Japanese
LACCO TOWER
Skream! マガジン 2017年12月号掲載
2017.10.28 @Zepp DiverCity TOKYO
Writer 石角 友香
今年8月リリースのメジャー3rdフル・アルバム『遥』で、LACCO TOWERは言うところの"白"のベクトルへ大きくウィングを広げた。日本語の美しさが際立つ松川ケイスケ(Vo)の作詞家としての才能は、このアルバムでより素直な表現を伴っている。優しさを曝け出すことも強さのひとつであり、そのことでより遠くまで届く音楽が完成し、今回のツアーで確認されてきた"軌跡"が、ファイナルであるこの日、明らかになったのではないだろうか。
ひとりずつ登場してセンターで最敬礼したのち、ポジションについて彼らがまず鳴らしたのは「喝采」。無力さや悲しみを言葉にしてくれたあなたに"手を叩こう"と歌う、アルバムの本質を示唆するこの曲でファンが起こしたクラップは、そのままこの曲で想いを解放してくれた松川に対して、そしてバンドに対する喝采だった。かと思えば、ナイトメア感たっぷりな真一ジェット(Key)のフレーズからブラストビート、高速8ビートから四つ打ちへと起伏の大きい「純情狂騒曲」で、文字どおりの狂騒を作り出す。
そして曲間の水を打ったかのような静けさもまた印象的。そこへ瞬くようなピアノが響き、"悲しい声を悲しく出せるような"という、素直になれないからこそ誰よりもそれを希求する歌詞が新作の中でも大きな共感を呼んでいる「夜鷹之星」が奏でられ、ここにいるすべての人の心の中で同時に反芻されているように見えた。
また、明度が高くポップに疾走するレパートリーが続いた「鼓動」、「葵」、「共鳴」では、サビで手が上がるという、最近のライヴではもはやJ-POPでもアイドルでもテンプレ化した情景が、なぜか彼らの場合、そう見えない自然な動きに見えたことも記しておきたい。熱いものがこみ上げて上がる拳もあれば、光を掴みにいくような開かれた手もある。時間はかかったけれど、他のバンドが築けなかった道をLACCO TOWERは自ずと開拓したのだと思う。そのタイミングで演奏されたのが「相思相逢」というのもなんともしっくりくる。
さらに嵐の中に突っ込んでいくようなアンセム「非幸福論」が激しさと儚さを交互に立ち上げる。緩急をつけた演奏にシフトした今のLACCO TOWERだが、やはりこの過剰なまでの戦闘モードは他に変えがたい。重田雅俊(Dr)のバスドラの威力が遺憾なく発揮される。さらに戦うテンションを上げる「火花」のエンディング前には、応援曲にちなんで塩崎啓示(Ba)が"ザスパクサツ群馬"(※日本プロ・サッカー・チーム)のマフラータオルをお立ち台で広げ、咆哮する場面も。
曲が終わるたびに"楽しい? 楽しめてる?"と確かめていた松川が長めのMCで話したのは、まだLACCO TOWER結成前、上京しZepp Tokyoで見たTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTのライヴのこと、そして彼らも所属した名門TRIADの復活タイミングでまさか自分たちがこのレーベルからデビューすることになるとは、という喜びと驚き。そして、変わることは怖いけど、もうかっこいい風でかっこいいことをやるのは違うんじゃないか? と、作品性はもちろん、アーティスト写真やアートワークを変えた新作の理由を語り、その決心のきっかけとなった「遥」が披露され、大げさに言えば15年の軌跡をその場にいる全員で祝っているようなこの日のライヴのクライマックスを迎えたのだった。新作ツアーということで言えばここで本編を閉じても良かったのかもしれない。だが、"笑って帰るんやで!"というバンドの総意が、「薄紅」を本編ラストに配置させたかのようだった。ダブル・アンコールでは、初披露の新曲「花束」も演奏。この3連のロッカ・バラードがこれからどう育っていくのか? 楽しみでならない。

[Setlist]
1. 喝采
2. 未来前夜
3. 純情狂騒曲
4. 傷年傷女
5. 擬態
6. 夜鷹之星
7. 夕顔
8. 葉桜
9. 鼓動
10. 葵
11. 共鳴
12. 相思相逢
13. 怪人一面相
14. 非幸福論
15. 火花
16. 遥
17. 薄紅
en1. 灯源
en2. 夕立
Double en. 花束
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