にしてプリプロを初めてやってみようと思ったのは、どんなきっかけで?

細川:一番はリズム隊からクレームが多かったから(笑)。もっと練りたいっていうのはあったよね。

重田:それもあったし。

塩﨑:制作スケジュールを大介が代表して管理するようになって、"ここがレコーディングの本チャン日だから、それまでにこのタイミングでそれを仕上げて"って共有するようになったんです。これも当たり前なんですけど。

松川:大介が、スケジュールを見つつ、真一が曲を作っている裏で僕に"この曲はこういう感じだから、こういう感じで歌詞を書いておいて"って伝えて。そういうフィクサー的な役割を買って出てくれたんです。

細川:とりあえずマスタリングの日程まで決めちゃって、真ちゃん(真一ジェット)には"そのスケジュールに合わせて絶対曲を作ろうよ"って進められたのは良かったですね。

-そういうやり方はどうでしたか?

松川:僕は、歌詞で悩んだことがないので全然大丈夫でした。ただ、真一がどうかなっていうのは、大介とも話しながら。やっぱりすべての起点になる人なので。

真一:たしかに以前よりも"出さなきゃ"ってプレッシャーはありました。だから、いつもだったらもっと練ってから出すものも"間に合わない"ってすぐに捨てて、"こっちのほうができそうだからこっちを出そう"みたいな感じにはなってましたね。その結果、こういう傑作ができたんだから、それで良かったのかなと思います。しかも、もっと練ればいいものになるだろうなって曲もこの先使えると考えれば、ネタも溜まっている。だから、良かったと思います。

-重田さんはいかがでしたか?

重田:"ここ、こうやってほしい"とか、"こっちのほうがいい"とか、今までだったら本チャンで言われることを、プリプロで細かいところまでかなり固めてからレコーディングに臨むことはできましたね。もちろん本チャンでも"ここはこうしてほしい"と言われるんですけど、プリプロで詰めて、さらに詰めるわけですから、今までよりも一段階上のアレンジになっていると思います。

-ところで、いただいた資料に載っていた松川さんのコメントの中に、"大人のロックバンドがひねり出した傑作"という言葉があったんですけど、"大人のロックバンド"の"大人"っていうのは、どんな意味で"大人"なんですか?

松川:バンドを始めた頃って、すごく初期衝動があって、何かに対してムカついていたというか、具体的な何かではないんですけど、そういうイライラが、ものすごくあったんですよ。言い換えると、誰かをすぐに悪者にしていたんですけど、そこから17年バンドをやらせてもらって、年齢も重ねてきて、ムカつくことが少なくなってきたんです。数年前から落ち着いてきたというか。でも、『若葉ノ頃』を出してからしばらくしたくらいからですかね。改めていろいろなことにイライラしてきて(笑)、フラストレーションが溜まってきたんです。決して何にとか誰にとかってわけではないんですけど、そういうものが溢れてきたんですね。でも、若いときほど、手に握りしめたものを壁に投げつけて終わりってこともできないんですよ。それが正解だとも思ってないところもあるし。でも、投げないことも正解だと思っていない自分もいて。そのなかで、無理に大人な曲を作るのではなく、そういう衝動の出し方を変えることができたというか、激情型の犯罪と言うよりは知能犯というか(笑)、そういうことができるようになってきた感覚があって、そういう意味でロック・バンドとして少し大人になれたかなっていうところがあるんです。

-知能犯的な作り方をした曲を今回の10曲の中から挙げるとしたら?

松川:まず曲順がそうですよね。アーティストとして"俺たち、こんな感じなんだぜ"っていうのを前面に出したいと思えば、曲順も変わっていたと思うんですよ。でも、「若者」が今回リード・トラックで、MVも撮らせてもらったので、単純に人の目に触れる機会が一番多いのは「若者」なんですよね。そこで興味を持ってくれた人がアルバムを聴いたとき、1曲目にその「若者」が聴こえてきたら重なり合う確率は高いじゃないですか。だったら1曲目でいいんじゃない? っていう。アーティストの部分とそうじゃない部分のバランスがうまいこと取れてきた。そこに"ほんとはこうなんだけどな"って気持ちは全然ないし、そういう気持ちがあったら、今の僕らはそうしていると思うんですよ。

-そして、そういう曲もあると?

松川:"アレンジをしないアレンジ"って大介が言ってたんですけど、何もしないでその曲を聴かせるというか。僕らはあれこれやりたいほうなんですけど、今回はできるだけやらずに聴かせる曲が何曲かありますね。

細川:「炭酸水」とか、「永遠」とかはそうですね。今までだったらもっと展開させて、ある意味武装していたと思うんですよ。やっぱり曲が凝っていると、やっている自分たちは安心できる。しっかりと考えたってところで落ち着けるんですけど、今回考えた結果、着飾らなくても大丈夫なくらい僕らはこの曲のメロディに自信を持ってやっているんだってことを、表現できるようになってきた。アレンジをしないことが怖くなくなったんです。これまでものすごい数の曲をどれだけ大きなものにできるかアレンジしてきたからこそ、アレンジしないことの大切さもやっと知ることができたというか、知らないでやっているよりも、知っていてやっているほうが絶対説得力は違うと思うんですよ。