Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

INTERVIEW

Japanese

ねごと

2017年12月号掲載

ねごと

Member:蒼山 幸子(Vo/Key) 沙田 瑞紀(Gt) 藤咲 佑(Ba) 澤村 小夜子(Dr)

Interviewer:沖 さやこ

-『SOAK』はねごとなりのエモーショナルな表現が詰まっていると感じました。それはねごとが持っている潔さがいい方向に作用しているのも理由のひとつかなと。

沙田:『ETERNALBEAT』を作るまでの間は2年くらいあったので、1曲に対して1年くらいかけてああでもないこうでもないと熟成していけた。でも今回は制作期間が2~3ヶ月という感じだったので、自分の瞬発力と判断力と"これでいくぞ"という決め手みたいなものをちゃんとぶつけていかなきゃいけなかったんですよね。それはエモみに結構繋がっているんじゃないかなと思います。苦労のエモみではなく、やるしかない! というエモみというか(笑)。『SOAK』に関してはそういう潔さがいい方向に出たのかなと思います。

-「シリウス」はサビ始まりのキャッチーな曲で、昔のねごとの香りも感じさせます。こちらは作詞が小夜子さん、瑞紀さんと幸子さんが作曲。

澤村:これも「undone」と同じく過去に作っていた曲で。私はスネアの音がカンカン鳴っているようなこの生感と、メロディがすごく好きだったんです。この曲が忘れられなくてどうしても入れたいと言いました。歌詞もメロももともとあったので、それをそのまま使うと思ってたら"書いてみる?"と言われたので、じゃあやろうかなということで書きました(笑)。みんなの書いたものは生々しい言葉や現実感がある歌詞が多かったので、逆にいままでやったことがないストーリーっぽいものを作ってみようかなと思って。情景を描いて、絵本をめくるような歌詞にしようと思って書き始めました。

蒼山:たぶんメロディは私が書いたものと瑞紀が書いたものが合体してるのかな......? 作ったのが昔のことだからあんまり覚えてないんですけど(笑)。

沙田:昔作ったものでもいまの自分たちと地続きだから特に違和感を覚えることはないんですけど、やっぱりBPMや歌い回しの速さとか、サビ感というのを大事にしていた時期に作った曲なので、それは昔のニュアンスだなと思います。サビ始まりなのは前から引き継いでいるところですね。アルバムには今年作った曲がほとんどだけれど、ねごとの変わらないカラーはちゃんと残っているから、いまでも過去の曲を入れられるなとも思います。

-幸子さんが作詞作曲している「サタデーナイト」と「水中都市」はBOOM BOOM SATELLITESの中野雅之(Ba/Prog)さんがプロデュースされていますね。幸子さんはまずどのような方向性でデモを作っていったのでしょうか?

蒼山:「アシンメトリ」(2016年リリースのEP『アシンメトリ e.p.』収録曲)、「DANCER~」とわりとフロア・ライクなダンス・チューンが並んでいるなかで、次もBPMが速い曲がいいのかな? と思ってそういう曲を作っていたんですけど、中野さんがばっさり"単純にあんまりいい曲じゃないね"と言ってくださって。そのときに"グッとくる曲を書くのがいいよ"と言ってくださったんです。「サタデーナイト」はデモだともっとゆったりしていたので、リード曲にするにあたって"こうすると重みがあって華やかになるから、いままでのねごとにないものを出せると思うけどどうですか?"といまのテンポを提案していただいて。中野さんのスタジオでサビ以外のメロディを作り変えて。その場その場で浮かんだメロディを中野さんに聴いていただいて、ひとつひとつ"それはちょっとどうかな"や"うん、いいと思う"など意見をもらって詰めていく......という感じでした。

-「アシンメトリ」と「DANCER~」は中野さんプロデュースというのがはっきりわかるものでしたが、この2曲はねごとの色もだいぶ強く出ていると感じました。

蒼山:中野さんも哲学を持っている人で、作る音像すべてに意味を持っていらっしゃるけれど"ねごとの曲だから"というのをすごく気にしてくれていて。今回は"ギターの音をもっと入れてバンド感を出していきたい"という話をしていて。この2曲の録りは時間がタイトだったんですけど、中野さんも"メンバーみんながどう思っているのか話して制作をしたい"と言ってくださったんです。"いままでのねごと"と"これからのねごと"のことを考えながら提案してくれていたのかな、と思います。「水中都市」は「DANCER~」を作っているタイミングでできた曲で。

藤咲:中野さんは「水中都市」が好きすぎて、私たちの知らない間に「DANCER~」と同時進行で「水中都市」のオケを作ってくれていたんです(笑)。聴いたらすごく良くて。

沙田:「水中都市」は出だしがビートに特化しているけれど、どんどんバンド感が増していってエモくなっていったので、それがすごくいいなと。前作ではできなかった中野さんとのコラボレーションができた曲なのかなと思いました。

-中野さんの思うねごとのいいところ、益子さんの思うねごとのいいところに差異があって、それぞれがそこを引き出そうとしているから、ねごとの音楽の幅が広がっているんでしょうね。自分たちの音楽に関して意見をもらうと、自分たちだけでやりたいことを突き詰める以上に"自分はどうしたいんだろう?"と深く考えられるところはあるかもしれないですし。

沙田:両極端なおふたりだし、"ねごと"というバンドの解釈も中野さんと益子さんで全然違うから、"じゃあ自分はねごとに対してどういう解釈をしているんだろう?"とじっくり考えることが多かったです。いろんな意見を聞きつつ、貰った意見に左右されすぎずに、一歩前に踏み出せたかなと思います。もう少し年齢が若かったら全部受け止めて混乱してしまったかもしれない(笑)。でも演奏するのも"ねごと"だし、盤を出すのも"ねごと"という名前だし。自分たちの音楽は自分自身で背負っていくものだから、逆に気張らずにトライできたなと思います。

藤咲:そうだね。いろんな意見はあるけれど、やるのは自分たち。昔だったら貰った意見は100%全部取り入れようとしていたと思う。でもそうすると自分がやりたいことはなんだろう? とパンクしちゃうと思うから......。どう自分に還元して、自分たちの音楽にしていくか――そういうことができるようになったのはすごく大きいと思います。

澤村:昔に比べてみんな好き嫌いをはっきり言うようになったので、そこが気持ちよく音楽にできているから、いい感じだと思います。

蒼山:お二方とも一線で活躍してきているミュージシャンで、しっかりした信念を持ったうえでいろんなことを投げ掛けてくれるので、すごく考えさせられる機会が多くて。それはすごくありがたいことだなと思います。"自分の強みってなんだろう?"と考えられるし......だから曲作りに関してどんどんシンプルになってきていますね。もともと自分が持っている部分のどこを信じていったらいいのかを考えるきっかけを毎日貰っているような感覚でした。とても大切な出会いです。もちろん挑戦もしていきたいし大事なことだけれど、自分たちの持ち味をどう見せていくか、どう鳴らしていくかも大事だと思っていますね。