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INTERVIEW

Japanese

阿部真央

2020年01月号掲載

阿部真央

インタビュアー:石角 友香

2019年は1月に5年ぶりの日本武道館公演、初のベスト・アルバム『阿部真央ベスト』のリリース。そして、すべてタイアップのついたシングル曲「君の唄(キミノウタ)」、「答」、「どうしますか、あなたなら」と阿部真央の歌が世間に再び響いた年だったと言えるだろう。2度目のデビュー的なスタンスと、アップデートされた曲とマインドがいよいよアルバム・スケールで巷を騒がせる。10代から歌い続けてきた彼女が辛辣な言葉も、リアリティに満ちた励ましも、壊れそうな恋心もようやく肩の力を抜いて書き上げ歌う本作の、アルバムとしてのクオリティは高い。その名も"まだいけます"――11周年に突入した彼女の強度、その痛快さに触れる。


"まだいけます"ってどうとでも取れるから、何がどういけるのかは聴く人に任せようと思って


-この1年半ぐらいは、シングルの表題曲は前向きな曲が多かったので、アルバム単位で阿部真央の今を知ると非常に納得するものがあって。このアルバムを作るときはもうだいぶ肩の力が抜けてたのかな?

まさにそうですね。肩の力は抜けてました。アルバムを出すことは、2019年のベスト(『阿部真央ベスト』)を出した段階では決まってて、ベストの前後のシングルは今言ってもらったように明るい曲ばっかりだったんですよ。で、1個前についたイメージは壊したくなっちゃうから、次に出すアルバムはちょっとポップじゃないというか、カッコ良かったり、ロック調だったり、ちょっと暗いアルバムにしたいなと思ってて。この1年間、10周年イヤーですごくいっぱいライヴもしたし、ライヴをしながら自分のリミッターを外したいみたいなMCをよくしてたんです。それで、いききるライヴを目指したり、いききる表現にチャレンジしたりするなかで、自分のえげつないとこも表現として出していくことにどんどん抵抗がなくなってきて、逆に、楽しくなってきちゃって。

-あぁ、この1年間で感じたことがダイレクトに反映されていると?

そんななかで書いたりレコーディングしたりしてた曲なんで、すごく伸び伸びというか。2019年は表現をする者としてどんどん腹が決まっていった1年、もしかして前も話したかもしれないけど、腹をくくり切った1年だと思って。私はもうこういう表現をしながら生きていくって決めたからと腹をくくると、曲の中で"ここまで言っちゃっていいのかな?"っていう言葉も余裕で言えるっていうか。そうやって自分の枠を外しながら曲を書いてると、どんどん楽しくなって、レコーディングで歌うときも、いろんな表現をやれるようになったので、すごく楽しみながら制作したし、腹を決めたぶん楽だったんですよね。だから、さっき言ってもらった"肩の力を抜いた状態で取り組めた"っていうのは、まさにそうで。根底に自信が多少できたから、遊べるっていうか。これまでが自信がない10年間で、"こうしなきゃ"とか"失敗しちゃいけない"とか、すごく思ってたから。

-たしかに、ライヴのMCと態度を言語化するとこういう歌詞になっているのは納得です。

そうです(笑)。言動と書く言葉、全部モードが統一されてますよね。

-このアルバムってもちろん違うタイプの曲が収録されてますけど、"え? ここでこの曲くるんですか?"って突っかかりがなくて、スッと聴けるし筋が通ってると思ったんですよ。

ありがとうございます。

-しかも、2019年にリリースされた曲だけで成立されているし。

たしかに。今気づきました。

-シングルと並行して曲作りはずっとしてると思うんですけど、これができたから、アルバムの構成が決まったなっていう曲はありますか?

1曲目の「dark side」。これがアルバム曲でたぶん最初にできたんですけど、曲ができたときにちょうど暗めのというか、強めのアルバムにしたいっていうのは頭の片隅にあったから、"ちょうどいいじゃん!"って最初この"dark side"って言葉をアルバム・タイトルにしようと思ってたんですよ。

-そうなるとちょっと言葉が強いですけど(笑)。

ちょっと強いんだけど(笑)。"dark side"ってアルバムでいくって発表するまで思い続けてて。11月8日に"まだいけます"ってアルバム・タイトルを発表したんですけど、その2日前ぐらいまで"dark side"のままでいきたいとずっと考えてたんですよ。でも、ちょっと二の足踏んじゃって。仮に自分がリスナーで、SNS上で"阿部真央9枚目のアルバム『dark side』"って情報が流れてきたら、目で拾えないかもと思ったんです。スッて流れちゃいそうだったから、あら? "dark side"じゃだめかな? と思って"まだいけます"にしたんですよ。でも、結果1曲目になったし、このアルバムの指針みたいなものになったのはこの曲かな。

-たしかに弾き語りですし、コード・カッティングもザクザクしてるし、スタイル自体が阿部さんの核でもある。で、恋愛だけじゃない感覚もあるのかな? と。

あるよね。恋愛のことは、この曲では全然意識してなくて。どっちかというと、こういう仕事してるからこそ抱かれるイメージに対しての"やめてくれ"みたいな気持ち? まぁ、最近はそんなに変なファンの人もいないから、思ってないんですけど(笑)、イメージとの乖離みたいなのは常につきまとうものではあるから、そこに対して歌った感じはあるなぁ。

-自分の好きなもの以外は全部おとしめるような人はいますからね。

ほんとそう。自分の好きなもの以外悪とする人っているから、そういうのやだなと。

-続く2曲目の「お前が求める私なんか全部壊してやる」も、テーマ的には「dark side」と連続で、それがまた痛快で。

(笑)これ作ってるときも歌ってるときも、バンドさんとレコーディングしてるときも楽しかったです。まず、編曲がかっこいいんですよね。堀江(晶太/PENGUIN RESEARCH/Ba)さんって初めて仕事したんですけど、すごいし、才能があるんだなと思った。あと、堀江さんが提案してくれるものが、私は感覚的に好きだったので、いい出会いだったと思うし、単純にカッコいいし、カッコ良さに隙がない。

-この"全部全部全部全部全部全部"とか、言葉の詰め方に対するサウンド・プロダクションとか?

そう。ほんとに素晴らしい。私が作ったものに対して、堀江さんが楽しんでやってくれて、私がOKを出して歌うじゃないですか。アレンジされたものに乗っかって歌うと、より楽しい。だから、相乗効果ですよね。すごくいいなぁと思いました。

-聴いててクセになる曲でもあるし。

お祭りっぽいし。お囃子っぽくないですか? ギター・ソロのとことか、"どーっぱどーっぱっ"ていうリズムとかもお祭りの感じがあって、それを堀江さんも汲み取ってくれた感じだったので、ライヴで盛り上がれるんじゃないかなって気配がする。

-そして、タイトル・チューンの「まだいけます」は、トリプル・ミーニングぐらいある感じがしますね。

あぁ、さすがですね。"まだいけます"っていう言葉はいろんな取り方ができるから。で、これはあえてなんですけど、"行く"って漢字も1回しか使ってないんです。だから、何がどういけるのかは聴く人に任せようと思いつつ、ただ"まだいけるんだ"、"まだ終わらないで"、"終わらせたくない"ってこの3つの気持ちだけ主軸に置いて、あとはストーリーより、どっちかというと語感とか、そういうものが気持ちよくワンセンテンスでズバッ、ズバッてハマるイメージだったんですね。自分の中で3つの柱のミッションを行き来しつつ、サビのこの"オーオーオーオー"っていうのは、みんなに歌ってほしいところがあるから、そこを生かす曲としても楽しく作った。この曲を作ってる段階で、"リードとして先行で走らせてもらう曲にしたいなぁ"って思ったし、目立たせたかったんですよ。結果、アルバムと同じタイトルの曲として存在できたので、良かったと思うんです。

-ライヴでも言うじゃないですか。"まだいけますか?"って。

あ、言う! ぴったり。それ使っていいですか(笑)?

-だって、普段のライヴでも言ってますからね(笑)。そして、だんだん夜のムードに向かっていって。「pharmacy」がすごくいいです。1行目の"手を抜けない毎日が 心地よくて苦しい"からぶっ刺さりますね。これは男の子の一人称?

そうですそうです。

-こういう人いっぱいいると思うし。

そうなんですよ。この「pharmacy」って曲は、1曲前に入ってる「どうしますか、あなたなら」の書き下ろしをしたときに提出した、もう1曲のほうなんです。なので、ドラマ"これは経費で落ちません!"をもとに書いたんですね。この"手を抜けない毎日が 心地よくて苦しい"っていうのは、決まりきったルーティーンに対して安心しているけど、窮屈さも感じている。それってすべての働く人に必ず少しはある部分だと思うんです。そこを褒めてもらえるのは嬉しいですね。