Laughing Hick ホリウチコウタの能ある君は僕を隠す 第7回
2025年11月号掲載
「カッチン」って音がした。
なんの音だよ、驚かすなよ。深夜の2時だぞ?こんな夜中になんだよ。怖いよ。でも、こっちだって大の大人だからな。舐めるなよ。と鼓舞して弱虫を言い聞かせて強いフリをして生活をしていると忘れた頃にまた......
「カッチン、カッチン」って音がした。
ほうほう。今度は2回か。何やら後ろのほうから音がするぞ。と今回は覚悟を決めて思い切って振り返ってみると。そこには、顔見知りが立っていた。"締め切り"さんだ。薄々そんな気はしてたけど、毎度「カッチン、カッチン」ってケツカッチンの足音を立てやがってうるさいよ。「頼んでもないのに、いつもわざわざ会いにきてくれてありがとうな。」なんて皮肉を言いながら能ある君は僕を隠すの第7回を書いていこう。
シャツに飛んだ1滴のカレーの汁が気になって仕方がない。別に、着ているシャツが真っ白だとは思ってないし、これからも真っ白のシャツは選ばない気がする。それなのに、たかだか1滴のカレーが気になってしまって情けない。いつからだろう。こんな思いをするようになったのは......。
3年前くらいだろうか。段々とコロナが落ち着いてきた頃だと思う。その当時、遊んでた子とホテルに入ってシャワーが終わるのを心待ちにしながらSNSをチェックした時。たまたま「愛してるって」のAメロのショート動画が注目を浴びていた。恐る恐るコメント欄を覗いてみると「ほんとにその通り」みたいな共感の声と「声がカッコいい」みたいな嬉しいコメント。でも、その中に「ほんっっっとにダサいな」とか他にもコラムに書くのすらも億劫なコメントも沢山あった。
沢山?たくさん?Takusan?本当に沢山か......?
きっと沢山ではない。久々に勇気を振り絞って当時のコメント欄を見にいってみても決して沢山ではなさそう。多く見積もっても10%とかだろう。もしかしたら、10%もない。それなのに、シャツに飛んだ1滴のカレーが。アンチが気になって仕方がない。もしかしたら、遠目で他人が見たら新品のシャツとなんら遜色ないのかもしれない。でも、当の本人は恥ずかしくてたまらない。穴があったらぜひ入りたい。街ゆく人が全員こちらを見ている気がして歩けやしない。何度、洗濯をしても、ハイターで漂白しても、カレーのシミは薄っすら消えずに今も残ってる。
大袈裟かもしれないけど、当時は全世界が敵になったのかと思った。今も、たまに来るカレーコメントには頭を抱えてる。でも、あの頃に学んだことが1つある。
それは、味方だけを見る。好きな人のことだけを考えるってマインドを持つということ。
人生は長くないらしい。なら、自分のことを嫌いな奴に時間を使ってどうする?そんな、通りすがりのカレーマンに時間を使うくらいなら好きな人に時間を使ったほうが何億倍も良い。昔、中島敦が山月記で言ってた。「人生は何事をも為さぬには余りに長いが、何事かを為すには余りに短い」って。何事かを為したい俺の人生はきっと短い。ってことは尚更、カレーマンに時間を割いてる時間はない。しかも、そもそもバンドマンみたいな職業は彗星みたいなものだから。一瞬だけ輝いて消えて行く。だからこそ、その一瞬を無駄にしたくない。
今、好きでいてくれる人。今、俺が好きな人のために鳴らし続ける。君のためだけに鳴らしている音に会いにきて欲しい。
『Voyager』。遠くを旅する人。2023年の1月22日から始まった旅。もっともっと、遠くへ行きたい。まずは、11月11日の渋谷CLUB QUATTRO。12月5日のMusic Club JANUSで今を刻もう。
こんな不束なバンドを今日も愛してくれてありがとう。
あっ、そういえば「カッチン」って音。鳴り止んだな。
Laughing Hick
誰しもが抱く素直な想いや心の葛藤をストレートな言葉で紡ぎ、日常のリアルを共有する山梨発のギター・ロック・バンド。共感性の高いリアリティのある楽曲がYouTubeやTikTokで話題となり、10~20代のZ世代を中心に注目度が高まっている。2025年6月にデジタル・シングル『マラカイト/ふたりの恋』を発売。11月、12月には東阪でツーマン・イベント"Voyager"を行う。
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