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LIVE REPORT

Japanese

LACCO TOWER

Skream! マガジン 2019年08月号掲載

2019.07.15 @LIQUIDROOM ebisu

Writer 蜂須賀 ちなみ

1曲目は「杏子」で、始まりは松川ケイスケ(Vo)のアカペラ。巻き舌をしたり、音程をずり上げるような歌い方をしたり、ドスを効かせたような声になったり......とその歌声で様々な表情を見せたあとバンド・イン。4分の4拍子と8分の6拍子を行き来しながら5人のサウンドは激しさを増していく――

今年はワンマン・ツアー"独想演奏会"の前半戦=ライヴハウス編のファイナル公演として開催された、毎年恒例、LACCO TOWERの周年記念ライヴ。テンポのアップダウンとともにバンド・サウンドが唸りを上げる2曲目「純情狂騒曲」までを聴いて、"あれ、今日はなんかヤバそうだぞ"、という予感に胸がざわついた。構成としてはかなり歪で複雑なのに、アンサンブルには継ぎ接ぎはなく、極めてしなやか且つ華麗に進んでいく感じがある。キメがキマッていく痛快さに観客は熱狂し、場内の熱量は上昇していくばかりである。声を上げながら拳を掲げる観客へ"いいね!"と松川。ショルダー・キーボードに持ち替えた真一ジェット(Key)が前に出てきてパフォーマンスした「傷年傷女」までを終え、一時暗転すると、フロアから"あっつい......"という声が聞こえてきた。

先ほどまで弾けていた真一ジェットが繊細な旋律を奏でると、セッションを経て「薄荷飴」へ。再び真一ジェットの旋律から「夜鷹之星」、そして「恋人」を演奏すると、重田雅俊(Dr)が曲間をビートで繋げながら"俺ら今のところめっちゃ楽しいけどもっと超えていくつもりだから、みんなもついてこいよー!"と観客を頼もしく鼓舞した。「鼓動」の"何重にも"というフレーズを利用しながらの細川大介(Gt)、真一ジェットによるコール&レスポンスはもはや音程が外れていたが、みんなの笑顔とともに同曲本編へ突入できたから結果オーライということで。バラード「告白」は真一ジェットと松川の二重奏に細川、塩﨑啓示(Ba)、重田が加わるアレンジで、その順にスポットライトが点く演出が幻想的だった。

真一ジェットのソロに同期によるグロッケンやストリングスの音が重なり、「非幸福論」が始まると幻想的な雰囲気が一変。ここで"後半戦参りましょうか!"(松川)と披露された新曲「地獄且天国」がすごかった。タッピング・ギターと鍵盤の連符、シンコペーションで動くリズム隊が重なり合うイントロの時点でもうカオス。その後"楽しんでますか、みなさん?"と尋ねる松川の声がヘロヘロでちょっと笑ってしまったが、それほど壮絶な展開だったということだ。

"バンドっていい曲作っていいライヴして......の繰り返しで悪魔に首根っこ掴まれながら活動してる感じがあるねんけど。ひとつ言えるのは、自分の信じた道を進んで行けばこれだけの人が応援してくれるってことです"(松川)というMCのあと、「夜明前」、「雨後晴」を観客とともに歌い鳴らし本編終了。ここで、最初の2曲を聴いたときに気づいた"あれ、今日はなんかヤバそうだぞ"という高揚感がSEを含めた17曲を終えてもまったく冷めなかったことに改めて気づく。

アンコールで松川がこんな話をしていた。大人になると、型にはまる、上手くこなす方法を覚えるようになる。そんななか、バンドや音楽もそうなのかな? と思ってしまうことがあったのだと。それが悔しくて、仙台でのライヴ後、メンバー5人で飲みに行き、そこで出た答えは"バンドやるのって楽しいよな"という、17年前とまったく同じだったのだと。

そんなMCのあとに披露されたもうひとつの新曲「若者」は、"定番を今一度疑う"という姿勢でもって2度目の青春を謳歌する、"17歳"を迎えたバンドの今を赤裸々に綴ったものだ。結成から17年。彼らを慕い、彼らの元に集まるバンド仲間はたくさんいるが、思えばこのバンドには追随してくるような後輩がいなかったと言うか、音楽性という面に関しては同じカテゴリーに入れられそうなバンドが他には思いつかない。この日のライヴではそういう意味で孤独であり続けた、このバンドの独創性が終始爆発していた。5人の演奏はどこまでも自由で、歳を重ねたからこその説得力もあって、"こんなことできるバンド、他にいるか?"と思うような場面がいくつもあった。ライヴ中ワクワクせずにいられなかった。しかし同時に無性に感動した理由はそういうところにあったんだと思う。

8月21日にリリースとなるアルバム『変現自在』のことを塩﨑が"ここに来てLACCO TOWER進化したなって思えるアルバム"と表現。重田から"絶対解散しない"宣言も飛び出したMCのあとの「一夜」、「薄紅」で、感動のあまり泣きそうな顔をしたファンを前に松川が"笑えよ!"と何度も言っていたことが印象に残っている。泣き笑いの光景のなか、17周年に因み17本打ちで締めくくったラスト・シーンは非常に美しいものだった。


[Setlist]
~SE~ 狂想序曲
1. 杏子
2. 純情狂騒曲
3. 檸檬
4. 狂喜乱舞
5. 傷年傷女
6. 薄荷飴
7. 夜鷹之星
8. 恋人
9. 鼓動
10. 未来前夜
11. 告白
12. 非幸福論
13. 地獄且天国
14. 火花
15. 夜明前
16. 雨後晴
En1. 若者
Double En1. 一夜
Double En2. 薄紅

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