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DISC REVIEW

M

The Bad Fire

MOGWAI

The Bad Fire

結 成30周年、ポストロックのトップ・アクトによる11枚目のスタジオ・アルバム。初の全英1位を獲得した『As The Love Continues』の続編となる本作は、メンバーの個人的な喪失や困難からインスピレーションを受けており、レコーディングは避難所のような役割を果たしていたのだという。それもあってか、フィードバック・ギターが生み出す轟音、静謐なメランコリー、壮大なサウンドスケープといったバンドの代名詞的な要素=MOGWAIらしさをより自覚的に取り入れている印象。一方で抑制の効いたアレンジは円熟味を感じさせる。タイトルはスコットランドの口語で"地獄"を意味するそうだが、さながら地の底から見上げる光のように、仄かな希望が差し込む作品。(菅谷 透)

Kin: Original Motion Picture Soundtrack

MOGWAI

Kin: Original Motion Picture Soundtrack

8月に全米で公開されたSFアクション・スリラー映画"Kin"のサウンドトラックをグラスゴーのポスト・ロック・バンド、MOGWAIが書き下ろした。これまでにドキュメンタリーなどの劇伴を幾度となくリリースしている彼らだが、長編映画の音楽を手掛けるのは今回が初。ピアノを主軸にした情緒的なサウンドに無機質なシーケンスが絡み徐々に緊張感を増す前半、「Funeral Pyre」、「Donuts」でエモーショナルなトレモロ・ギターが鳴り響く中盤、轟音ギターがカタルシスを生む後半と、情景描写を得意とする彼ららしいドラマチックな展開が続き、ポップながらどこか寂しさを感じさせる歌モノ「We're Not Done (End Title)」で、美しい余韻を残しながら幕を閉じる。"Kin"の日本公開は未定のようだが、ぜひ映画館の音響で聴いてみたい。(菅谷 透)

Every Country's Sun

MOGWAI

Every Country's Sun

ポスト・ロック・シーンで不動の地位を誇るバンド、UKはグラスゴー出身のMOGWAIの3年ぶり、通算9枚目となるアルバム。彼ららしい、混沌から光へと連れていくようなドラマチックな展開や、インストゥルメンタル中心とは思えないほど雄弁に響く緻密な構成に惚れ惚れとさせられる。その一方で、軽やかさや柔らかさ、抜けのいい聴き心地も印象的だ。特にTrack.2「Party In The Dark」は、きらきらとしたポップ・センスが発揮されている。1999年に発表された傑作『Come On Die Young』のプロデュースを務めたDave Fridmann(MERCURY REV)と再びタッグを組み、Daveの所有する"Tarbox RoadStudios"でレコーディングしたことも、大いに関わっているのだろう。(高橋 美穂)

Atomic

MOGWAI

Atomic

この新作はそもそも昨年8月にBBCで放送されたドキュメンタリー"Atomic: Living In Dread and Promise"のサントラをリワークしたもの。もちろん、そこには彼らが過去、来日した際に広島平和記念公園を訪れた経験も反映されている。アルバム・タイトル通り、核に対するシンプルな恐怖心に始まり政治利用としての側面、そしてチェルノブイリや福島で起こった原発の悲劇、もちろん広島・長崎に投下された原爆も下敷きになっている。と同時にレントゲンやMRIスキャンなど医学面での貢献というネガ/ポジ両面の性質を持つ。良くも悪しくも人間自身が自分の手に負えないものを作ってきた現実。錯綜する感情と一歩引いた視点が混在する、彼らの中でも透徹した美しさを持つ音像の理由は、テーマを思うと腑に落ちる。(石角 友香)

Central Belters

MOGWAI

Central Belters

結成20周年を迎えたグラスゴーの至宝、MOGWAIのCD3枚組ベスト・アルバム。ハードコアの延長上で、さまざまな実験を繰り返してきた孤高のポスト・ロック・バンドの軌跡を全34曲に凝縮。8枚のオリジナル・アルバムからの楽曲のみならず、サイケデリック・ロックの生きる伝説、Roky Ericksonのヴォーカルをフィーチャーした「DevilRides」を始め、EPのみの収録曲やサウンドトラック提供曲など、あちこちに散らばっていたいわゆるレア・トラックも網羅。彼らの音楽が過去20年どんな変遷を辿ってきたか、とりあえず概要を掴むには便利なアンソロジーになっている。代表曲中の代表曲だけを1枚にまとめるという潔い作り方もあるかもしれないが、壮大な曲が多いMOGWAIにはこのボリュームが相応しい。(山口 智男)

Rave Tapes

MOGWAI

Rave Tapes

タイトルにある"Rave"という言葉から連想する熱狂、あるいは恍惚はここからは感じられない。今月、来日するグラスゴーの5人組、MOGWAIによる8作目のアルバム。かつてはハードコアとも謳われた彼らがここで描き出すのは、目の前に広がる荒涼とした心象景色。淡々とループするピアノ、不気味に唸るシンセを大々的に導入したサウンドはポスト・ロックと言うよりもむしろアンビエント。静寂の中にヒリヒリとした緊張感を作り出した前作、そしてゾンビをテーマにしたテレビ・ドラマのサントラを経て、彼らが辿りついたポスト・ロックの極北。John Carpenterの映画のサントラを思い出させるような曲が連続する中、ポスト・クラシカルなTrack.8「Blues Hour」の美しさが強烈な印象を焼きつける。(山口 智男)

Les Revenants

MOGWAI

Les Revenants

MOGWAIの緊張感と内省的な世界観を愛するファンにとっては、今回の轟音ギターこそ鳴り響いていないこの作品もバンドのDNAをより集中して堪能できるという意味で味わい深いのではないだろうか。SONIC YOUTHがサントラを手がけた映画「Simon Werner A Disparu」の監督が脚本を手がけるフランスのTVドラマのために書き下ろした新曲からなる本作の特徴は、生ピアノ、エレピ、キーボードをメインに据え、曲によっては精査され尽くした単音のギター・フレーズや控えめなドラムが配置されている点で、中にはチェロとギターのアンサンブルも。また、逝去したJack Roseへのトリビュートとして録音した「What Are They Doing In Heaven」のカヴァーでのシンプルなフォーク・テイストも慈愛に満ちて美しい。 (石角 友香)

Hardcore Will Never Die, But You Will

MOGWAI

Hardcore Will Never Die, But You Will

MOGWAI約2年半振り7枚目のオリジナル・アルバム。アルコールの購入を拒否されたティーンエイジャーが言い放った台詞をそのまま使ったという過去最高にハードで攻撃的なアルバム・タイトルとは裏腹に、過去最高に柔らかく美しい作品に仕上がっている。心地良いメジャー・コードが奏でる、凍てつくような鋭さは、広大な大地一面に広がる白雪のようだ。極限にまで削られた言葉。だが彼らは言葉では表し切れない淡い感情を、音だけで繊細かつ明確に表現する。彼らの音は、5人全員が同じ気持ちと言うより、5人全員の気持ちが重なった時、5人だからこそ創り出すことが出来る“新たなる形”なのではないだろうか。滑らかに鮮やかな刺繍を施す細い針のようだ。心に様々な模様を打ち付けられてゆくのを感じた。(沖 さやこ)

Special Moves / Burning

MOGWAI

Special Moves / Burning

ライヴに非常に定評がある彼らが満を持して単独ライヴCD+DVDを初リリース。2009年にニューヨークのブルックリンにあるMusic Hall Of Williamsburgで行なわれた3公演から厳選された楽曲と映像を収録している。MOGWAIを語る上で必要不可欠な"轟音"と"静寂"。MOGWAIが創り出す静と動に浸れば浸るほど、音に取りつかれて何も出来なくなってしまった。人は本当に美しいものに触れると、意識も力もどんどん抜けてゆくことを痛感した。極限まで洗練された硬質で繊細な音像のスケール感は、まさしくポスト・ロック第一人者の風格だ。フランスの気鋭映像監督Vincent MoonとNathanaël Le Scouarnecが手掛ける臨場感溢れるライヴDVD も必見。(沖 さやこ)

BUILD THE LIGHT

moke(s)

BUILD THE LIGHT

様々なタイプの"歌モノ"と呼ばれるバンドをやってきた3人ながら、今作には爆音ロックが響きわたっている。歌詞もメロディも美しいのだが、それを伴ったサウンドそのものが、ぶっといトライアングルになっているのだ。ここでこのフレーズがくる!? このアンサンブルにこのメロディが乗る!? という驚きが散りばめられながらも、奇を衒ったようなイヤらしさはない「ログアウト」。3人とも世代的に通ってきている道だろうけれど、なかなかそれぞれの音楽に反映されなかったUSパワー・ポップ感(WEEZER的な)がキャッチーに開花している「THORNS&PAINS」。他にも、収録されている7曲すべてが、衝動の塊になっている。現役中高生、そして永遠の中高生に届け。(高橋 美穂)

Φ

mol-74

Φ

2022年に自主レーベル"11.7"を立ち上げて以降初となるフル・アルバム。mol-74の代名詞とも言える武市和希(Vo/Gt/Key)の透明感に満ち満ちたヴォーカルの、ファルセットをあえて抑え気味にして挑んだ「BACKLIT」をリード・トラックとして先出ししていることからも、結成15年目を迎えてなお現状に甘んじることのない探求心が窺える。またアルバム名の"Φ"は"光束"(光の明るさを表す物質量)の量記号、プロローグとして置いたTrack.1のタイトル"Φ12"は人間の瞳の直径を意味し、そこから始まる全11曲を見つめる光がテーマの作品ということで、1枚を通した物語も重視されており、楽曲同士のリンクする部分、巧みな描写で綴られる景色のグラデーションなど、作り込まれた魅力のあるアルバムだ。(稲垣 遥)

Teenager

mol-74

Teenager

今年4月にリリースされたメジャー・デビュー作『mol-74』が、既存曲の再録を含むアルバムだったのに対し、本作は収録曲のすべてがメジャー・デビュー後に制作された新曲だ。上モノのきらびやかなサウンドが開放感を演出する表題曲「Teenager」。8分の6拍子で滑らかに円を描く「Couverture」。偶数拍にアクセントをつけるスネアのリズムが特徴的な「Playback」。ループするコードを主軸とした「約束」。4曲が共通して描くのは、いかなるときも時間は平等に流れゆくものだということ。その事実は人によって希望にも絶望にもなりえるが、雪解け水のような武市和希のヴォーカルは聴き手の背を叩きも、腕を引きもしない。その温度感が心地よい。(蜂須賀 ちなみ)

mol-74

mol-74

mol-74

mol-74が、バンド名を冠した初のフル・アルバムで待望のメジャー・デビューを果たす。モルカルの楽曲は静謐でひんやりした空気感を持つものが多いイメージがあったが、インディーズ時代の代表曲が多数再録されたこのアルバムからは、既存のファンも引き連れて一緒に"夢見た場所へ"(「Morning Is Coming」)行きたいという温かい想いを受け取ることができる。名曲「エイプリル」が4月に改めてリリースされるというのにも、なんだか運命的なものを感じて嬉しくなってしまう。新曲にはこれまでより温もりのある音が響いているように感じるし、再録曲は繊細なサウンドにさらに磨きがかかり、耳の奥がゾクゾクするような臨場感に包まれる。まさに私たちが"待ちわびた音色"がここに鳴っているのだ。 (大木 優美)

▷ (Saisei)

mol-74

▷ (Saisei)

髙橋涼馬(Ba)の正式加入後、初となるリリース。"鮮やかな僕らの未来が溢れだす"という冒頭のフレーズも新たな始まりを予感させてくれるが、このタイミングで"冬の夜"という原点回帰的なテーマを掲げていることも興味深い。『kanki』や『colors』のような作品を制作することで表現の幅を押し広げたこと、また、ギターのボウイング奏法を取り入れるなど今作においても新たなアプローチに臨んでいることなどが影響し、全体的にアレンジの妙に唸らせられる場面が多い。真価を見つめ深化を続けるこのバンドの成長を垣間見ることのできる作品だ。全6曲で描くグラデーションは、美しく、深みのあるものに。時間の経過とともに光の方へ導かれる感覚がじんわりと温かく心地よい。(蜂須賀 ちなみ)

colors

mol-74

colors

心を真っ白にしてひとつずつ聴き進めていくと何もないキャンパスが色づいていく、そんな"色"がコンセプトの6thミニ・アルバム。繊細なピアノの音色で始まるTrack.1「hazel」。美しくも儚い武市和希(Vo/Gt/Key)のファルセットがまるで音の一環のように耳に入り、序盤からグッと惹き込まれる。Track.4は補色を意味するタイトルの「complementary colors」。徐々に音が重なる幻想的な音色は、まさにmol-74の世界観そのもの。ラストを飾るのは「tears」。"同じ涙を流せないんだ"というフレーズは、透明な涙にはいろんな感情がこもっていて、それは人と一緒にはできない。あなたにしかない"色"があると伝えてくれる。そんな今作『colors』も、あなた色に染めてみてほしい。(滝沢 真優)

kanki

mol-74

kanki

これまで、季節に喩えるならば一貫して"冬"を鳴らしてきたmol-74。この全国流通盤3作目においても、「プラスチックワード」、「ゆらぎ」を筆頭に従来の冷たく繊細な音を研ぎ澄ませつつ、「アンチドート」では目に見えない温もりを歌い、"君の手をひいて連れ出すような歌を歌うよ"と宣言する。そしてその先に用意されていたのは、雪解け、芽吹きを知らせる「開花」。今作はあらゆる解釈ができる"kanki"と名づけられているが、この曲が見せる目がくらむほどの光が溢れるサウンドスケープ、歌詞のとおり"魔法の声"のような幸福に満ちたコーラスが告げる新しい季節の訪れは、"歓喜"と呼ぶほかなかった。小気味よいリズムと今までにない疾走感で駆け抜ける「%」も、新境地を開こうとする彼らの決意表明のように感じる。(松井 恵梨菜)

まるで幻の月をみていたような

mol-74

まるで幻の月をみていたような

"昨日見た夢を上手く思い出せないように、僕らは大切なことを忘れていく"というテーマを、水面に揺れる幻の月という情景描写に託した2作目の全国流通盤。音と音の隙間を大切にしたサウンド作りにも、多くは語らずに行間を読ませる歌詞にも、聴き手が想像力を膨らませるための余白がある。柔らかなハイトーン・ヴォイスはときに日の光を乱反射させながらあたたかみを放ち、ときにどこまでも澄み渡る世界を冷たく提示する。この"どちらにも受け取れる"感じ、mol-74を色に喩えると白だなあと思う。広がり続けるこの白さが、彼らの大きな特徴だ。人混みに何となく疲れたとき、私はmol-74と一緒に独りになる。お気に入りの本のページを開くみたいに、このアルバムの1曲目を再生する。(蜂須賀 ちなみ)

越冬のマーチ

mol-74

越冬のマーチ

それは新雪のように真っ白。降り積もった雪にそっと触れて、手のひらの温度でじんわりと溶けていくあの瞬間のように儚い。3枚目のミニ・アルバムとなる今作でついに京都出身の3ピース、mol-74の音楽が全国流通される。硝子細工のように繊細で、ひんやりとした武市和希の歌声で歌われる甘美なメロディと、そこに重なる賛美歌のようなハーモニー。楽曲の持つ壮大なスケールとドラマティックな世界観は深く、どこまでも澄んでいる。"いつも言葉は足りないままだ"と歌う3人の気持ちが、ひとつひとつの音に刷り込まれているようだ。誰よりも冬を歌ってきた彼らが本当に見つめるその先は、春。冬の冷たさや息の白さを越えるためにこのマーチを持って、胸に宿った種を芽吹かせる。 (齋藤 日穂)

普通でいいこと?

MOLE HiLL

普通でいいこと?

ストレートなメロディに熱いメッセージを託したロック・サウンドでライヴハウスを席巻する京都発の4人組ロック・バンド MOLE HiLLがリリースする約1年ぶりの新作。まず今作はタイトルの"普通でいいこと?"で、バンドからリスナーに向けて"普通の幸せとは何なのか?"というクエスチョンを投げ掛ける。その答えが今作に収録される全6曲だ。"生きているという事は 続いてるって事なんだ"と確信を持って歌うミディアム・バラード「モノゴコロ」を始め、アコースティックな演奏に乗せたウェディング・ソング「shiny blue」など、様々な角度から幸せの在り処を描いている。新しい何かに挑戦することも(「始まりの音」)、失敗から立ち上がることも(「99+1」)、すべて幸せなことだと言い切る強さこそ、いまのMOLE HiLLのたくましさだと思う。(秦 理絵)

Time

MOLE HiLL

Time

誰もが生きる今この一瞬一瞬を輝かせるための音楽を鳴らし続けたい。それが京都発の4人組バンド MOLE HiLLが1stフル・アルバムを作るうえで見いだしたバンドの確固たるテーマだった。今作にはこれまでにMOLE HiLLがライヴで披露してきた楽曲の中から9曲をリアレンジして収録。2曲の新曲も加えたことで、バンドの過去と今を総括する集大成の1枚となった。プロデューサーには阿久津健太郎を起用。サウンド面でもバンドの新たな可能性を切り拓いている。ドラマチックなストリングスのアレンジが疾走感を掻き立てる「変わりゆく世界と君」、ブラス・セッションがいっそうカオスを生んだ「Release」など、その丁寧な音作りにもバンドの今作にかける意気込みを感じた。(秦 理絵)

MOMA EP

MOMA

MOMA EP

蓄音機で音楽を聴く時の、レコード盤上に針を置いたときの様な"ジーッ"という懐かしい音から始まる、東京発4人組インスト・バンドMOMAの1st EP。しばらく経って流れる「やわらかいことば」の繊細なピアノの旋律にうっとりとしてしまう。その後「SUN」、「Two Way Light Delight」と続き、ギターの叙情的なメロディにミニマルなドラム、ベースが織りなす表情豊かなサウンドが繰り広げられる。エモ〜ポスト・ロックを基盤としながらも、独自性と可能性を秘めている彼らの澄み渡った空気感は、シビアな現実から心身ともに解き放ってくれるような感覚を与えてくれる。身を切るように寒い冬の朝、ホット・コーヒーでも飲みながらこの作品をじっくりと味わいたいものだ。(奥村 小雪)

愛彌々

MONGOL800×WANIMA

愛彌々

以前より親交があり、イベントなどでの共演もあったモンパチとWANIMA。昨年のラジオ番組でキヨサク(Ba/Vo)とKENTA(Vo/Ba)が対談した際の、"いつかコラボレーションしよう"が実現した。タイトル曲は両者のコラボ曲、その他互いが曲を提供し合った曲と、互いのカバー曲という全5曲で構成した濃密な1枚になった。言葉の向こう、音楽の向こうに誰かの顔が見える、フレンドリーな歌を届ける両者だけに「愛彌々」はポップで強力なサウンドで、またいつでもこの歌のもとに集まれるような明るく、おおらかなメロディが冴える曲となった。リスペクトとともに、こんな曲を歌ってほしい願望も込められたのだろう。提供をし合った曲では両者新しい面が垣間見える。発展的な1枚であるところにバンドの姿勢が窺える。(吉羽 さおり)

Better Than Heavy

MONGREL

Better Than Heavy

THE REVEREND AND THE MAKERSのJon McClureが、ARCTIC MONKEYSのMatt Heldersらと結成したプロジェクト、MONGRELのファースト・アルバム。Damon AlbarnにとってのGORILLAZ的なプロジェクトと捉えればいいだろうか。全編に渡って、ソリッドなロッキン・ヒップホップを繰り広げている。もともとJon McClureがロックに留まらず、HIP HOP、REGGAE/DUBなどにも振り幅を持つ人だけに、納得の出来である。「Hit Rom The Morning Sun」などで胆の据わったラップを聞かせる女性ラッパー、Pariz -1も注目したい存在だ。また、本作は二枚組みとなっていて、『BETTER THAN DUB』と題されたディスク2では、Adrian Sharwood先生が原曲をさらにスモーキーなDUBアルバムへと仕立て上げている。(佐々木 健治)

YIPSLIPS

MONICA URANGLASS

YIPSLIPS

ドラムレスの3人組が満を持して作り上げた3rdアルバム。前シングルに引き続き、セルフ・プロデュースを行ったことで、バンドのやりたいことが明確に形にできたのだろう。ロックの衝動性、ダンス・ミュージックの躍動感、エレクトロのキラキラ感、異国情緒漂うメロディ、人を食ったような歌詞などを総動員して、彼らにしか鳴らせない音を確立させている。しかもどの曲も口ずさめるメロやキャッチーなフックが仕掛けられているので、散漫な印象も与えない。それも作り手が心から音楽と戯れ、面白がっているからできることだ。様々なジャンルが横溢しているようで、無駄を削いだシンプルなフレーズの数々もポップ度に拍車をかけている。ジャンルの垣根やシーンの壁が少なくなりつつある今、有効に響く音源だと思う。(荒金 良介)

PUXA

MONICA URANGLASS

PUXA

80年代のニュー・ウェーヴやダンス・ミュージックに感化されたサウンドがいくつも存在する中で、MONICA URANGLASSは異色の存在感を獲得している。一目で目を引く程に徹底された奇抜さ。バンドのアイコンである68 (Vo , Syn , Pro)を筆頭に、電子音をバンド・サウンドに落とし込んだ強烈な音を彼らは作り出す。1stアルバム『THE TEMPTATION X』時の「Jill United」などバンド・サウンドに後押しされた勢いのある楽曲と比べ、本作ではギラギラと意欲的なビートが目立つ。異端的な楽曲は全体としてストイックにまとめ上げられ、その中で一音一音がネオンのようにカラフルで、ヴィヴィッドで、ポップな粒として大きく跳ねる。グルグルと目まぐるしく展開するサウンドは円を描くようにリスナーを取り巻き、躍動的なグルーヴを生みだすのだ。懐古的でありながら斬新に変貌を遂げるサウンドはどこまで突き進むのか目が離せない。(山田 美央)

CORELESS.BLAH!BLAH!BLAH!

MONICA URANGLASS

CORELESS.BLAH!BLAH!BLAH!

ロック×トランス「ロッカトランス」という言葉で自分達の音楽を表現して来たMONICA URANGLASSのニュー・シングルが登場。ハイテンション且つエネルギー溢れるライヴ・パフォーマンスで人気を集め、日本のインディーズ・シーンの中核になりつつある彼らの新曲は持ち前のキャッチーな魅力はそのままに、中近東風のメロディを取り入れるなど新たなチャレンジが伺える。タイトル・トラックである「Coreless, Blah! Blah! Blah!」は一つのリリックを繰り返す挑戦的なナンバー。『Coreless, Blah! Blah! Blah!』リリースと幸先の良い2010年のスタートを切った彼らには今年のロック・シーンをどんどんかき回していって欲しい。(遠藤 孝行)

Requiem For Hell

MONO

Requiem For Hell

年間150本以上のワールドワイドなツアーを行い、日本人バンドとして世界のオーディエンスを多く獲得しているインスト・バンド、MONO。近年、逆輸入的に新しいリスナーから支持を得ている印象も。本作では、昨年日本でダブル・ヘッドライナー・ツアーも行ったSHELLACのSteve Albini(Gt/Vo)がプロデュース、録音、ミックスを担当。前作がメンバーのみによるコアな印象だったことと比較すると、ストリングスやピアノも参加し、剛柔のバランスも良く聴きやすい。18分近い表題曲もそぼ降る雨のようなプロローグから、意外な8ビート、そして叙事詩的なストリングスがドラマチックに躍動する。黙示録的なダーク・サイドと、その中でも新たに生まれくる命の美しさ。研ぎ澄まされた轟音と繊細さに身を任せたい。(石角 友香)

For My Parents

MONO

For My Parents

世界規模で評価されている日本の4人組インストゥルメンタル・ロック・バンド、MONO。約3年半ぶりのリリースとなる彼らのニュー・アルバム『For My Parents』は、タイトルから窺えるようにアメリカのホラー・コメディー映画から取られたものだと推測でき、アルバムを通してひとつのストーリー性を感じさせる。大胆にオーケストラをフィーチャーした楽曲群は神秘的で壮大なサウンドスケープがあり、なおかつひとつひとつの音の輪郭をくっきりと鳴らすことで静謐な音響美を生んでいる。初期の彼らにあったノイジーなギター・サウンドによる獰猛性は影を潜めたが、その分、音の全ては丁寧に配置されていて、昏睡を誘い、すっと聴き手を音世界に浸らせる。別の次元で鳴っているようなサウンドだ。(田中 喬史)

Between the Black and Gray

MONOEYES

Between the Black and Gray

約3年ぶりとなる3rdアルバム。ヘヴィすぎず、だからと言って、決して軽いわけではなく、作為なんてひとつもない爽やかなメロディに、ただただ心が洗われつつ、全体の印象がビター・スウィートなのは3作目ならではの成熟なのか、新型コロナウイルス以降の気分の反映なのか。とまれ、そんななかでTrack.1のグランジィなリフやTrack.7のメランコリックなギター・ソロ、日本語で歌うTrack.11の芯の強さが鮮烈な印象を残している。前作に続いてScott Murphy(Ba/Cho)もTrack.4、Track.6、Track.8の3曲のソングライティングとヴォーカルを担当。細美武士(Vo/Gt)が作る歌とはまたひと味違う清涼感を作品に加えている。(山口 智男)

Dim The Lights

MONOEYES

Dim The Lights

細美武士(Vo/Gt)によるポップ・パンク回帰とファンを狂喜させた1stアルバム『A Mirage In The Sun』から2年。もちろん、ポップ・パンクなんてひと言には収まりきるわけがなかったその1stアルバムのサウンドを、さらに磨き上げた2ndアルバム『Dim The Lights』が完成した。アイリッシュ・パンク調のTrack.6「Borders & Walls」ほか、Scott Murphy(Ba/Cho)が作詞作曲のみならずリード・ヴォーカルを務める3曲が加わったことで、MONOEYESのバンド・サウンドはよりユニークなものに。もちろん、ファンが期待している疾走感は申し分ないが、ギター・フレーズが多彩なせいか、シンプルな構成を意識しながら、1曲1曲はそれぞれに広がりが感じられるものになっている。(山口 智男)

marry

MONSTER大陸

marry

2012 年の結成以来、FUJI ROCK FESTIVAL、SUMMER SONICなどの大型フェスに出演を果たし、すでに4枚のアルバムをリリースしている彼らの初のメジャー流通盤。メンバー自らがピックアップした10曲に未発表曲2曲を追加してリマスタリングしたベスト盤となっている。強烈なブギーがブルース・ハープと共に飛び出してくるオープニングの「The Grip」を筆頭に楽曲群はブルースの影響を受けた、というよりもブルース・ロックそのもの。各プレイヤーが聴かせる圧倒的な演奏力はメジャー・シーンではなかなか聴けない本格的なもので、血沸き肉躍るリスナーも多いはず。こうしたジャンルを日本人のオリジナルに昇華する難しさは感じるものの"ブルースを次世代に届ける"という使命感を帯びた彼らは貴重な存在だ。(岡本 貴之)

Hollow

Montecarlo Scrap Flamingo

Hollow

Montecarlo Scrap Flamingoの4年ぶりとなる2ndアルバム。バンド名からまったくどんな音楽をやっているのか想像ができなかったのだが、聴いてみるとますます自分の想像の範疇を超えていた。高校時代をアメリカで過ごしたというイノウエヒロミチ(Vo/Gt)の世界観が存分に発揮されている楽曲たちは、オルタナティヴ・ロックに影響されたギターを中心にアレンジされているが、ヴィブラートがかったロング・トーンを聴かせるヴォーカルがクラシックHR/HM調だったりIggy Popふうにも聴こえたり、なんとなく不安な気分を掻き立てられるのが不思議。そんな中カルフォルニアの空を想って書いたという「405 NORTH」が小唄的で楽しい。異端というわけではないがなんとも形容しがたいこのニュアンス、間違いなく今の日本の音楽シーンにはない存在だ。(岡本 貴之)

拝啓 悲劇のヒロイン

moon drop

拝啓 悲劇のヒロイン

ラヴ・ソングだけを歌い続ける三重県発のバンド、moon dropによる3rdミニ・アルバムが到着した。すでにライヴでの人気曲となっている「シンデレラ」は、爽やかでポップなサウンドとは裏腹に、"前みたいに側で笑ってくれないか"と未練が残る様を歌い、「僕といた方がいいんじゃない」では、"僕と別れてほんとブサイクになったな"とディスりつつも、戻ってきてほしいと皮肉に嘆いている。"拝啓 悲劇のヒロイン"と題しているが、そんなヒロインに気持ちが残っているのは主人公のほうなのだ。彼らの楽曲は浜口飛雄也(Vo/Gt)自身や他者の恋愛体験がもとになっているぶん、等身大で聴き手の胸を打つ。心のどこかに引っかかっていた忘れられない恋愛を想起させる、moon drop渾身のラヴ・ソング集となった。(伊藤 美咲)

ゲゲゲの女房のうた A Ge Ge Version

MOONRIDERS feat.小島麻由美

ゲゲゲの女房のうた A Ge Ge Version

映画版『ゲゲゲの女房』のエンディング・テーマである本作は、MOONRIDERS feat.小島麻由美=鈴木慶一と小島麻由美のデュエット・ソングとなっている。正直、一世を風靡した大ヒット・ドラマの映画版だとかは、どうでもよくなってしまいそうです。兎にも角にも、ヴォーカルが素晴らしく良いのですもの。デュエットは、交互に歌い、節目節目で一緒に歌うという、決まりきったスタイルで、極めてシンプルでありながらも、タンゴを踊っているように、軽快で楽しい。共に希有な存在感と活動スタイルを貫く両者の共演だもの、当然の結果だったのかもしれないが、胸躍らせる、この躍動感にはあっぱれとしか言いようがない。是非、ここで親交を深めてアルバムとか出しちゃって下さい。(島根 希実)

Aspiration

MOP of HEAD

Aspiration

ダンス・ミュージックが多くの人に聴かれるようになる一方で、その定義が曖昧になってしまった現在のシーンに対するMOP of HEADからの回答と言えるミニ・アルバム。バンドの復活を印象づけた2015年の『Vitalize』の延長上にある躍動感に溢れた作品ではあるけれど、彼らが考えるダンス・ミュージックを提示するため、生楽器を一切使っていないテクノ・ナンバーのTrack.5「Acid Pilot」を始め、"人力"、"インスト・バンド"というもともとのバンド・コンセプトにこだわらない多彩な全6曲が揃い、さらに広がったバンドの可能性を印象づける作品に。それでも失われないメロディ・オリエンテッドな魅力は、やはり一番の聴きどころだ。UCARY & THE VALENTINE、向井太一をゲストに迎えたヴォーカル・ナンバーも2曲収録。(山口 智男)

and Touch You

MOP of HEAD

and Touch You

インスト・バンドである彼らがヴォーカル・トラックにアプローチした前作『Vitalize』の挑戦が発展する形で完成したと言えるのでは。様々なダンス・ミュージックに対して、熱度満点のバンド・サウンドで挑む男女4人組の新作は、全5曲がヴォーカル・トラックとなっているが、全曲でゲスト・ヴォーカルを招いているところにバンドの志の高さが感じられる。前作同様、EDMを始め、流行に安易に与したくないというバンドの思いは、ファンキー且つR&Bの影響が色濃いトラックからも窺える。だが、SUPER BEAVERの渋谷龍太を始め、ロック畑を含む多彩なヴォーカリストの顔ぶれは、彼らが特定のジャンルだけに止まらない活動を目指していることを物語っている。そこに期待するリスナーは少なくないはずだ。(山口 智男)

Vitalize

MOP of HEAD

Vitalize

約2年ぶりのフル・アルバム。Hitomi Kuramochi(Ba)やSatoshi Yamashita(Dr)がヴォーカルにチャレンジしている曲もあるが、そのことについて、"歌わない!というコンセプトもなかったので"と言及するのも好奇心旺盛な彼ららしくて好感が持てる。"活気づける、活性化する"という意のアルバム・タイトルの下、緻密な計算というよりも好きなものとやりたいことを全部盛りしたかのような、あらゆる音楽に敬意を払いながらもジャンルの壁をぶっ壊すような、歪且つ痛快なダンス・チューンが集まった。聴き手の身体を血液、いや、細胞単位から踊らせてしまうこの音楽は、狂気と呼ぶべきか、狂喜と呼ぶべきか。第六感までフル動員して確かめるべし。(蜂須賀 ちなみ)

Breaking Out Basis

MOP of HEAD

Breaking Out Basis

ヴォーカル・レスを感じさせない圧倒的なサウンドで今注目のロック・バンドMop of Headが、約2年振りとなる2ndフル・アルバムをリリース。どこか物悲しくメロディアスなTrack1.「Land」で幕を開けたかと思いきや、Track2.「Japanese Boring」から彼らお得意のアッパーなダンス・チューンが始まり、スピードを増していく。まるで真夜中の都会のクラブに迷い込んだような興奮が体を駆けめぐる。そしてこのバンドの実力はこれだけではない。クラブ・ミュージック、エレクトロに、ジャズ、ポップ、ロック……バラエティに富んだ彼らのセンスが続々と展開され、聴き手を惹き込んでいく。ジャンルの枠を飛び越えた1枚、そのめまぐるしさの中に快感を覚えること間違いなしだ。 (眞崎 好実)

MATERIAL

Morestage

MATERIAL

2007年結成のギター×3、キーボード、ベース、ドラムス、VJによる7人編成のポスト・ロック・バンドが放つ2ndミニ・アルバム。Track.1「Intro」からTrack.7「Material」まで、各プレイヤーが楽曲の一部となって構築していく音楽は感動的な響きを持ってエンディングへと向かって行く。インスト曲でありながら各曲の世界観を表した詩と5人のグラフィック・アーティストが手掛けた絵画が封入されており、それらを見ながら展開していく曲を聴いていると新しいインスタレーションの手法を体験しているようにも感じる。ポスト・ロックやアンビエントという言葉では語り切れないスケールの大きな表現力を持った作品であるだけに、大きな会場での再現ライヴが観たくなった。(岡本 貴之)

Believe

Morgan Page

Believe

アメリカ・バーモント出身のMorgan Pageは、2008年にリリースされた『Elevate』が2009年のグラミー賞にノミネートされるなど、実力を兼ね備えた話題のマルチ・アーティスト。リミキサーとしての手腕も高く、多くのアーティストが彼にリミックスを依頼。Madonna、Katy Perry、Stevie Nicks、B-52’s、COLD PLAY、オノ・ヨーコなどのリミックスも手がけている。そして日本デビュー盤となる『Believe』は全体的に包み込まれるような暖かみのあるサウンドとリズムで、じわじわとまったりとした高揚感が心地いい。ハウス・トランス初心者にオススメしたい1枚。夜一人でゆっくりしたい時に聴いてみるのもいいかも。(成田 早那)

JIGOKU 6

Mori Calliope

JIGOKU 6

VTuberのラッパー、Mori Calliopeのメジャー2nd EP。前作『SINDERELLA』で表現された"罪"を犯したあとに辿る"地獄"をテーマにした作品で、新曲6曲が収録されている。「虚像のCarousel」の作詞/歌はReol、「未来島 ~Future Island~」の作詞作曲はケンモチヒデフミ(水曜日のカンパネラ)、「Black Sheep」のプロデュース/作曲は蔦谷好位置、「six feet under」の作詞作曲はTK(凛として時雨/Vo/Gt)と、ジャンルを越えた幅広いアーティストが集結。彼らが参加した個性の強い楽曲を、Mori Calliopeはなんなく乗りこなし、特に「six feet under」では高速ラップを披露。その実力を遺憾なく発揮している。(高橋 美穂)

Mori Calliope Major Debut Concert "New Underworld Order"

Mori Calliope

Mori Calliope Major Debut Concert "New Underworld Order"

"死神ラッパー"として話題を集めているVTuber、Mori Calliope。昨年7月に豊洲PITで開催されたメジャー・デビュー記念ライヴであり、彼女にとって初の単独公演となった一夜が待望の映像化。TeddyLoidをDJに迎えたアグレッシヴな展開や、彼女が所属している"hololive English -Myth-"のメンバーたちがサプライズ登場した「The Grim Reaper is a Live-Streamer」をはじめ、豪華ゲストたちとの共演もあって見どころばかりだが、その中でもやはり強烈に残るのは、彼女のラップであり、歌だ。時に滑らかに、時にハードに、モードを巧みに切り替えながら言葉を捲し立てていく姿は、何よりも華がある。日本語と英語を交えたMCから伝わってくる真摯な想いにも胸を打たれる圧倒的な110分。(山口 哲生)

SINDERELLA

Mori Calliope

SINDERELLA

"ホロライブプロダクション"傘下の英語圏グループ"hololive English -Myth-"に所属しているVTuber、Mori Calliopeのメジャー1stフル・アルバム。"10個の大罪"をコンセプトに、THE ORAL CIGARETTESの山中拓也(Vo/Gt)、JP THE WAVYというロック・シーン/ヒップホップ・シーンの最前線を走るふたりや、Moriが多大な影響を受けた日本のネット・ラップ・シーンからはFAKE TYPE.を招聘しつつ、"死神ラッパー"の異名の通り、"魂ちょうだい"と叫ぶアッパーなダンス・ポップ「soul food」や、静謐でメランコリックな「glass slipper」など、自身がリリックを綴ったものも収録している。ラップ・ミュージックに軸足は置きながらも、様々なジャンルの架け橋にもなりうる強力な全10曲。(山口 哲生)

Love is Over!

MoritaSaki in the pool

Love is Over!

2021年結成、京都を拠点に活動する4人組バンド MoritaSaki in the pool。風変わりなバンド名に気を惹かれたら最後、ドリーミーな音像とシューゲイザー・サウンドに一瞬で虜にさせられる。淡い高揚感が静かに凝縮された1曲目「Portraits」は、荒くれたギターで幕を開けるロック・チューン「MIRROR'S EDGE」への加速装置。物語の冒頭を想起させるような、煌めいた瞬間が詰め込まれた待望の1stフル・アルバム『Love is Over!』は"青春"という言葉がよく似合っており、透明感のある男女ツイン・ヴォーカルの掛け合いや要所のギター・リフ、サビで炸裂する轟音はどこかSUPERCARを彷彿とさせる。海外アーティストと共演する等、着実に歩を進める彼等の活躍から今後も目が離せない。(山本 剛久之)

Big Echo

THE MORNING BENDERS

Big Echo

GIRLSのChristopher Owensを始め多くの地元ミュージシャンが出演した「Excuses」のビデオでも話題を集めたカリフォルニア出身の新人バンド。各メディアでも取り上げられ今旬のバンドの一つと言っても過言ではないだろう。THE BEACH BOYSを彷彿とさせるウォール・オブ・サウンドとグッド・メロディを聴かせてくれる。共同プロデューサーにGRIZZLY BEARのChris Taylorを迎えた事も多きのだろう、ストリングスの使い方も巧みでVAMPIRE WEEKEND と同様にロック・バンド然としたアプローチは薄く、クラシカルな雰囲気を持ちながらもとても刺激的なサウンド・スケープが広がっている。とても美しいアルバムだ。(遠藤 孝行)

MOROHA Ⅳ

MOROHA

MOROHA Ⅳ

アコースティック・ギターのUKとMCのアフロ。ふたりによるふたつの音で紡ぐアンサンブルは、時にどんなバンドのサウンドよりも分厚く雄弁で、発明的な独自の形を進化させつつも、講談師の如く伝統芸能的な側面も見せる。昨年結成10周年を迎え、今や企業CM曲や公的機関のキャンペーン・ソング、映画主題歌にも採用される存在となったが、吐き出す言葉が緩むことも、忖度することもなく、赤裸々に鋭利に心から切り出して、まだ脈打つ熱さを持ったままの感情、言葉を手渡してくる。アフロ自身のパーソナルな視点、彼自身の歌であるが、その半径数十センチを極めるほどに、心揺さぶる歌となる。MOROHAの音楽が引っ張り出す自分の思わぬ気持ちに動揺することもあり、笑いが滲むこともあり、今作もまた厄介だ。(吉羽 さおり)

MOROHA BEST~十年再録~

MOROHA

MOROHA BEST~十年再録~

TVドラマ"宮本から君へ"エンディング曲に起用された「革命」で幕を開ける再録ベスト。そう、今年結成10周年を迎えたMOROHAのメジャー第1弾作は、ライヴで磨き抜かれた楽曲を真空パックした内容となった。孤独や敗北をガソリンに時に感情をぶちまけ、時に優しく囁くアフロの情熱的なMCは聴く者の心臓をギュッと掴んで離さない。それに寄り添うUKのアコースティック・ギターは繊細だったり、パーカッシヴにリズムを刻んだりと、表現も実に多彩。最小ユニットにして無限の可能性を秘めた音楽は、全12曲という楽曲に収まり切れないエモーションに溢れている。彼らは"どこにも居場所がない"と口にしていたけれど、全ジャンルを対手に格闘する真のリアル・ミュージックがここにある。身も心も震える。(荒金 良介)