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INTERVIEW

Japanese

LACCO TOWER

2019年08月号掲載

LACCO TOWER

Member:松川 ケイスケ(Vo) 細川 大介(Gt) 塩﨑 啓示(Ba) 重田 雅俊(Dr) 真一ジェット(Key)

Interviewer:山口 智男

-ところで、松川さんの歌詞は曲ごとにいろいろなテーマを歌いながら、未来を変えるには今を懸命に生きるというか、"夜明前"という曲名を借りるなら、夜明け前の可能性の大きさを歌うことが大きなテーマとしてあったような。

松川:未来って今の延長じゃないですか。ある程度の年齢になったり、ある程度の経験をしたりすると、なんとなくこうなるんだろうなって頭に浮かんできませんか? それをきれいな答えにしたり、正解にしたりしようとして、みんな頑張る。それは全然間違いじゃない。でも、僕はちょっと違うと思ったんです。特にこういう芸術活動というか、正解のないものを作っている人たちに関しては、なんとなく見えてきたそれに対して"いや、そうじゃないんだよ"ってやっていくことが、未来が変わっていくことなんじゃないかって。なんとなく見えている未来を変えるために今を変えるっていうのは、意外と今までやろうとしたけどやってなかったんじゃないかなと思ったんです。"あそこに行きたい"とか、"あそこでデッカい何かをやりたい"とか、そういうところからもう少し現実的になって、そこに行くための確実性を求めだしたというか。それもあって"今"を歌っているものが多いかもしれないですね。"失敗った(読み:しくじった)"とか、そういうキーワードが多いんですよ(笑)。

塩﨑:うんうん。

松川:なんとなくわかるじゃないですか。誰でもない何かになりたいんですけど、誰でもない何かって、誰も歩んでいない道だからすげぇ難しい。逆に、あの人たちみたいになるんだろうなって思うのはお手本がいるんだから簡単で。ただ、僕らはそこに行っちゃダメなんですよね。まず行けないと思うし、行けたとしても二番煎じでしかないし、あまり意味がない。この5人でやっていくことの意味。そういうことを考えた1年でしたね。

-17年やってきて、バンドに取り組む気持ちがこのタイミングで新しい方向に向いてきたようですね。

松川:そうですね。ほんとに好きなことだったら24時間365日考えられるってよく言うじゃないですか。あんなの大嘘だと思ってたんですが(笑)、最近365日とは言わないですけど、起きている時間LACCO TOWERのことをずっと考えている。悔しくて目が覚めることもありますからね(笑)。今までなかったんですけど、18年目でそう思うって、いいことなのかなって考えたりします。

-そういうことも歌いながら、恋愛関係の美しい場面や醜い場面も歌わずにいられないのが松川さんで。

松川:ありがとうごさいます(笑)。そう思っていただけて嬉しいです。

-「線香花火」の歌詞はストーリーテラーとしての真骨頂。聴きながら鳥肌が立ちました。ふたりが線香花火をしている情景を歌っただけにもかかわらず、そのふたりのこれまでがなんとなく想像できる。そして、"二人初の最後"っていうのは、ふたりの別れなのか、ふたりの死なのかっていう。

松川:あぁ、そうですね。たしかに(笑)。

-さて、劇的な変化はないとは言いましたが、プリプロの他にも新しい挑戦はあったんじゃないでしょうか?

細川:新しい挑戦と言えば、「必殺技」ですね。今まで僕らの激しい曲って必ずサビではマイナー調になっていたんですよ。メジャーな曲って得意じゃなかったんですけど、今回はあえてサビでメジャーなコードにいく曲が作りたいってところから、最後に「必殺技」を作ったんです。メジャー調にすると、ポップになりすぎちゃうんじゃないかって怖さがあったんですけど、今回やってみて、メジャー調の曲を作っても、どこか憂いを帯びちゃうっていうのがわかったので、新しい扉を開けたのかなと思ってます。

-ダンサブルなサビも新しいのでは?

塩﨑:ライヴの風景を思い浮かべながら作ったんですよ。

細川:ライヴに関しても、今までだったら絶対NGだったことを最近なくしてきているんです。それこそコール&レスポンスなんて数年前だったら考えられなかった。それが今はできる。最近のバンドの感じとしては、誰かが思いついたことはどんどんやっていこうよってところからライヴも作っていて――

松川:曲のアレンジも変わるもんね。

細川:そう、曲のアレンジも変えていっているんです。既存のアレンジにとらわれずに、そのライヴが一番良くなるようなアレンジをリハで考えてやっているんですよ。それがきっとアルバム作りにも影響していると思います。そういう意味では、17年やってきて、ライヴも曲作りもどんどん自由になっていっている感じはありますね。

-他にはいかがですか?

真一:結構コーラス・ワークにこだわりましたね。

-たしかに多いですよね。しかも耳に残る。

細川:いつもよりも聴こえるように、意図的にコーラスの音量も大きくしているんですよ。

真一:基本的にレコーディングで歌うのはケイスケだけなんです。でも、今回コーラスは俺のほうがいいと思った曲は、俺が歌っているんですよ。「若者」の真ん中とか、「夜明前」とかはそうですね。「夜明前」のコーラスは一番凝りました。こんなにハモりと関係ないところで重ねたコーラスって、たぶん初めてじゃないかな。ハモりで一番凝ったのは「永遠」。メイン・ヴォーカルの1オクターブ下が入っているんです。もともと人の声が好きで、声を楽器のように使いたいんですよ。その手法をすごく使っていると思います。

-そうか。冒頭で劇的な変化はないと言っちゃいましたけど、お話を聞いてみると、実はそうでもなかったという(笑)。

松川:でも、それぐらいのほうが嬉しいんでしょ?

真一:そう。気づくか気づかないかぐらいの塩梅を狙っているんですよ。

松川:それはよく言ってるよね。

-そして、6月16日に始まったワンマン・ツアー"独想演奏会"が、10月22日まで続くわけですが。

松川:9月21日からのホール・ツアーが『変現自在』のレコ発になります。

-最後に、その意気込みを聞かせてください。

塩﨑:去年『若葉ノ頃』のレコ発として、本数はそんなに多くなかったんですけど、ホール・ツアー("「若葉ノ頃」発売記念ホールツアー2018「五人囃子の新時代」")をやらせてもらって、ライヴハウスで16年やってきたバンドがホールを初めて回ってみて、またやりたいと思ったんです。それで去年の年末から今年の2月まで、レコ発ではなかったんですけど、もう1回("ホールツアー2018-2019「五人囃子の文明開化」")やったんですね。そのとき、自分たちでも思っていなかった曲の広がり方を感じられたんですよ。それで、今年もぜひと思って。今回の新曲はホールに合う曲が多いので、スケールアップしたところを見せられるんじゃないかなと。やりたいこともたくさんあるんですよ。ライヴハウスでは感じとれない観やすさ、音の聴きやすさってところも含め、小さい子から僕らの親世代までたくさんの人に観てもらいたいですね。