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INTERVIEW

Japanese

Laughing Hick

2024年11月号掲載

Laughing Hick

Member:ホリウチコウタ(Vo/Gt)

Interviewer:藤坂 綾

今年4月に渋谷WWW Xでの初ワンマン("Laughing Hick ONEMAN LIVE「ダンデライオン」")を大成功で終え、その後も各地のライヴ、サーキット・イベントでその実力と勢いを知らしめ、着実に進化を遂げるLaughing Hickが、デジタル・シングル『オリオン/愛なんて嘘は置いといて』をリリースした。大きな広がりと新たな一面を見せた今回の2曲。その変化の根源となったものとはいったいなんだったのか――初ワンマンを振り返りながら、その想いをホリウチコウタに訊いた。


もっと大きなステージに行けるんじゃないかって、感じられる作品になった


-[Laughing Hick LIVE TOUR 2024 "ダンデライオン"]のファイナルでの初ワンマン、振り返ってみていかがですか。

めちゃめちゃ楽しかったですね。初めてのワンマンだし、対バンのお客さんがいないからお互い両想いみたいな、そういうちょっと小っ恥ずかしい空間ではあったけど、それ以上に気持ち良かったです。ステージが始まる前のお客さんの熱気みたいなものも全然違ったから、ステージ立つ前に"あ、今日ヤバいな"と思って。

-熱気すごかったですよね。あと、お客さんがかっこいいです。

ほんとですか? めちゃくちゃ嬉しい。

-予定調和じゃないというか、好きなところで声を上げて、手を挙げて、それぞれが好きなように楽しんでて、すごくかっこいいなって。ファンとフロアで一緒にライヴを作り上げていくっていうライヴの1つの形みたいなものも、あのワンマンで確立されたのかなと。

たしかに、自分たちのやりたいものをステージからぶつけて、お客さんがそれを受け取って、感じて、返してくれる反応が気持ち良かったですからね。それを経ての初のワンマン・ツアー"Laughing Hick ONEMAN TOUR 2024"がこの後控えてるんですけど、そういう気持ち良さもまた感じられるかと思うと嬉しいし、前回のツアーと同じ4ヶ所をまたワンマン・ツアーで回りたいと思っていたのが叶ってるということもあって楽しみですね。

-そのワンマンを経ての今回のシングル『オリオン/愛なんて嘘は置いといて』、かなり手応えを感じてるんじゃないかと思うのですが。

感じてますね。Laughing Hickらしさはありつつも、新しいことにチャレンジしたっていう感じがすごくあって。サウンドも書く内容もそうだし、今一番いい感じで出せるんじゃないかと思ってます。

-いつ頃書かれたんです?

「オリオン」は、去年の[Laughing Hick LIVE TOUR 2023 "さよなら恋人、おかえり恋心"]のファイナルの後だから12月で、「愛なんて嘘は置いといて」は今年の5月に書きました。

-だからなのか、「オリオン」はツアーやワンマンがあったからこそできた曲なのかなと、そういう印象を受けました。

そうですね。これまでは一生という長さよりも、今しか生きられない人間だからこそ、その一瞬を大切にしたいよねって、そういう生き方を大事にしてきたんですけど、"さよ恋ツアー(Laughing Hick LIVE TOUR 2023 "さよなら恋人、おかえり恋心")"を経て、こんな素敵な一瞬があるんだったら、これを一生にできたらいいなって、そういうことを考え始めたのが「オリオン」を書くきっかけだったんです。どちらかというと、出会ったってことはいつか別れが来るよなっていう寂しさというか、"今"にいるにもかかわらず、その先の悲しい別れを考えてしまう性分なので、どうやったらこれを永遠にできるだろうかって自問自答を繰り返し、殴り書き、曲にしていった感じです。

-サウンド的にも内容的にも、すごく視野が広がりましたよね。どちらも壮大というか。

アプローチは違いますよね。サウンドも、歌ってる内容も。小学生の頃に宇宙飛行士を目指していたぐらい小さいときから宇宙が好きで、だからタイトルもオリオン座から取ったんですけど、オリオン座って一等星が2つ存在する星座なんですよ。だから自分と応援してくれているみんなだったり、恋愛でもいいし、友情でもいいし、そういった2つで1つの形を永遠に作っていけたらいいなって願いを込めてタイトルにして。そこからそれに合う壮大なサウンド・アプローチを頑張ってみました。

-コウタさんは曲を作るとき、詞と曲どちらが先とかあるんですか?

ほぼ同時っていうのが結構多いかな。弾き語りで、歌いながら。昔、「ランプ」(2023年リリースのデジタル・シングル『女だから』収録曲)を作ったときに、歌詞は後でいいかなって"ラララ"で歌いながら作ったら、その"ラララ"を超えていくことができず、すごく行き詰った経験があって。そこで、たぶん自分はどっちかを先にしたらダメなんだと思って、それからは弾き語りで作るようにしてます。

-これまでは恋愛の歌、その中でもちょっと歪んだものが多かったのが、ここまで広がった大きな愛を歌うということは、やっぱり届けたい気持ちがより強くなったとか、届けたいことや人がより明確になったのかなと。

何かを明確に届けたいと思える人がいたのは結構デカいですね。待っててくれてる人がいて、届けられる場所があって、だからそこに対して何を伝えられるだろうかって考えるようになって。今までのような、誰かに対して歌うというのとはまた違うし、いわゆるそういう恋愛をしてる人に向かってというよりも、"もっと届け!"っていう気持ちが大きかったです。

-サウンド的にここまで壮大になったのは?

プロデューサーのKAZUKIさんにデモを作っては聴いてもらってということを繰り返していくなかで、最近手癖になってない? っていう話から、サビ頭のコードをいつもとは違うアプローチにしてみたらどうだろうか、というヒントを貰って。それに対してアプローチをしていったら、今までやってこなかったこと、ラフィング(Laughing Hick)っぽくないからって逃げてたところに行きつくことができたんです。

-ラフィングっぽくないからって逃げてた。

自分らしくないなと思って。

-ラフィングっぽくない、自分らしくないというのは?

ストレートに明るいというか、そういうのって自分が想像してるラフィングとは違って、もうちょっと陰にいてほしいみたいな気持ちがあったから選んでこなかったんですよね。それをサビ頭で使ってみたらどうなるかなと今回やってみて、すごく自分でも新鮮だったし、自分が今まで逃げてきたところ、触らなかったところに出会うことができたかなと。

-ラフィングっぽくない、自分らしくないというのは、自分で制限をかけていた、みたいな。

そうですね。ただ単純に自分らしくないかなと思ってたんだけど、勝手に自分の中で制限していたというか、勝手にやりたいことを狭めてたんだなって。だから今回こういう曲ができて、もっとやりたいことをやっていいんだなと思いました。

-リリースやライヴを重ねていくなかで、自信やメンバー間の信頼も深くなっていったことも大きいのかと。

それはありますね。リリースを重ねていくなかでついた自信もあるし、自分の物差しを信じられるようになっている部分は年々大きくなってきてるし。メンバー間の信頼もそうで、自分のわがままを2人に伝えることができて、2人は大変なのかもしれないけど(笑)、自分のやりたいことに対して、2人が返してくれるようになったっていうのもデカいです。こういうことをしたいって、ちゃんと意見を言ってくれるようになったし。

-なるほど。

僕は伝えられてるけど、2人はきっと全ては伝えられてないのかなと思いながらやってたんですが、今はちゃんと自分の考えを持って、素直に伝えてくれてるなって。そういう作り方ができてる気がします。

-それはバンドとしては大きなことですよね。

大きかったですね。あかり(Ba)が入ってから、1段飛ばしせずにライヴのキャパも広げていって、もっと大きい場所で見せたいなというか、お客さんにも"ラフィングヤバいな"ってところをもっと見せたかった分、大きい場所が似合うようなサウンドにもしたかったし、今回の曲はそういうふうに作れたかなと。もっと大きなステージに行けるんじゃないかって感じられる作品になったと思ってるので、大満足ですね。

-「オリオン」に対するたいち(Dr)さんとあかりさんの反応はどうでした?

やっぱりラフィングっぽくないんじゃないかっていうことは結構話し合いましたね。他の曲のほうが今のラフィングのファンは嬉しいんじゃないか、とか。一番最初のデモのときは、もっとロック色が強かったんです。たいちはロック好きだからそれが好きだったけど、あかりが"これちょっと重いんじゃない?"って。そのあかりの目線がなかったら、もうちょっと男たちが好き勝手にやったサウンドになってたかもしれないです。

-もっとロックな「オリオン」。

そうです。

-それも気になるけど、良かったです、あかりさんの言葉があって。

正直、怖いは怖いですけどね。