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INTERVIEW

Japanese

ネクライトーキー

2025年04月号掲載

ネクライトーキー

Member:もっさ(Vo/Gt) 朝日(Gt) 藤田(Ba) カズマ・タケイ(Dr) 中村 郁香(Key)

Interviewer:石角 友香

-たしかに自分の感情が乗る言葉ではないですよね。

もっさ:そう、自分の感情を伝えるときに使う言葉ではないので。でもあのときに感じる衝撃やつらさみたいなのがこの一言でドン! と来るから、この歌詞が来たときドキッとしました。

-面白に転んでいるように見えて、実は朝日さんの本音が語られてる感じがしますね。

朝日:愛を持って書いた歌詞があるんです。"大事な写真ならもっと嫌いになるほど見とけ"っていう歌詞が、この曲の中で一番印象に残ってて。ややこしい話なんですけど、例えば10代の頃にすごく好きだったAっていうバンドがいたとして、30代になって改めて聴いて"懐かしいね"みたいに思うとするじゃないですか。だけど、若い世代がそのバンドAを、今30代の彼よりも長い期間聴いてたとすると、そのときの勝ち負けの話を俺は勝手にしてて(笑)。"俺は若い頃にリアルタイム世代で聴いてたけどね"みたいなことをおじさんが言い出してマウント取られそうになったら、若い世代はこの"大事な写真ならもっと嫌いになるほど見とけ"をぶちかましてくださいっていう(笑)。

-おじさんの立場も分かるからこそ?

朝日:そうです。"そのときはあなたの感覚を見せたってください"という歌詞です。

-メンバーとしてはこの複雑な感情をどう消化してますか?

もっさ:今の朝日さんの話はちょっとよく分かんないんですけど(笑)。

一同:(爆笑)

もっさ:でも今の自分にめっちゃしっくり来る歌詞だったんで、まぁ変わってないんだなって思いましたね。私がいつの間にかヒーローになってると思ってたらヤバいんで(笑)。5周年だからといって別に気張ってないのがちょうどいいです。

-なるほど。そして「モブなりのカンフー」の中にも"そういうものでしょう?"っていう歌詞があって2曲目のタイトルが"そういうものでしょう?"なのは偶然ではない?

もっさ:(笑)朝日さん言ってたもんな、"そういうものでしょう?EP"になりそうって。

-それもしっくり来るタイトルですね(笑)。曲としてはミドル・テンポで地に足の着いた印象がありました。

藤田:会議でこの曲の呼び方が"淡々と"だった。

朝日:プロジェクト・ファイルを決めるときのタイトルが(笑)。でも"そういうものでしょう?"に諦め、ひねくれ感が一番出てるなっていう。でも個人的には思ったより曲調がそこまで暗くならなくて良かったなと。歩きながら聴ける感じがあって、意外と小気味よく仕上がったなと思いますね。

タケイ:僕はこのEPの中で特に気に入ってる曲なんですよ。その"淡々と"という仮タイ通りビートもすごくシンプルにしたかったけど、打ち込みっぽくならないようにもしたかったんです。なのであえてちょっと崩して――と言いつつ大きく気持ち良さが損なわれないような崩し方なんですけど。例えばハイハットのニュアンスをランダムに開けたり閉めたりとかいうレベルの話で、目指すところは聴き心地の良いものでしたね。

-そして「怠惰でいいナ」はもっささんの作詞作曲です。日常的ではあるけど切なさもありますね。

もっさ:(笑)切ないですよね。楽しい曲を作りたかったんですけど......(笑)。

-書いていくうちにこうなったんですか?

もっさ:『TORCH』で緊張感のある曲を作っちゃったから、ちょっと肩の力抜きたいな、ゆるく楽しめる曲を作りたいなって思って。で、曲ができたんですけど、歌詞を書いていくうちに、"大丈夫かな?"みたいなものになってしまって(笑)、大人になってしまったなと一番実感しました(笑)。

-"怠惰でいい"って安心させてあげるような内容かと思いきや内面に迫っていきますよね。

藤田:サビとかかなり重いですよね。

もっさ:チャットモンチーに「やさしさ」という曲があって、"明日ダメでも 明後日ダメダメでも/私を許して"って歌詞がめっちゃ好きで。いわゆる自分のダメなところを認めて許していこうみたいな曲が好きで、そういうのを作ろうと考えて作ったんですけど(笑)、結局そうやってると後々つらくなったり、なんでこんなことしてたんだろう? ってなったりするのが後半ちょっと漏れちゃったんだと思います。

-それによっていい曲になってる気がしますけどね。

もっさ:大人になっちゃったなって。昔の自分の歌詞のほうが、希望がまだあったんだけどなというか。

-希望は全然あると思いますけど、"夜中のカップラーメンがうまい"的な切なさは若いときとは違うかもしれない。

もっさ:泣きながらご飯を食べたことがある人は大丈夫だみたいな言葉を見たことがあって、まぁ分かるなと思いつつ(笑)、明るい絶望を歌おうみたいな。でも明るくいたいと思ってます。

タケイ:面白いのが、歌詞が分かる前にオケはあるから、本気で明るい曲だと思って演奏してるところで。

もっさ:いや、でもそれで良くて。

藤田:歌詞聴いて"どうしたん?"って(笑)。

中村:私、サビだけはどっちにも転べるように作ったかも。ちょっとだけ哀愁入ってもいける音作りを実はしてました。そこまで100パーセント明るい曲をもっさが書くのかな? って一瞬思っちゃったんですよ。

-中村さんの読みが当たった。ところで、会場限定でCDも発売するんですね。

朝日:逆にこの時代だからCDはグッズだよっていう、ネクライトーキーからのメッセージかもしれない(笑)。

-ツアー"ゴーゴートーキーズ!2025 北上"も5月からスタートしますが、北上することに何かこだわりが?

藤田:効率的そうで全然効率的じゃないツアーの回り方なんですよ(笑)。

-たしかに。ずっとツアーに出っぱなしじゃないですもんね。

もっさ:「北上のススメ」(2020年リリースのメジャー・デビュー・アルバム『ZOO!!』収録曲)を出した年のツアー("ネクライトーキー「ZOO!!」リリースツアー 「ゴーゴートーキーズ! 2020春」")が緊急事態宣言等もあってほぼできなくて、今もう一度そのツアーをやることはできないけど、あのときにできなかったことをちょっと大切にしたいっていう。



藤田:思いを馳せて。

朝日:あとメジャー・デビューの皮切りが、「北上のススメ」から始まったみたいなとこがあるので、"北上"という言葉の印象が強いんです。

中村:ツアー・ファイナルを北海道でやるっていうの、個人的にはちょっと勇気がいるんですよね。

藤田:地元バンドではないのに札幌でファイナルという自分たちとしては珍しい試みなので楽しみです。