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INTERVIEW

Japanese

そこに鳴る

2020年10月号掲載

そこに鳴る

Member:鈴木 重厚(Gt/Vo) 藤原 美咲(Ba/Vo)

Interviewer:山口 智男

-そうなんだ。それで3日に1曲ってすごいな。ところで、「white for」のような曲もありつつ、そこに鳴るらしい曲も並んでいて、その中にも新しい要素が加わっているという印象がありましたが。

鈴木:そうでしたか。僕らとしてはそんなに新しいことをやってみたっていう実感はないんですよ。「white for」ぐらいかもしれないです。ただ、「Lament Moment」は新しいというか、ここまでやっていいんかなと思いながら作っていたところはありますね。イントロからもう半分悪ふざけというか、音階も何も踏んでなくて、ずっと外している音しか鳴っていない。その中でどれだけ打数を増やせるかだけにフォーカスしていて、曲と言うよりも――

藤原:運動会(笑)。最初に貰って、イントロを聴いたとき、なんやこれと思いました。

鈴木:俺も思った(笑)。音の集合体でしかないというか、そっちに寄りすぎて、果たして音楽的にいいんだろうかって思いながら作っていたんですけど、ここでOKを出さないとおもろないなと思いました。

-リード曲なんですよね。これをリード曲に選ぶなんて攻めているなぁと思って。

鈴木:いろいろな人に聞いたら、リード曲にはこれが一番いいって言うんですよ。僕も最初は、「極限は刹那」がリード曲のつもりで作っていたから意外だったんですけど、「Lament Moment」を推す声が多かったので、そこは柔軟に、"それでいきましょう"と。

-新しいことをやってみたという意識はないとはいえ、一曲一曲作りながら、こんなことをやったら面白いだろうみたいなことは考えているわけですよね?

鈴木:それは常に考えています。もしかしたら、それが当たり前になりすぎて、これは新しいだろうみたいなことは思わなくなっているのかもしれない。そうやって考えてみると、「avoided absence」は新しいのかな。わりと普通というか、そんなごちゃごちゃしていないというか、こういうのはありそうでなかったかもしれないです。

-そして、歌詞はさらに生々しいものになっている印象がありましたが。

鈴木:ありましたか? よかったよかった。

-歌詞が生々しいと、そこにどういう感情を込めているのかがしっかり伝わりますね。

藤原:書き手の人物像が見えやすくなりましたよね。

鈴木:そうなんや。あんまりそういう自覚はないんですよ。歌詞の書き方も何か変わったかというと、全然そんなことはなくて、ただ、歌詞にかける時間は増えてきた気がします。

-それはどんな部分で? 例えば、何を書くか考えるところに時間をかけるのか、言葉選びに時間をかけるのか、どちらなのでしょうか?

鈴木:両方ですね。基本、曲ができたら歌詞はどうするかって考えるんですけど、それが定まってからコメダ珈琲店にこもって、ずっと曲を聴きつつ、考えつつみたいな。前はぽんぽんぽんと語感良く、語感良くというか、より抽象的で感覚的だったと思うんですけど、最近はより具体的というか、具体的とまではいかないにしても、歌詞に対して自分の中でOKを出すハードルは上がっているような気がします。

-ところで、"超越"というタイトルはどんなところから?

藤原:もう言葉のままですよね。

-「Lament Moment」を聴いて、こういうことなのかなと。

鈴木:そういうことです。

-今までのそこに鳴るを超越したという思いもあるんですか?

鈴木:それもあります。そうありたいです。でも、それを言い出したら毎回そうなんですけどね。

-「complicated system」を、"new system ver."という副題をつけて再録していますね。

 

鈴木:新曲の音圧とか、質感とかに合わせてミックスをちょっと変えたんです。僕ら、デスコアぐらい音圧を出しているんですけど、「complicated system」をEPとしてリリースしたとき、シングルの全曲、音圧をちょっと下げたんですよ。音圧のあるロック・バンドぐらいに。でも、それだと"っぽく"ないなと思って、今回また音圧を上げたんです。だから、それに合わせてミックスし直しました。

-さて、全9曲の中で特に気に入っている曲を挙げるとしたら?

鈴木:「Mirage」かな。最近、スタジオで合わせているんですけど、ギターがわりかし簡単なんで、やっていても楽しいっていう......。難しいとそこに集中しすぎちゃうんで、表現に余白がなくなっちゃうんですよ。でも、この曲は全体の音とか周りの音とか、自分の歌いたい感じに意識を向けられる。

-そこが楽しいと。

鈴木:曲的にも「エメラルドグリーン」(『YAMINABE』収録曲)くらいのシンプルさを結構求めて作ったんですけど、普通に日本のロック・バンドの王道に近い。それがうまくハマったという感覚があるところも気に入ってます。

藤原:私も「Mirage」と言おうと思ったんですけど、言われちゃったんで、「avoided absence」にします。

-どんなところが気に入っているんですか?

藤原:単純に一番好きな曲なんです。それと、演奏面でこれまでやってこなかったアプローチをしているんですよ。

-どんなアプローチを?

藤原:そこに鳴るの場合、基本、ギターのフレーズをベースで弾いているという感覚に近いんですけど、この曲は初めてベースらしいベースを弾きました(笑)。

-なるほど(笑)。最初に挙げようと思った「Mirage」は、どんな理由で?

藤原:やっていて楽しいからです(笑)。他の曲と比べて簡単なんです。

鈴木:一緒や(笑)。

藤原:他の曲だったら、ここでエフェクターを踏まなきゃっていうのがあるんですけど、「Mirage」はそれが少ないんです。だから、安心できる。余裕がある(笑)。ちゃんとドラムを聴きながら、弾けるんですよ。

鈴木:シンプルな曲ってこんな感じなんやろうな。