DISC REVIEW
M
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Mrs. GREEN APPLE
10
バンドの枠を飛び出し躍進を続けるフェーズ2期のヒット曲を網羅した、10周年を祝うベスト盤。ストリーミング・チャートを独占してきた錚々たるラインナップが1枚のCDに詰め込まれた。鮮烈な新章開幕を飾った「ニュー・マイ・ノーマル」、華麗なダンスで度肝を抜いた「ダンスホール」に始まり、高難易度のタッピング・ギターが炸裂した「ライラック」や、大森元貴(Vo/Gt)初主演映画を彩った壮絶なスケールの「天国」、そして初期の幻の一曲「慶びの種」の新録。その歩みを辿るように1曲ずつ聴き進めると、彼等の才と努力の結実が大衆の心を掴み続けてきた華々しい挑戦の歴史が見えてくる。流行の波を乗りこなし、次々に新たなエンタメを提示していくミセスの快進撃はとどまるところを知らない。(中尾 佳奈)
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Mrs. GREEN APPLE
ANTENNA
活動再開後、初となるフル・アルバムは初めてタイトルをあらかじめ決めず、感受性を信じ、自由に生み出した曲を緻密に制作で形にしていったアルバムだ。現在進行形のミセスのフル・コースであり、ドーム・ライヴへの期待が否応なく高まる完成度とスケールの大きさが実在している。ハード・ロック・ギターが響き渡る「ANTENNA」もケルト音楽を彷彿させる楽隊調の「Magic」もどちらもドーム・アンセムのスケールを持っているのが今のミセス。宇多田ヒカルにも通じるようなR&Bの先鋭的な構造を持つ「Blizzard」、藤澤涼架(Key)がストリングスとホーンのアレンジに参加している「ケセラセラ」のオーケストレーションの楽しさ、メンバー3人の演奏がメッセージでもある「BFF」など、ブラッシュアップのひと言に止まらない自由な現在地が鮮烈。(石角 友香)
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Mrs. GREEN APPLE
Soranji
"我らは尊い。"という言葉は非常に危うい側面も持つと思うが、それが生死の境目にいる人を生の側に繋ぎ止める言葉だとしたら、と想像する。目の前の人にも遠くにいる人にも伝わるか確信がないとき、魂を振り絞って"そらんじる"ことを、壮大なようでいて勘違いをさせない控えめな品性も伴ったアレンジで仕上げたことが、「Soranji」最大の留意点だったのではないだろうか。映画"ラーゲリより愛を込めて"のどんな場面で響くのか期待が募る。2曲目は"フェーズ2"のキックオフに作られたという、Adoに提供した「私は最強」のセルフ・カバー。自身を鼓舞するニュアンスも含まれたまさにアンセムだ。3曲目はミセスがプロデュースするフレグランスが持つ"香階"にあたる音階から誕生。ポップ且つ幻想的な新たな仕上がりだ。(石角 友香)
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Mrs. GREEN APPLE
Unity
『Variety』から7年。同作と対になる部分も散見されるフェーズ2の1作目。サビへの飛翔やビート感にらしさを窺わせながら間奏で若井滉斗(Gt)、藤澤涼架(Key)共にブラッシュアップしたリフの応酬を聴かせる「ニュー・マイ・ノーマル」、ホーン・アレンジやカウンター・コーラスやギター・カッティングが鮮やかな「ダンスホール」、高速BPMでasmiとスリリングな掛け合いをする「ブルーアンビエンス」、アトモスフェリックなSEがモダンな印象を添えながら、幹になるバンド・サウンドは骨太な「君を知らない」、「インフェルノ」を洗練させたようなソリッドなマイナー・チューン「延々」、90年代的なピアノ・バラードに大森元貴(Vo/Gt)の本音が刻まれた「Part of me」。再開に相応しい6つの表明と言えそうだ。(石角 友香)
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Mrs. GREEN APPLE
5
日本のミレニアルズ~Z世代の不安と理想を映し出しつつ半歩先を走ってきたミセス、結成からの7年を集約。初期の高速BPM且つ情報量の多い「StaRt」や「Speaking」。人間としての成長がおおらかなサウンド・プロダクションに着地した「どこかで日は昇る」、音楽のエンターテイメント性を積載した「Love me, Love you」。ミセスがミセスたる所以とも言える、人の摂理や矛盾にフォーカスする「パブリック」と「アウフヘーベン」という一対の曲。さらに、生身の音を聴かせる新曲「アボイドノート」。初作品収録で今回再録した「スターダム」が冒頭を飾り、ラストにまったくの新曲「Theater」を配置したことにも注目。バンドという概念を更新し続けてきた、"フェーズ1"を凝縮した初ベストだ。(石角 友香)
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Mrs. GREEN APPLE
Attitude
オーケストレーションやエレクトロ、R&Bなどウィングを前作で広げ、そもそもミセスがどんな態度=Attitudeで音楽を奏でているかを証明するかのようなアルバム。ギター・ロック成分に驚いた「インフェルノ」やエクストリームな「Ke-Mo Sah-Bee」、より素直なギター・ロック「嘘じゃないよ」、ロマ風の弦のアレンジと日本語に聴こえないAメロがユニークな「Viking」、ヴォードヴィル的な華やかさの中にQUEENを想起させる大仰な転調が盛り込まれた「lovin'」。展開の多さでは「ロマンチシズム」も共通するニュアンスが。また、大森元貴の歌と藤澤涼架のピアノのみで展開する「Circle」のシンプル故の個性。そして、ありのままを定着させた理由は楽曲「Attitude」で確かめてほしい。(石角 友香)
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Mrs. GREEN APPLE
ロマンチシズム
2019年第2弾シングルは資生堂"SEA BREEZE"のCMへの書き下ろし。が、CMで流れるパンキッシュなブロックの次にキモになる"愛を愛し"という威風堂々としたサビが登場する。そのあともめくるめく展開を見せるあたりが『ENSEMBLE』以降の曲構成といった印象。加えてラヴ・ソングにも取れるが、根っこには倫理観がしっかり根を張っているのは大森元貴(Vo/Gt)らしい。「How-to」はアグレッシヴなエレクトロとエッジの効いたギター・リフ、トリガー的なドラム・フレーズが拮抗する仕上がりが痛快だ。そして「月とアネモネ」は2014年にすでにあった曲を今回完成させたもの。キメの複雑なポスト・ロック的なパートや大森と山中綾華(Dr)のAOR的なデュエットも聴きどころだ。(石角 友香)
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Mrs. GREEN APPLE
僕のこと
2019年第1弾リリースは、大森元貴(Vo/Gt)が"勝負やスポーツに対して曲を書いたことがない"なかで、彼ならではのスタンスで"第97回全国高校サッカー選手権大会"のために書き下ろしたナンバー。そのタイトルが"僕のこと"なのは、自分がどう生きているかを歌うことでしか、エールを送ることができないという意味なのではないだろうか。静かな歌い出しから、ストリングスやホーンも加わったスケールの大きなサウンドが立ち上がるアレンジは、顔を上げると仲間やライバルのいるスタジアムを想起させ、ラストは静かに閉じる。見事な構成だ。アッパーななかに切なさが溢れるミセス節と言えそうな「灯火」、サンプリング的な感覚を生で演奏し、ピアノが存在感を示す「Folktale」も新章を示唆している。(石角 友香)
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Mrs. GREEN APPLE
青と夏
ミセスが3rdアルバム『ENSEMBLE』からわずか3ヶ月半でニュー・シングルをリリース。本作では、久々にバンド・サウンドに回帰している。映画"青夏 きみに恋した30日"の主題歌として書き下ろした表題曲は、疾走感溢れるアッパー・チューンで、同映画の挿入歌「点描の唄(feat.井上苑子)」は、しっとりとしたデュエット・ソング。3曲続けて聴くと「ア・プリオリ」だけが異色に感じられなくもないが、前2曲が体現する夏および青春特有の儚い煌きは、大森元貴(Vo/Gt)に"ア・プリオリ"な視点があるからこそ描くことができるものだ。尖った曲だけでなく、多くの人に対して開かれた曲の中でここまで彼らが裸になれたのは、今回が初めてではないだろうか。(蜂須賀 ちなみ)
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Mrs. GREEN APPLE
ENSEMBLE
音楽そのもので夢や希望や理想を表現すること、それがMrs. GREEN APPLEの指標だったと、そもそもの彼らの志向が実現したことに快哉を叫びたくなる。ミュージカルを思わせる「Love me, Love you」に始まり、1曲の中で楽器編成が変わり、ストリングスも含めすべての楽器が歌うような「PARTY」、ヒップホップやビートに新世代ジャズ的な面白さまである「REVERSE」、MONGOL800のキヨサク(Vo/Ba)を迎えた「はじまり feat. キヨサク from MONGOL800」など、多彩を超えて1曲ごとの強度が凄まじい。そこにこれまでのミセス節が残るシングル群やEDMナンバーも加わり、さながら音楽のアミューズメント・パークが出現。なんとも体験的だ。(石角 友香)
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Mrs. GREEN APPLE
Love me, Love you
前作『WanteD! WanteD!』、そしてデジタル・シングル「WHOO WHOO WHOO」でバンドが表現するEDMの究極まで振り切ったミセス。2018年第1弾はまた異なるベクトルに振り切ってきた。まず表題曲の「Love me, Love you」はホーンが煌びやかで、ダイナミックに展開するミュージカルのようなビッグ・バンド・サウンドに驚く。だが、大森元貴(Vo/Gt)の脳内に広がる希望の世界を表現するために、このサウンドスケープや世界観は必然なのだろう。早くライヴで自由にリアクションしたい曲だ。2曲目の「Log (feat.坂口有望)」はドラマ"僕たちがやりました"のサントラも作曲している注目のキーボーディスト/プロデューサー Kan Sanoとシンガー・ソングライター 坂口有望が参加。また「春愁」も初音源化して収録。(石角 友香)
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Mrs. GREEN APPLE
WanteD! WanteD!
メジャー・デビュー2年で早くも5枚目のシングルとなる本作。タイトル・チューンの「WanteD! WanteD!」はコミック原作のドラマ・テーマならではの荒唐無稽さもありつつ、"このままでいいのか?"という10代の焦燥感はドラマ"僕たちがやりました"と自然とリンクする内容。大げさに言えばポスト・トゥルースの時代を君はどうやってサバイヴするのか? という命題をエレクトロ・ファンクやモダンなR&BなどUSのトレンドとも符合するタイトなアレンジに昇華したのが新しい。「On My MiND」は随所にデビュー当時からの代表曲「StaRt」をアップデートしたような仕上がりで、過去と今の対比が最もわかるナンバー。加えて大森元貴(Vo/Gt)が中3のときに書き、ついに音源として完成した「光のうた」の明らかな"祈り"のような優しさにも驚かされる。(石角 友香)
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Mrs. GREEN APPLE
どこかで日は昇る
ツアー真っ只中のミセスから早くも4作目のシングルが到着。2ndフル・アルバムから「鯨の唄」が新たなスタンダードとして脚光を浴びる今、今回のリード曲「どこかで日は昇る」もスロー・テンポでストリングスが効果的に施されたアレンジなど、"聴かせる"ミセスの真骨頂だが、名曲的なムードに収まり切れないサビでの違和感のある転調や、大森元貴(Vo/Gt)の振り切れるエモーションに彼らの個性を見る。売れない女漫才師が主役の映画"笑う招き猫"主題歌としてもしっくりくる仕上がりだ。打って変わってアッパーで踊れる「スマイロブドリーマ」は、生音とエレクトロニックのいずれもがソリッド且つポップで突き抜けた仕上がり。ビートのアプローチがユニークな「SwitCh」も含め、バンドがどんどんタフになっていく過程を体感できるシングル。(石角 友香)
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Mrs. GREEN APPLE
Mrs. GREEN APPLE
これまでの10代の壊れやすくて柔らかい心を誰よりも理解し、並走してきたミセスのエモーショナルな部分はもちろん残しながら、より日本のロック・シーンのトレンドに拘泥することなく、純粋にポップ・ミュージックとしての完成度を圧倒的に上げてきた2ndアルバム。プログレッシヴな展開を持つ「絶世生物」での楽器隊の成長、ストリングス・アレンジも決して大仰に聞こえない歌と演奏のダイナミズムが堪能できる「鯨の唄」や「umbrella」、エレクトロ・サウンドでヴォーカルも全編オートチューンのダンサブルな「うブ」、どこか海外ドラマのワンシーンを思わせる「Just a Friend」など、アルバムの中でピーク・ポイントが何度も訪れる。シングル曲「サママ・フェスティバル!」、「In the Morning」も絶妙な流れで配置されている。(石角 友香)
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Mrs. GREEN APPLE
In the Morning
シンセ・ポップの手法を勢いのあるアレンジで消化したサマー・チューン「サママ・フェスティバル!」の明るさから、硬派なメッセージを歌うバンドとしてのMrs. GREEN APPLEの第2章、そんな胸騒ぎがするのが今回の表題曲「In the Morning」だ。よりピアノ・ロック感が増した印象は、他の楽器の音数も曲に必要なものかどうかを吟味したからだろう。楽しいばかりじゃない、むしろちょっとしんどい朝の始まりに、無理矢理笑顔になることなく心を強く前向きに持てる、そんな1曲だ。Track.2の「ツキマシテハ」での思いを言い放つような強い調子の言葉や、ラストの大森元貴(Vo/Gt)の絶唱は表題曲とは対照的だが、対にして聴いてみてほしい。Track.3の「Oz」は寓話的な展開を様々な楽器の打ち込みで膨らませた音像もまさにマジカル。(石角 友香)
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Mrs. GREEN APPLE
サママ・フェスティバル!
白飛びするような夏の光と解像度の高い情景が、"サママママ・フェスティバル!"という若干突拍子もない歌い出しとともに、すごいスピードで描き出されるミセス流の夏曲が登場。シンセ・ポップ寄りのアレンジだが、スピード感は加速した印象。加えて、シングルでは各々独立した濃い意味合いを持つ楽曲を収録するというスタンスから、ピアノや弦楽四重奏が効果的に配置された「umbrella」は、大森がいつかのライヴで話していた"音楽を作らずにはいられないが、作ることによって苦しみもする"という心情がうかがえる。もう1曲はライヴでも場面転換的な曲として人気の「ノニサクウタ」が音源化。ミセスの特徴のひとつである"音楽隊"としての魅力を表現した、オーガニックなアンサンブルが楽しめる。(石角 友香)
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Mrs. GREEN APPLE
TWELVE
テクニカル且つ踊れるビートのTrack.1「愛情と矛先」や先行シングルのTrack.2「Speaking」で鮮やかに聴き手を受容。そしてライヴのラストなど重要な位置で演奏してきたTrack.3「パブリック」もついに音源化したことから、今のミセスの覚悟が窺える。また、スローなピアノ・バラードに明確に舵を切ったTrack.6「私」の新鮮さ、ミセス流のグランジとも言えるTrack.8「ミスカサズ」のヘヴィネスとソリッドさなど、美しさも黒い感情も振り切ったサウンド・プロダクションで表現。明るくスタートし、徐々に内面に潜り、終盤では未来を見据えるような前向きなニュアンスが訪れるという"体験型"のアルバム構成だ。テン年代ロックの未来を19歳の大森元貴という才能が描いたという意味でも記念碑的。(石角 友香)
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Mrs. GREEN APPLE
Speaking
空気を読めるようになるとか、SNS上で尖った言葉にも傷つかないように殻を作ることは本当の強さだろうか。シンセや同期が鮮やかに弾けると同時にこれまで以上に重心の低い太いベース・ラインが心臓が脈打つような印象を残し、サビの"僕には話してよ"から繋がるラテン・テイストなコーラスも相まって、大森元貴(Vo/Gt)の"届け、気づけ"という祈りは音楽的にとてつもない情報量をまとったキャッチーさへ昇華されている。メジャー1stシングルとしてもミセスの声明としても最強だ。Track.2「恋と吟(うた)」は曲作りを始めたころの楽曲で、思いの吐き出し先が音楽にしかない苦しさと表現者の宿命すら感じさせる切実さも。Track.3「えほん」は絵本を通じて無償の愛に包まれたころの記憶と自分もそれを持ち得る微かな光が見える。(石角 友香)
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Mrs. GREEN APPLE
Variety
遊園地もしくは高速チェンバー・ポップなTrack.1「StaRt」は些細なことでも幸せと気づけないんならスタートに戻ろうという、ミセスの所信表明。続く「リスキーゲーム」は最も古い曲ながら3度目のRECで最新型に。深い海の底に沈むようなイントロが孤独という本質と"Love Person"の存在を示唆する「L.P」。"鈍感vs繊細"という単純な図式に回収できない自分の命の濃さに翻弄されるような「VIP」、ボロボロになった気持ちにそっと毛布をかけてくれるような「ゼンマイ」、そして"こんな世界を未だ憎めないのは何故か"という歌詞の一節をリスナー自身で見つけるようにラストに用意されている「道徳と皿」の平熱のポジティヴィティ。避けては通れないリアルな心情を変幻自在なポップ・ソングに結晶させた新たな世代の1枚。(石角 友香)
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Mrs. GREEN APPLE
Progressive
家族、恋人、友人、同僚、クラスメイト、その他数え切れないほどの人、人、人。不特定多数の人との繋がりの中で傷つき、転がり、そして救われていくことで自分がやっと見えてくる。感情を共有するから喜怒哀楽が生まれる。Mrs. GREEN APPLEは、初の全国流通盤となる今作でそういった大切なことを歌った。作詞/作曲/編曲すべてを手がける18歳のフロントマン大森元貴の鋭いアンテナでキャッチされた混沌とした不安や孤独、敏感な心で感じる大切な人への願いは、5人の眩しい衝動によってすべて音に刷り込まれている。「WaLL FloWeR」で歌われる"素晴らしいと思えるように醜いと思ってみよう"という言葉の通り、肯定する強さを持った彼らの音は燦々と眩しく光っている。(齋藤 日穂)
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Mr.ふぉるて
音生 -onsei-
"その涙の行方を僕の親指に/託してくれないかい?"と歌う「涙の行方」で始まり、"笑わせてみせるよ"と歌う「Chaplin」、そしてインスト曲である表題曲で締めくくられる2ndフル・アルバム。コロナ禍でのデビュー、メンバーの病気療養などこのバンドには紆余曲折あったが、だからこそ、生きづらさを抱えながらも、"生きたい"という本能と共に壁をなんとか乗り越えようとする人の心に寄り添うことができる。ストレートなロックを鳴らしながら勇気あるメッセージを発したり、あえてポップなサウンドに悲哀の詞を乗せたり、寂しげなピアノ・リフと共に物思いに沈んだり......と、愛し愛されることを諦めきれない人間の性(さが)を、様々なカラーで表現するバンドの手腕は見事だ。(蜂須賀 ちなみ)
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MSTRKRFT
Operator
2011年に突然の復活を遂げた、ベーシストとドラマーという組み合わせで爆音ロックを奏でたカナダのDEATH FROM ABOVE 1979。その片割れ、Jesse F. KeelerとプロデューサーのAl-Pによるエレクトロ・ユニットがMSTRKRFTであり、その約7年ぶりの新作が登場。インストで構成された1stから、前作ではゲスト・ヴォーカルを迎えキャッチーな作品を作り上げたが、今回もゲスト・ヴォーカルが多彩。それも、ミニマルで、変態濃度も高めのテクノ・チューンに、パンク/ハードコア系のシンガーの声を素材的にブチ込んで劇薬化していくという、かなり贅沢な使い方だ。Jacob Bannon(CONVERGE)や、Ian Svenonius(THE MAKE-UP)、Sonny Kay(THE VSS)などが参加し、90'sポスト・ハードコアや、GSLや31Gなど異端レーベルを追いかけていたハードコア・キッズには、たまらないアルバムだ。(吉羽 さおり)
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MSTRKRFT
Fist Of God
ex,DEATH FROM ABOVE1979のJESSEと、そのプロデューサーであったAL-Pによるエレクトロユニット。発音はマスタークラフト。2007年のSUMMER SONICでは力強く快楽的なビートでガンガン踊らせてくれたのが、とても強く印象に残っている。前作はインストものが中心であったが、今作ではLIL MO、THUNDERHEISTのISIS、GHOTSFACE KILLAHなど、才能溢れる様々なアーティストとコラボレーションしており、歌ものが多くなった分、より聞きやすく、初心者にもわかりやすい享楽的なサウンドなのだが、これがもう、最高!そして、完璧!!さすがはMSTRKRFT!!!アルバム全体の流れも流麗で、まるごと一枚聴いていても全く飽きが来ず、あっという間に時間が過ぎてしまう。個人的に2009年のベスト10に入ること確実。(杉浦 薫)
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MT.DESOLATION
Mt.Desolation
英国の国民的バンドKEANEのメイン・コンポーザーを務めるTim Rice-Oxleyが中心となり結成されたMT.DESOLATIONのデビュー・アルバム。KEANEの持つ叙情的で美しいメロディを引き継ぎながらとても軽やかな心地よい作品だ。オープニングを飾る「Departure」が特に素晴らしい。カントリー・テイストの軽快なリズムに乗り男女のヴォーカルが絡み合うこの楽曲はアルバムの幕開けとして理想的なナンバー。THE KILLERSやNOAH & THE WHALEのメンバーも参加している事あるのだろう。アルバム全体からは一つの事に縛られない自由で穏やか雰囲気と遊び心を感じる事が出来る。KEANEとはまた違う美しさを持った素晴らしいアルバム。(遠藤 孝行)
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Muddy Apes
Fairy Dirt No.5
ハイ・スキルのテクニックが生む凄みや迫力に、若々しい衝動的な音色が融合したらどうなるだろうか――その答えがMuddy Apesのサウンドには凝縮されている。すなわち最強だ。それぞれ日英米を拠点とするメンバー4人が、デビュー作『Crush It』から約10ヶ月というインターバルで2作目を作り上げた。限られた時間の中でのレコーディングやライヴ活動で、よりバンドとしてのグルーヴを天性のセンスで磨いた、フレッシュなロックンロールの応酬。“音を出すのが楽しい”というシンプルな衝動が所狭しと暴れ回る。8ottoの「Generation 888」をカヴァーした「Generation 555」は、8ottoへの熱いリスペクトが溢れた1曲。彼らが奏でるポジティヴなエネルギーは、国境も年齢や性別も飛び越え響くだろう。(沖 さやこ)
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MUDHONEY
Plastic Eternity
グランジの先駆的存在であり、Sub Popの看板バンドのひとつでもある、MUDHONEY。そんな彼らの11枚目のアルバムは、絶好調にアングラで尖っていて、最高にアグレッシヴだ。洗練されすぎない泥臭さのあるサウンドと、メンバーそれぞれ40年近くの音楽活動歴を持つベテランならではの安定感のある演奏が、絶妙な世界観を生み出している。オルタナというジャンルが古臭く聴こえるような昨今でさえ、Mark Armの吐き捨てるようなヴォーカルやMUDHONEYの叩きつけるような演奏には、衰退したカルチャーの響きはなく、我が道を行く存在としての輝きが見える。むしろ、今作のように純粋な本能で作られた音楽こそ、怒りや感情の爆発を抑え込んでしまっている現代の若者に必要な音楽なんじゃないか。(山本 真由)
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mudy on the 昨晩
Zyacalanda
物凄く固い何かが頭にぶつかった、とっさにそう感じた。硬式野球のボールでも当たったのではないかと錯覚するほどの高密度の音の塊がアグレッシヴに乱舞するタイトル曲の「Zyacalanda」。そして、どこかオリエンタルな雰囲気で変拍子と転調をダンサブルに繰り返す「エゴ・ダンス」。一見荒々しいが、緻密に構成された轟音と共にめちゃくちゃにモッシュしまくるオーディエンスの姿が目に浮かぶ。間違いなくこれは使用上の注意ならぬ、視聴上の注意が必要だ。“ヘッドフォンを利用して電車の中などでご視聴されると大変危険です。大暴れしても怪我をしない安全な場所でご視聴ください”これが決して大げさな表現ではないことは一度聴けばわかるはず。胸を張って太鼓判を押させていただこう。(石井 理紗子)
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mudy on the 昨晩
mudy in squall
よりストイックに、よりタイトになった、mudy on the 昨晩。インストというと、一見すると言葉少ない表現方法のように思えるのだが、このバンドは、一触即発ともいえる攻撃力と、ピンと張り詰めた精神性の高い楽曲世界を作り上げることで、その意識をひっくり返してみせる。滝に打たれる修行僧、激しい雨の中でもその足を止めないアスリートの如く、一つの主張を一環して貫くように、主義や主張を楽曲に投影させるのだ。そして彼らの最新作は、"squall=集中豪雨=困難な状況"、"一周して人生を全うしたら僕らはどうなるのか?"など、より切迫したコンセプトを設けることで、その色がさらにビルド・アップされている。ギターは嘶き、叫びまくる。情動と衝動の揺れ動きのみで楽曲の移り変わりを描く、緊張感溢れる作品だ。(島根 希実)
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mudy on the 昨晩
pavilion
mudy on the 昨晩が初のフル・アルバムをリリース。新たにギターの梶山良太を向かえたリ・スタートと言う意味と、制作時に抱えていた怒りの感情が大きな柱になっているというこの作品。全編を激しい感情の起伏が覆う。激しいギター・リフと、楽曲の中に絶妙なズレを差し挟みながらドライヴするドラムが引っ張る楽曲は、インストでありながら、しっかりとした歌心を感じさせるメロディを持っている。誰か歌い手なりMCとのコラボをやってみても面白いんじゃないだろうかと考えていたら「Sarliban」ではバンドとして初めてコーラスを薄っすらと入れていて、驚かされた。超絶のテクニックや科学者のような実験性を突き詰めたようなインストではなく、そこに込められた感情と衝動が伝わってくる音の鳴りに突き動かされる。(佐々木 健治)
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mudy on the 昨晩
YOUTH
mudy on the 昨晩の3曲入りシングル&ライヴDVD。5人組トリプル・ギターという編成での圧倒的にプリミティヴなライヴ・パフォーマンスが評判を呼び、既に多くの海外アーティストのサポートも務めるなど、各方面から高い注目を集めるmudy on the 昨晩。このシングルでも、3本のギターが絡み合うアグレッシヴなサウンドを展開する。縦ノリでありながら、しっかりと踊れるビート、高度に構築されていながら、衝動性も詰め込まれたバンド・アンサンブル。攻撃的でありながら、爆音のカタルシスに頼ることもない展開は、全く聴いていて飽きることがない。若手のインスト・バンドの中では群を抜くそのライヴ・パフォーマンスを収めたライヴDVDも必見だ。そして、3月にはついにフル・アルバムをリリースする。(佐々木 健治)
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THE MUFFS
No Holiday
ハスキーな歌声と力強いシャウト、かき鳴らすギター、そして、ワイルドな音楽性でも隠しきれないチャーミングなパーソナリティ。今年10月、ポップ・パンク/パワー・ポップ・シーンのレジェンド、THE MUFFSのフロント・ウーマン、Kim Shattuckが亡くなった。遺作となった今作には、結成からKimが病気の進行により手足の自由が効かなくなるまでの間、彼女が書き溜めてきた楽曲が収められている。GREEN DAYをはじめ多くのバンドに影響を与えたTHE MUFFSらしい、激しくもポップでもあり、新しくてノスタルジックなこのアルバムには、ALSという難病と闘いながらも、ラスト・アルバムのプロデュースを諦めなかった彼女の、生命力や音楽に対する愛がたくさん詰まっている。(山本 真由)
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MUGWUMPS
Hola, Quota!
インディーズ・シーンで熱烈な支持を受けるスリーピース・バンドMUGWUMPSの、1stアルバムから3年ぶりとなる2ndアルバムがようやく到着した!その間にリリースされたEPでも予兆があった様に、かつてのメロコア・パンクの雄といった印象は影を潜めている。というより、格段に音楽性の幅が広がったという方が正しいだろう。その結果、様々なアイデアが曲に彩りを与えている他、音の輪郭が際立ち、持ち前のポップネスにさらに磨きがかかっている。この様な音の変化にはプロデューサーに堀江氏(the HIATUS)とエンジニアに坂本龍一のPAも務めるZAK氏を迎えた事が強く影響していると言えるが、それ以上にバンドの持つ潜在能力が引き出された結果だろう。今後が非常に楽しみだ!(中里 友)
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MUM
Early Birds
アイスランドの雄MUMが、01年のデビュー作をリリースする以前、98年~00年の間に録り溜めていた未発表曲や入手困難なデモ・トラックなどを収めたレア音源集。本作を聴けばこのバンドの出発点も、BECKが体現したサンプリングという自由、もしくはPAVEMENTらが表現した価値観としてのローファイなど、90年代のポップ・ミュージックにおける音楽的革新なのだということがよくわかる。打ち込みのビートやサンプリング音、フルートやアコーディオンといった可愛らしい生楽器の音色など、あらゆる音が無邪気に飛び交っている初期楽曲たちの完成度はまだまだ高いとは言えない。だが、すべての楽曲から滲み出る音と戯れることに対する喜びと、メロディの端々から零れ落ちるメランコリーは、今と決して変わらない。(天野 史彬)
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MUM
Sing Along To Song You Don’t Know
母国アイスランドのみならず世界中で人気を博すドリーミー・ポップ・バンド「MUM」から素敵なアルバムが届けられた。今作で5枚目とは思えないほど伸びやかで開放感があり、喜びに溢れている。1stアルバム『Yesterday Was Dramatic Today is OK』のリリース時は世界的にハンド・メイドなエレクトロニカが注目されていた時期でもあり、当時は僕も夢中になった一人だった。ただその後はロックンロール・リバイバルもありこの手のサウンドをあまり聴かなくなってしまったのも事実。そして今はそれを激しく後悔している。メンバーの脱退、加入があり7人編成になってもMUM はMUM だった。生楽器の音色とささやかなエレクトロニクスが調和した理想的なポップ・ワールド。(遠藤 孝行)
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MUMFORD & SONS
Sigh No More
ロンドンを拠点に活動する4ピース・バンドMUMFORD & SONSのデビュー作。発売から丸1年間全英トップ・チャートのトップ40に君臨したという超話題作である本作は、自然の造形美のごとき壮大な美しさと、わずかな哀調を帯びた、温かな作品だ。そして、ふと浮かび上がるように始まり、気付かぬうちに終わっていた...そんな手触りが印象的。それは、浮かび上がったものが、徐々に空気と馴染んでいき、やがては消えてなくなっていくような...。何度も心は荒れ、何度も泣いたはずなのに、朝日が昇るとなんだか全てが嘘のような気持ちになる...まるで一夜の間に起きた、ひとつのドラマを見たような出来事だった。幾度も押しよせる音による激情という波、バンジョーを筆頭としたストリングスは、嵐のように吹き荒れたが、終わってみれば、全てが夢だったように穏やかだ。(島根 希実)
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MUSE
Will Of The People
2000年代以降のロック史に燦然と輝く3ピース・バンド、MUSE。そんな彼らの9作目のアルバムとなる今作は、パンデミックや環境問題、不安定な世界情勢といった暗いニュースにフォーカスした重いテーマを扱いながらも、非常にエンターテイメント性の高い作品となった。メタリックなギター・プレイと、'80sのキラキラ感があるキーボード、ミュージカルのように語り掛けるメロディ。スケール感のあるサウンドで、ダンサブルにもヘヴィにも感情揺さぶるバラードにも振り切った楽曲の数々には、それぞれドラマ性があり、その世界観へとグイグイ引き込まれていく。そんなテクニックだけでは描けない、生命力溢れるストーリーは、MUSEというバンドの持つ音楽への情熱を象徴しているようだ。(山本 真由)
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MUSE
Simulation Theory
MUSEの通算8作目となるアルバムは、ロック路線の前作『Drones』とはガラリと変わって、某SF映画を思わせるアートワークが示すとおり、80年代風のシンセを大胆に取り入れた異色作となった。TIMBALANDがプロデュースを手掛け、マッシヴなベースとR&B調の歌メロを融合させたTrack.4や、トラップとロックを掛け合わせたTrack.7など、全体的にはこれまでになくポップに。一方で3rd、4thアルバムのヘヴィなギター・サウンドに回帰したようなTrack.8、9も配されており、ロックもポップもエレクトロもすべて呑み込み、ダイナミックで劇的なMUSEらしいサウンドに昇華しようとする新たな試みが感じられる。彼らの真骨頂であるライヴでどう披露されるか楽しみだ。(菅谷 透)
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MUTANT MONSTER
ABNORMAL
MEANA(Gt/Vo)、BE(Ba/Vo)の姉妹とCHAD(Dr/Cho)による3ピース・バンドの自主レーベル初リリース作品。ツイン・ヴォーカル・スタイルをとっており、1曲の中で交互に歌声が行き来してサビでひとつに重なるスリリングな展開を活かした楽曲が特徴的。特に表題曲「ABNORMAL」ではこみあげるようなマイナーなメロディ、現代の病理をズバリ突いたメッセージ性の強い歌詞の緊張感も相まって強烈に脳裏に焼きつく。ひとつひとつのシンコペーションにも感じさせる一体感は、ツアー中も常に寝食を共にするという3人の結束力、ライヴへの自信から来るもの。様式美メタル調の「RAY OF LIGHT」などもあるが、彼女たちが音楽に向かう姿勢は間違いなくパンクだ。(岡本 貴之)
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MUTEMATH
Play Dead
ドラマーのDarren Kingが脱退を発表しているMUTEMATHの5作目のスタジオ・アルバム。前作『Vitals』では煌びやかでダンサブルなインディー・ロックに傾倒していたが、今作はこれまでの自分たちのアルバムを振り返り、各アルバムの魅力的な部分を取り入れて制作したという。シンセやコーラスによる壮大でゴージャスなサウンドから、バンド・アンサンブルとリズムがスリリングなグルーヴを生む楽曲、ノイジーなロック・サウンド、エモーショナルでドラマチックな展開を見せる楽曲など、この多面性は彼らのキャリアの賜物だ。全曲に宿る高い感傷性も艶やかで美しい。だからこそバンドの核であるDarrenの脱退は心痛い。Track.10のタイトル"Marching To The End"とは、そういうことなのか。(沖 さやこ)
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Muvidat
VOICES IN MY HEAD
"悲しみのない世界はないって知ってるんだ/だから皆 歌い叫ぶのでしょう"。タイトル曲のこのフレーズで、アルバムは始まる。Uquiの歌声は手を取って語り掛ける親密さで響き、また憂いの気持ちを包んで溶かすようなおおらかなギター・サウンドで、一気にこの音楽に飛び込ませるパワーがある始まりだ。そこからは、音に身を委ねれば想像の世界も心の深いところまでも旅をする感覚を味わえる。Muvidatとしては2作目、コロナ禍でライヴも限られたなかでの制作となったこのアルバムは、リアルな世界のシビアな空気も感じさせつつ、たくさんの人の気配があって、顔を上げて歩いている高揚感で満ちている。誰かと会って、語り合って、共に歌いたい。そんなファンファーレみたいな音楽がたっぷりと詰まっている。(吉羽 さおり)
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Muvidat
熱帯的シンドローム
爪痕を残す気満々の仲間たちによるフレーズはひとつひとつが個性的で、飛び出す絵本並みの立体感でギッチギチに詰まっている。展開するごとに目の前の景色をくるりと変えてみせるアンサンブルが楽しくて、バンド以上に強固なバンド・サウンドと、残像感漂う謎のコーラスがビュービューと熱風を吹かせてみせる。その真ん中で軽やかに踊るUquiの歌声は鮮やかで伸びやかで爽快だ。海に良し、山に良し、もちろん車でも家でもヘッドフォンで爆音でも! 他では絶対聴けない、Muvidatにしか鳴らせない、心と身体を思いきり躍らせるサマー・ソングが完成した。SPARKA + BISTRO FUNKによるリミックスはもはやMuvidatの音楽の一部。期待を裏切らない豪快な裏切りっぷりでしっかりと聴きどころになっている。(山本 祥子)
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Muvidat
Fog Lights
"何者でもなく/ただ唯一のメロディになる/そばにいる"というラインで締めくくられるOPナンバー「Fog Lights」から滲む音楽愛に、胸が熱くなる。アンサンブルがアクロバティックに展開したかと思えば、奥の方にしまい込んでいた痛みにUquiの歌声がそっと寄り添う、感涙必至のミドル・ナンバーがあり、東京ヴェルディ女子ホッケー・チームの公式ソング「Focus」の、スポーティな爽快感もたまらない。2枚目にして唯一無二のムビ・サウンドの豊かさを悠然と伝える曲ばかりなのだ。ミニ・アルバムと言いつつ2枚組。Disc2は昨年末のツアー・ファイナルから9曲収録。どこでだって仲間と共にふたりが響かせる音は光="Fog Lights"となり、聴き手の心のモヤモヤを全力で晴らしてくれる。(山本 祥子)
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Muvidat
Muvidat
ふたり組ではあるが、信頼の置ける音楽仲間と奏でた曲たちは、しなやかで鮮やかで、恐ろしく強靭なバンド・サウンド。"やりたいことを形にしていったらSHAKALABBITSの続きになった"と話すUqui(Vo)の言葉通りというか。やりたいことが詰まったカラフルな新曲に、シャカ時代に作った曲をブラッシュアップさせたというロック・ナンバー、盟友 REI MASTROGIOVANNIが書き下ろした心躍るスカもあって、鋭い嗅覚と抜群のセンスを駆使しつつ完成したアルバムは、実にフラットで潔い、一番憎たらしいやつです。全曲に貫かれたシャカを愛してくれた人への感謝。右往左往しつつ、見上げた月に手を伸ばして前だけを見て突っ走るMuvidatの姿。すべてが愛おしい。めちゃくちゃかっこいい。 (山本 祥子)
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M. Ward
A Wasteland Companion
多彩なフォークの音色が紡ぐグッド・メロディ集は、暖かくも優しく、そして輝かしい小さな幸福の結晶のようで、聴き終えた後の心は感動的な想いで満ち足りているだろう。現代アメリカの良心や至宝と呼んで過言ではないSSW、M.Wardがソロ名義としては約3年振りの新作をリリースする。その歌心は古き良きノスタルジーであり、まったりとした叙情的変化を感じるが、世界観のテーマは音楽旅行記だという。地元ポートランドからNY、イギリスのブリストルなど世界各地でレコーディングされた楽曲は、まさしく吟遊詩人のような空気に情景、ストーリーを想像する。多岐に渡る活動で知られるが、SHE&HIMの相方Zooey Deschanel、SONIC YOUTHのSteve ShelleyにBRIGHT EYESのMike Mogisなど豪華なゲストもトピックだ。この季節だけに、桜道のBGMとして本作はどうだろうか?(伊藤 洋輔)
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MY BEST FIEND
In Ghostlike Fading
名門レーベルWarpが送りだす新バンドMY BEST FIEND。怪演で知られるKlaus Kinskiの狂気を描いたドキュメンタリー映画“My Best Fiend”から冠したという。なるほど、そのサウンドには恍惚と鬱屈の間をゆらゆらと彷徨う危うさが潜んでいる。怪奇変態サウンドもなければ、実験的音楽でもない。かと言って流行りのベッドルーム・サウンドに留まるわけでもなく、緻密に練られた美的空間を作り上げる。MGMTのAndrew VanWyngarden、YOUTH LAGOONのTrevor Powerと共通する少年性ある物憂げなヴォーカルが、浮遊感漂うドリーミー・サイケな世界を構築。そこにふと挿入されるギターが古き良きアメリカン・ポップ・サウンドを匂わせる。私たちは予想不可能な広大な空間に迷い込み、“奥に潜むものを知りたい”という不安を超越した好奇心に駆りたてられるのだ。(山田 美央)
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myeahns
myeahns
4人編成のテクマクマヤーンズからメンバー脱退を経てmyeahnsとして再始動した3ピース・バンドの1stミニ・アルバム。サーフ・ロック的なギターが印象的なTrack.1「デッカバンド」では、ショー・ビジネスの中でも失われない音楽へのピュアな気持ちや興奮を歌い、彼らがバンドを続ける情熱が伝わってくる。ハツラツとしていながらうるさすぎない演奏と儚げな逸見亮太(Vo/Gt)の声は一度耳にしたら気になってしまう魅力があり、繰り返し聴いて歌の内容を確かめたくなる。日本のロック・バンドらしさが爆発するTrack.7「バカは休み休みYeah」、どこか悲しい夢の中で歌っているようなTrack.2「U.F.O.み.た.」やTrack.5「フェスティバル」の憂いのあるメロディがすごくイイ。(岡本 貴之)
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MyGO!!!!!
往欄印
"BanG Dream!(バンドリ!)"発MyGO!!!!!の7thシングル。表題曲はMyGO!!!!!の代名詞と言える羊宮妃那(高松 燈/Vo)のポエトリー×パンク・チューン。ツービートで颯爽と駆け抜ける爽快感とレイドバックしたビートの重厚感が共存しており、カウンター・メロディ的なアルペジオやエモいギター・ソロに加えラストはシンガロングと、MyGO!!!!!のロック・バンドとしての最新型を示す。"往欄印"と名付けた彼女たちの道標となる"目印のうた"は、心の真ん中で残響になり、鳴り止まない一曲になった。カップリング「残痕字」は音を詰め込みすぎず、不安や葛藤を受け止め先に進む意志を感じるロック・ナンバー。対照的な2曲でバンドが強くなったことを見事に感じさせる。(中島 颯士)
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MyGO!!!!!
聿日箋秋
2つのバンドのストーリーが絡み合うアニメ"BanG Dream! Ave Mujica"の最終話挿入歌を表題とした、MyGO!!!!!の6thシングル『聿日箋秋』。アニメ内でも演奏された「聿日箋秋」は、ベースが生み出す強力なドライヴにツイン・ギターが絡み合うエモーショナルな楽曲で、高校生によるバンドを巡る物語に相応しい爽快感が駆け抜ける。ジャムっぽいルーズな入りからのコーラスが印象的な「掌心正銘」も含め、QUIETDRIVEやANBERLINを思わせるエモ全盛期然とした 完成度の高いサウンドに、羊宮妃那(高松 燈/Vo)の表現力が組み合わさり、始動からわずか3年目とは思えない本格的なバンドの音を鳴らす、彼女たちの現在地を記した作品となった。(米沢 彰)
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MyGO!!!!!
跡暖空
"BanG Dream!(バンドリ!)"発のMyGO!!!!!による2ndアルバム『跡暖空』は、ロック×青春の相性の良さを改めて感じさせる1枚だ。羊宮妃那(高松 燈/Vo)が本作を通して歌に乗せる感情は、"迷いながらも進んでいくしかない"――そんな葛藤と決意。人として生きていく上で、ゴールを見失ったり選択に迷ったりすることはあるだろう。そういう意味では誰もが迷子。だからこそ、MyGO!!!!!の歌は、誰にとっても支えになると言えるだろう。王道ギター・ロックを主軸にした楽曲が並ぶなかでも、疾走感を持って駆け抜けるTrack.4「霧周途」から、視界が開けていくような情景が浮かぶTrack.5「端程山」へ繋がる流れで得られるカタルシスは秀逸だ。(宮﨑 大樹)
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MyGO!!!!!
迷跡波
始動から1年半をかけて放つ初のアルバムは、いい意味で期待を裏切る音楽性の幅の広さと、音楽的な懐の深さを1枚に凝縮した作品に仕上がった。王道ロックを突き詰めた「迷星叫」から始まり、痛快なパンク調の「壱雫空」、疾走感溢れる「碧天伴走」、ダンサブルな「影色舞」、洋楽ポップ・パンクを彷彿とさせる「歌いましょう鳴らしましょう」など、1曲ごとにキャッチフレーズをつけられるぐらい音楽的テーマが明確に感じられ、初のアルバムとは思えないレベルで楽曲が個々に光を放っている。アニメ放映が終わり、その締めくくりとして本作が提示されたことは、終わりを意味するわけではなく、バンドの始まりの物語とこれから始まる快進撃の"狼煙"として受け止めるべき出来事となる。(米沢 彰)
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MyGO!!!!!
音一会
"BanG Dream!(バンドリ!)"プロジェクト発、昨年始動したばかりの新バンド"MyGO!!!!!"が早くも2ndシングルをリリース。表題曲の「音一会」は、疾走感のあるツービートに乗せたメロディアスなギター・フレーズが印象的なロック・チューンだ。"独りきりで泣いてたあの夜も/きっと今日の僕に続いてたんだ"と過去の自分と向き合いながら"君が いたから/「ありがとう」"と感謝の気持ちを込めた歌詞や、迷いもそのまま抱えて未来へと進もうとする姿には共感する人も多いのではないだろうか。続く「潜在表明」ではポエトリー・リーディングによって紡がれる言葉と、サビで一気に明るくなる音の開放感に心が揺さぶられ、3曲目の「影色舞」は四つ打ちが心地よいダンサブルなナンバーで、ライヴでのキラーチューンになること間違いなし。(横山 開)
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MyGO!!!!!
迷星叫
"BanG Dream!(バンドリ!)"プロジェクトから生まれた、"現実(リアル)"と"仮想(キャラクター)"が同期する新バンド、MyGO!!!!!(読み:マイゴ)の1stシングル。初のオリジナル曲である表題曲は、ストレートなロック・ナンバーに仕上がっていて、そこへヴォーカルの燈が乗せるのは"孤独"や"迷い"の感情だ。現実世界のどこにでもいそうな"独り"の人間をイメージさせる歌詞は、この時代を生きる人にとって共感性が高いだろう。カップリングの「名無声」は、MyGO!!!!!の世界観に共感した人の背中を優しく押すような1曲。メンバーのコーラスも聴き手の心を鼓舞させるのに一役買っている。まだまだ謎の多いバンドなので、今後の展開が楽しみ。(宮﨑 大樹)
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My Hair is Bad
narimi
ウソをついて嫌われるより、本音を言って煙たがられる方が悲しい。だから作り笑いで予防線を張って、行き場のない"ホント"を内側に積もらせる。ギターとベースとドラムと歌のみの粗さの残るサウンド。そして人間の情けない部分をそのまま描いた歌詞。その12曲には、誰かの憂いを吹き飛ばす底抜けの明るさはない。誰かの悩みを丸ごと受け止めてみせる懐の深さもない。でも彼らは、多くの人がしまい込むような"ホント"の感情をまっすぐ鳴らす。そんなバンドがMy Hair is Badであり、初のフル・アルバムがこの『narimi』だ。結局、生身の人間の心を最短距離で共鳴させるのは、生身の音楽ではなかろうか。そう信じて止まない私は、彼らに1票投じたい。(蜂須賀 ちなみ)
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My Hair is Bad
昨日になりたくて
新潟上越から登場した3ピース日本語ロック・バンド。ギター・ヴォーカルの椎木知仁を中心に結成され平均年齢20歳の彼らは、高校生の頃から新潟にてクリープハイプやグットモーニングアメリカ等数々のバンドのツアー・サポートを務め評価を高めていく。そして満を持して発表された今作は、エモーショナルなメロディとリアルな歌詞が印象的なとてもクオリティの高い日本語ロックを奏でる。冒頭の「最近のこと」は6分を超える楽曲だが、飾らない歌詞とヴォーカル椎木知仁の真っ直ぐな歌声と美しいメロディに、一気に彼らの世界に引き込まれていく。個人的には攻撃的なナンバーよりもスローなバラードにグッと心を揺さぶられた。若さとそのキラキラした感情と美しいメロディが詰まったアルバム。今後が期待の日本語ロック・バンドの登場だ。(遠藤 孝行)
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MY MORNING JACKET
Is
四半世紀以上にわたって、アメリカン・スタンダード・ロック、ポップ・ロックを追及し続けているMY MORNING JACKETが10作目となるアルバムをリリース。清涼感のあるメロディと、親しみやすいリズム、温かみのある楽曲の数々は、彼等がこれまで守り抜いてきたアメリカン・ロックの良心を象徴しているようだ。Jim James(Vo/Gt)の、特徴的で安定感のある澄んだ歌声も含め、全てのパートが調和した一体感が気持ち良く、アルバム1枚一気に聴かせてしまうような不思議なパワーがある。透き通っていてなおかつ様々な色の光を分散させるプリズムのように柔軟な彼等の音楽は、気の合う仲間同士の集まりにも、1人で過ごす静かな時間にも、様々な場面にマッチするだろう。(山本 真由)
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MY MORNING JACKET
Circuital
現在のアメリカを代表すると言っても良い人気バンドとなったMY MORNING JACKET、3年振り6枚目のフル・アルバムがついに登場。地元のケンタッキー州に戻り、ほとんど一発録りで作られたというセルフ・プロデュース作品だ。レコーディングには古い教会を利用し、鳥や風の音などもそのまま収録しているが、それはまさしく自然との共作と言って良いだろう。木漏れ日のようにきらめくキーボード、鳥が翼を広げる様なしなやかさのギター、動物の歩みを感じさせるドラムス......。天然の環境は彼らの奏でる音を、軽やかに美しく、クリアに響かせてゆく。壮大なバラード、王道ロック、心あたたまるアコースティック・ナンバーなど、MY MORNING JACKETが歩んできた軌跡が凝縮。滲むような柔らかいハーモニーは聴く者をゆったりと眠りに誘う。(沖 さやこ)
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MYSTERY JETS
Curve Of The Earth
2000年代半ば、イギリスで起こった空前のインディー・ロック・ブーム のさなかに世に見出された MYSTERY JETS。今年で デビューから10年を迎える彼らが、バンドの成熟を印象づけた前作『Radlands』を最後に古巣"Rough Trade"から離れ、DIYの精神で5作目となるアルバム『Curve OfThe Earth』を完成させた。今作は、ジャケットやそのタイトルから窺わせる通り、70~80年代のプログレッシヴ・ロックの妙味を感じさせるスケールの大きな楽曲が中核を成している。中でも神秘的なムードを纏った「Bombay Blue」、そしてYESやPINK FLOYDの名曲にも比肩するコズミックなメロウさを湛えた「BloodRed Balloon」は今作の白眉と言える。10年のときを経て、頼もしく成長したバンド像を提示する野心作。(山元 翔一)
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MYSTERY JETS
Radlands
日本でも熱狂的な支持を得ているMYSTERY JETSの約2年ぶり通算4枚目となるフル・アルバム。まず冒頭を飾るタイトル曲「Radlands」から漂う80'sの空気感に溶け込む美しいメロディと洗練されたバンド・サウンドに今作の完成度の高さが伺える。そしてホーム・ページにて先行公開された「Someone Purer」のポップなコーラスはライヴで大合唱間違いなしだろうし、ドリーミーな浮遊感が心地よい「The Nothing」やオーガニックな要素と女性ゲスト・ヴォーカルを取り入れた「Roses」など新境地への挑戦も垣間見える。ガレージ、サイケデリック、プログレッシヴなど、様々なジャンルを独自の世界へと変えてしまう確固たるオリジナリティで貫かれた名作。(平野 スミオ)
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MYSTERY JETS
Serotonin
2006年のデビュー以来独自の感性としなやかさを持ち、異端児とも言われながらその絶妙なバランス感覚でシーンに強烈な世界感を提示して来たMYSTERY JETS。彼らの魅力は魔法にかけられた様にキラキラ輝くメロディと自らの原点と語る80'sロックのエッセンスをたっぷり取り入れ洗練されたサウンド・プロダクション。傑作の2nd『Twenty One』に続いて3年振りにリリースされた今作は、まだ発表してない新曲しか演奏しないというツアーを行ったりしながらバンドとしてまっさらな状態に戻ってから作り始めたという。ソフト・ロック的展開や、サイケデリック色の強いナンバーなど新機軸はあるものの、彼らの持ち味である瑞々しさはさらに研ぎすまされた印象。期待を裏切らない傑作。(遠藤 孝行)
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