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INTERVIEW

Japanese

Lenny code fiction

2023年08月号掲載

Lenny code fiction

Member:片桐 航(Vo/Gt) ソラ(Gt) kazu(Ba) KANDAI(Dr)

Interviewer:山口 智男

「幸せとは」を聴いてほしい。アルバムの最後に持ってきたことには、ちゃんと意味があるので


-「幸せとは」のリズム隊の演奏はかなりタイトですね。

kazu:歌詞の素直さを際立たせたかったので、あえて何もしないほうが今回のアルバムの締めくくりにちょうどいいと思いました。

KANDAI:今までの傾向で言うと、ドラムで結構手数を稼いで、勢いでやるっていうのが多かったんですけど、今回、自分の好きな音とバンドにとっていい音って多少違うよねって話を改めてして。もちろん自分の好きな音を詰め込ませてもらった曲もあるんですけど、本当にいい音というか、ドラムっていろいろな音を出せるけど、その中でみんながいい音だと思って、且つ自分も好きな音をアルバム1枚通してかなり突き詰めました。そのうえで太い音を出そうっていうのがテーマのひとつだったんです。太鼓の芯がちゃんと鳴っているというか、今までは手数が多いぶん、サンプリングみたいに聴こえたところもあったかもしれないですけど、太鼓の本質を見直して、そのぶん歌詞もより聴こえやすくなったと思うし、逆に「Sleepless Night」では曲調に合わせて電子ドラムを入れてみたりもしましたし。そういう音の追求をしたアルバムだと思います。

-曲によってはベース、ドラム共に音を詰め込んだ曲もあることを考えると、曲ごとのメリハリがこれまで以上にはっきりしてきたとも言えると思います。ところで、今回、10曲目に入っている「あなたがいなくなったら」は言葉を選ばずに言うと、メロドラマ的なバラードという意味ではレニー(Lenny code fiction)には珍しいと思うのですが、そういう曲を2022年11月のタイミングでリリースしたのは、どんな意図があったのでしょうか?

片桐:「ビボウロク」があって、「あなたがいなくなったら」があって、そのあとに「SEIEN」と続くんですけど、「ビボウロク」で弱さを若干出しながら、強い意思もあることを表現したとき、すでに「SEIEN」をそのあとにリリースすることが決まっていたんです。その「SEIEN」のテーマが強い意思だったので、その流れの中で1回、弱さを見せておきたいというか、ちゃんと歌詞の中で素直に弱さを表現しておかないと、「SEIEN」をリリースしたときに「ビボウロク」で弱さを表現したことが打ち消されちゃうと思ったので、今回のアルバムに繋がるいちバンド、いち個人としてのドラマの道筋を作るためには、「あなたがいなくなったら」の弱さが必要だと思ったんです。

-強がっている1番と素直に弱さを歌っている2番の歌詞の対比も効果的だと思うのですが、バラードと手数の多い演奏の組み合わせは、あくまでもロック・バンドであるレニーならではですね。

ソラ:失恋を歌ったラヴ・ソングがいっぱいある中で、そういう曲をレニーでやる意味を考えた結果です。そういうことは常に、どんな曲でも考えているんですけど、特にこういうラヴ・ソングというか、マスにリーチしやすい曲に関しては、どれだけやる意味を持たせることができるかを、アレンジするときに考えています。

-なるほど。「ビボウロク」もメロディが染みるすごくいい曲ですよね。それも含め、前のアルバムから5年近く経っているから、当たり前と言えば当たり前なんですけど、今回のアルバムでは成長と洗練をすごく感じました。そんなところも聴き応えに繋がっていると思うのですが、その他に語っておきたい曲はありますか?

片桐:それを言ったら、やっぱり「幸せとは」を聴いてほしいというか、アルバムの最後に持ってきたことには、ちゃんと意味があるので。

-先行配信しているところからもその思いは感じます。

片桐:なので、1曲目の「夢見るさなか」から聴いてもらって、いろいろな感情があるからこそ11曲目の「幸せとは」に繋がっているみたいな聴き方をしてもらったら、よりいっそう、深いところまで楽しめるんじゃないかと思います。

-いろいろな感情があったからこそ、最後"君の事信じて/心から思うのは/僕らの出会いを歌ってくよ/幸せをありがとう"と歌っているんだ、と。

片桐:そうです。1曲目から10曲まで聴いて、印象に残った言葉を覚えてもらって、11曲目はしっかり1文字ずつ噛みしめて聴くのがベストなんじゃないかな。アルバムとしては、そういう聴き方をしてもらえると嬉しいです。

ソラ:僕は「Memento」ですね。Lenny code fictionの音楽偏差値の高さを物語っていると思うんですよ。ライヴを観に来てくれるミュージシャンの評判もいいんです。この1曲があることによって、多くの人に届けられる曲も自然にできるというか、説得力が生まれるんだと思います。

-R&B調の曲なんですけど、ギター・リフはガレージ・ロック風で。

ソラ:UKロック大好きな感じが出てると思います。なおかつアウトロのギター・ソロはJohn Frusciante(RED HOT CHILI PEPPERS/Gt)リスペクトな感じで、平歌のコード・ワークは日本のロックの緻密さに由来している。僕が今まで聴いてきた音楽の影響が出たという意味でも自信があるんですよ。

-リズムを刻んだり、メロディアスなフレーズを弾いたり、「Memento」はベースも聴きどころですね。

kazu:この曲は最後のサビに繋げるために、音数の少ないところからだんだんセクションごとに増やしていくってことをしているので、テンポはゆっくりなんですけど、16分ノリのグルーヴィーなフレーズを弾いたり、かちっとリズムを刻んだりってところで、いろいろ試しましたね。これまでは8ビートの音が詰まっている曲が多かったので、こういう隙間が多い曲は、どんなフレーズを入れようか考えるのが楽しかったです。

-ドラムも今までにない感じで。

KANDAI:ただ、タムでドーンとやる感じも含め、自分の好きなフレーズ、リズム、手数を詰め込みまくっているんです。だから、意外とこういうのが好きだよって曲で、好きなドラムの曲なんですかって聞かれると、「Memento」って答えているんですよ。

-「【Lenny code fiction】」という曲が入っていますが、今回のアルバムのために作った曲なんですか?

片桐:前からある曲なんですけど、サウンド、楽曲だけ残して、歌詞だけ新たに書きました。

-片桐さんの好きな32本の映画のタイトルを使って、歌詞にしています。その32本は製作国、製作年、ジャンルもバラバラで、片桐さんがあらゆる映画を見ているかなりの映画ファンだと言うことを物語っていますね。

片桐:インプットが基本、映画だったので、その中から特に印象に残った32本を抜粋しただけなんですけど、その32本全部観てくれる人がいたら最高だなっていう。まぁ、挑戦状的な曲ですね(笑)。

-この曲を聴けば、"Lenny code fiction"というバンド名の由来もわかる、と。

片桐:バンド名を決めたときからこういう曲を作りたいと思っていたんですよ。歌詞カードもそこだけ色を変えたので、ちゃんと歌詞を見た人には由来まで伝わると思います。

-歌詞も面白いんですけど、ギター・リフをはじめ、演奏もかっこいい。

KANDAI:一番手数が多いと思います。うちのバンドの中で一番大変な曲になってしまいました(笑)。

-9月8日から始まるリリース・ツアー"2nd Album Release Tour 『ハッピーエンドを贈りたい』"は計6本中、最初の4本は3マンですね。

片桐:コロナ禍以降、ワンマン・ツアーばかりだったんですよ。この間、ようやく対バン・ライヴをやって、対バン・ツアーやりたいと思いました。ワンマン・ツアーしかやっていない時期が長かったので、今回はちゃんとバンドらしく、対バン・ツアーをやろうということですね。

-最後にツアーの意気込みを聞かせてください。

片桐:アルバムのリリース・ツアーが久しぶりなので、それこそどの曲が一番、人気曲になるのかシンプルに楽しみです。やっている側としてもやりながらテンションが上がる曲がどれなのか、ツアーが始まらないとわからないし、初日とファイナルでも全然変わってくるだろうし。その曲がいっぱいあるっていうのはシンプルに楽しいです。来てもらう人もイヤフォンで聴いているのとは全然印象が違うと思うので、意外とこの曲、盛り上がるんだっていうのも含め、いろいろな発見が特にアルバムのリリース・ツアーにはあると思います。そこが一番の醍醐味というか、楽しみ方がもう1個加わるぶん、いいツアーになりそうな気がしています。

-曲の幅が広がったのでなおさら楽しみですが、つまりアルバムから全曲やるということですね?

片桐:もちろん、自分たちも試したいですしね。今後、一生やり続ける曲がその中から出るかもしれないので、早くやりたくてすでにうずうずしているんですよ。