Japanese
阿部真央
Skream! マガジン 2019年10月号掲載
2019.08.31 @日比谷野外大音楽堂
Writer 石角 友香
7月の大阪に続き、夏の野音ライヴを東京でも開催した阿部真央。様々な演出を凝らし、且つある種の執念を感じさせた1月の日本武道館公演("阿部真央らいぶNo.8 ~10th Anniversary Special~")と比較すると、ひとりフェス的なお祭り感のあるライヴだったが、セットリストには彼女の喜怒哀楽、そしてその間の感情や思いが刻まれた多彩な楽曲が組み込まれていた。30代を前にして、セルフ・コントロールもできる大人の女性として安定感や頼り甲斐すら感じる今の彼女だが、実は今回の野音のセットリストは、阿部真央というアーティストがいかに多様で赤裸々な作品を世の中に送り出してきたか? そして今の彼女が歌うとどう聴こえるのか? が結果的に証明されたと思う。
満員御礼の野音は立ち見エリアもぎっしりの大盛況。懸念された雨も降らず、テンションの上がるオーディエンスの歓声に迎えられて放った第一撃は、強烈な「逝きそうなヒーローと糠に釘男」。突き抜ける高音が東京の空に向かって飛んでいく。立て続けに"バンドのヴォーカル"的に髪を振り乱して「モットー。」、「ふりぃ」と8ビート・ナンバーを連投。今のバンド・アレンジに更新された演奏はグッと包容力を増した印象だ。
"夏のひとりフェス"に終始しなかったのは、続くブロックのヘヴィネスのせいだったと思う。低いAメロ、ドラマ性とゴスなイメージが分厚い音像で鳴らされた「痛み」では、彼女が好きだというSIAのような赤裸々さや、MUSEばりのスケールに震撼した。そして、チューニング中の静けさに息を飲む会場と、静寂をいっそう際立たせる虫の音。緊張感が自ずと共有されるなかでの、「じゃあ、何故」の静寂を切り裂くような"あぁ baby どうして"の歌い出し。男性目線のこの曲に感じる青春の蹉跌。さらに、ここで連続性のある、女性目線の「この愛は救われない」を披露してみせるという、その対照は見事だった。どちらも切ない内容ではあるけれど、最近の作品である「この愛は救われない」の底にある諦観のようなものは、青春時代のそれとは違って響く。それは彼女の歌の表現が"どうしようもない現実"について、繊細だが、過剰な演出を持ち込んでいないからだろう。音源より優しく響いたことも、この歌が怨念や怨嗟ではなく、"生きるうえで出会うかもしれないひとつの出来事"というニュアンスを強めていた。
ギター・ロックの名曲「深夜高速」、女性から圧倒的支持を獲得し続けている「貴方の恋人になりたいのです」のさりげないフォーク・ロック・アレンジ、アーバンなファンク・サウンドに乗せてハンドマイクで歌う「傘」、バンド・サウンドで再構築したダンス・チューン「immorality」のクールさと、阿部真央の音楽性のカラフルさもごく自然に楽しませてくれる。ストロボライトの中で、「immorality」のサビを"歌ってー!"とオーディエンスにマイクを向ける彼女と、シンガロングやステップで応えるファンの双方がどんどんタフになっていった。痛いほどリアルな感情を歌う彼女も、音楽的なウィングを広げる彼女も、2019年の今はひとつのステージにフラットに存在している。その自由度の高さ、何より本人が楽しんでいる姿が印象的で、前半の11曲は30分ぐらいの体感だった。
8年ぶりの日比谷野音のステージに立てたことに感謝しつつ、ニュー・シングル表題曲「どうしますか、あなたなら」が、ドラマ"これは経費で落ちません!"主題歌として多く聴かれていることにも喜びを表明。自分の歌にはサビ前、サビ中、サビ終わりにシンガロングできるレパートリーが多いということを話し、ライヴ直前に"この新曲もサビ前に「違うかも」という絶好のフレーズがある"とツイートしたことについて、"勘のいい方は、練習してきてねって意味だと気づいていらっしゃるかしれません"と楽しげだ。かくして、自問自答と軽快なポジティヴィティで新曲の浸透具合を確認したあとは、去年から今年にかけて発表したレパートリーが勢い良く続く。そんな中でもリフで推していくハードな「答」は、いいフックになってバンド・メンバーのテンションもグイグイ上昇していく。さらにその総量を牽引していく阿部真央の天井知らずの歌唱力が痛快だ。
MCでは何度も"今日はテンションがおかしい"と愉快そう。テレビで放送していた映画"天空の城ラピュタ"の録画を今朝観たと話し、登場人物 シータの真似や"今の若者はバルス離れらしいですけど、どんな"離れ"だ(笑)"と特にオチのない話に笑いが止まらない。そんなフラットさが、ある種再び活動のギアが入ったきっかけのナンバー「なんにもない今から」を、まさに歌詞通り肩肘張らないスタンスで響かせる。そしてこの曲から連なり、今の彼女のモードを象徴している「変わりたい唄」が、ストレートなアメリカン・ハード・ロックのように、この空間とここにいるファンの気持ちをドライヴさせていく。アンサンブルがダン! と鳴り終わったとき、湿気と熱気で充満する会場に一陣の風が吹いた。偶然かもしれないが、気持ちも体感も一気に爽快になったのは間違いない。
そして、本編ラストは「ロンリー」だ。何度も"跳んでー!"と叫ぶ彼女と、それに応えてサビでジャンプするファン。屈指の素直さと泣きたくなるような切なさと。いつでもこの優しい本音に戻ってきたらいい――恋じゃないけど、お互いに必要とし合う人間同士の感情が渦を巻いていた。
アンコールのMCで本人もいつもなら細部に気を使いながら、2時間半なら2時間半、しっかりライヴをやったという感覚になるけれど、今日は本当にあっという間だったと話す。力強いナンバー「まだ僕は生きてる」ですら愉快に届いたのは、今生きていることそのものへの感謝だったんじゃないだろうか。ただし、愉快なだけじゃ終わらないのが阿部真央である。"私が死んだらもう聴けない曲が1曲ぐらいあってもいいんじゃないかと思って、ライヴでだけ歌ってる曲を"と、Wアンコールでの渾身の弾き語りによる「母の唄」で、歌うことの意義を刻み込んで今年の夏を締めくくり、現在地を刻んだのだった。
- 1
LIVE INFO
- 2025.07.04
-
Nothing's Carved In Stone
MAN WITH A MISSION
斉藤和義
ExWHYZ
GRAPEVINE
SAKANAMON
LOCAL CONNECT
the shes gone
ビレッジマンズストア
蒼山幸子
kobore × プッシュプルポット × Brown Basket
女王蜂
ザ・シスターズハイ
のうじょうりえ
DOLL PARTS
カナタタケヒロ(LEGO BIG MORL)
GANG PARADE
佐々木亮介(a flood of circle)
大原櫻子
緑黄色社会
ポルカドットスティングレイ
リーガルリリー
浅井健一
サカナクション
Mom
- 2025.07.05
-
Nothing's Carved In Stone
SAKANAMON
鶴
THE ORAL CIGARETTES / ヤングスキニー / 水曜日のカンパネラ ほか
reGretGirl
GLIM SPANKY
チリヌルヲワカ
キュウソネコカミ
ART-SCHOOL
コレサワ
[Alexandros]
フラワーカンパニーズ
shallm
go!go!vanillas
アーバンギャルド
ExWHYZ
FINLANDS
"見放題大阪2025"
GRAPEVINE
片平里菜
HY
SCOOBIE DO
the shes gone
怒髪天
荒谷翔大
the dadadadys
envy
サイダーガール
緑黄色社会
め組
Helsinki Lambda Club
androp
WtB
ASP
Conton Candy
The Slumbers
有村竜太朗
- 2025.07.06
-
PEDRO
Creepy Nuts
UVERworld
鶴
ビッケブランカ
sumika / Novelbright / Omoinotake ほか
荒谷翔大
reGretGirl
[Alexandros]
竹内アンナ
go!go!vanillas
ネクライトーキー
FIVE NEW OLD
DYGL × Newspeak × ANORAK!
片平里菜
PK shampoo
GLIM SPANKY
"見放題名古屋2025"
女王蜂
SCOOBIE DO
怒髪天
チリヌルヲワカ
ART-SCHOOL
Bimi
jizue
クレナズム
halca
HY
SIX LOUNGE
ドレスコーズ
LEGO BIG MORL
有村竜太朗
フラワーカンパニーズ
- 2025.07.07
-
ビレッジマンズストア
ナナヲアカリ
NakamuraEmi
浅井健一
- 2025.07.08
-
TENDOUJI
Hump Back
go!go!vanillas
ビレッジマンズストア
the dadadadys
kobore × プッシュプルポット × Brown Basket
銀杏BOYZ
- 2025.07.09
-
SHE'S
いきものがかり
Maki
山内総一郎(フジファブリック)
- 2025.07.10
-
TENDOUJI
Saucy Dog
礼賛
いきものがかり
浅井健一
ヤングスキニー
キュウソネコカミ
BBHF
the dadadadys
Hello Hello
GRAPEVINE
ザ・シスターズハイ
Organic Call
downy
四星球
- 2025.07.11
-
TenTwenty
女王蜂
TENDOUJI
なきごと
the shes gone
フレンズ
Saucy Dog
Laughing Hick
浅井健一
WtB
yutori
ビレッジマンズストア
古墳シスターズ
東京スカパラダイスオーケストラ
ヤングスキニー
キュウソネコカミ
のうじょうりえ
賽
ヤバイTシャツ屋さん × Perfume
wacci
KALMA
LITE / DO MAKE SAY THINK / HOTEL NEW TOKYO
GLIM SPANKY
Mirror,Mirror
reGretGirl
四星球
Rei
- 2025.07.12
-
大原櫻子
星野源
藤沢アユミ
FIVE NEW OLD
ASP
コレサワ
あれくん
ART-SCHOOL
SAKANAMON
女王蜂
LOCAL CONNECT
BLUE ENCOUNT
竹内アンナ
いゔどっと
PK shampoo
荒谷翔大
ACIDMAN
ズーカラデル
夜の本気ダンス × BRADIO × 8otto
チリヌルヲワカ
Homecomings
ブランデー戦記
[Alexandros]
鶴
SVEN(fox capture plan)
YUTORI-SEDAI
ビレッジマンズストア
GRAPEVINE
Nothing's Carved In Stone
ADAM at
WtB
Eve
有村竜太朗
Bimi
MAPA
安藤裕子
蒼山幸子
古墳シスターズ
斉藤和義
原因は自分にある。
怒髪天
渡會将士
マオ(シド)
- 2025.07.13
-
星野源
あれくん
SVEN(fox capture plan)
CYNHN × タイトル未定 × fishbowl
TenTwenty
板歯目
SAKANAMON
LOCAL CONNECT
FIVE NEW OLD
ASP
YOASOBI
BLUE ENCOUNT
コレサワ
鶴
"HELLO INDIE 2025"
なきごと
ズーカラデル
UNCHAIN
ART-SCHOOL
有村竜太朗
アルコサイト
[Alexandros]
寺口宣明(Ivy to Fraudulent Game)
チリヌルヲワカ
GRAPEVINE
Nothing's Carved In Stone
Homecomings
ADAM at
ブランデー戦記
Eve
神はサイコロを振らない
荒谷翔大
カミナリグモ
FUNNY THINK
ぜんぶ君のせいだ。
VOI SQUARE CAT
安藤裕子
古墳シスターズ
東京スカパラダイスオーケストラ
reGretGirl
斉藤和義
原因は自分にある。
トラケミスト
- 2025.07.14
-
Mirror,Mirror
- 2025.07.15
-
有村竜太朗
板歯目
BLUE ENCOUNT
桃色ドロシー
[Alexandros]
Mirror,Mirror
TENDOUJI × 浪漫革命
SCOOBIE DO
キミノオルフェ
羊文学
Saucy Dog
Ivy to Fraudulent Game
- 2025.07.16
-
有村竜太朗
YOASOBI
BLUE ENCOUNT
桃色ドロシー
GLIM SPANKY
BIGMAMA × Dannie May
坂本慎太郎
Base Ball Bear × PEDRO
SHE'S × ヨイズ
TenTwenty
Saucy Dog
- 2025.07.18
-
斉藤和義
YOASOBI
フレンズ
[Alexandros]
SVEN(fox capture plan)
板歯目
東京スカパラダイスオーケストラ
ExWHYZ
GLIM SPANKY
the paddles
キュウソネコカミ
NEK! × komsume
KiSS KiSS
Organic Call
ぜんぶ君のせいだ。
SAKANAMON
ヤングスキニー
ACIDMAN
Laughing Hick
TENDOUJI
cinema staff × eastern youth
- 2025.07.19
-
豆柴の大群
浅井健一
フレンズ
"NUMBER SHOT2025"
コレサワ
YOASOBI
PIGGS
鶴
東京スカパラダイスオーケストラ
"KESEN ROCK FESTIVAL'25"
ASP
Novelbright
"JOIN ALIVE 2025"
shallm
Eve
"OSAKA GIGANTIC MUSIC FESTIVAL 2025"
キノコホテル
UNCHAIN
竹内アンナ
め組
"焼來肉ロックフェス2025"
SPECIAL OTHERS
ExWHYZ
LOCAL CONNECT
寺口宣明(Ivy to Fraudulent Game)
ぜんぶ君のせいだ。
いきものがかり
新しい学校のリーダーズ
"DAIENKAI 2025"
チリヌルヲワカ
片平里菜
PENGUIN RESEARCH
荒谷翔大
Nothing's Carved In Stone
マオ(シド)
RELEASE INFO
- 2025.07.04
- 2025.07.05
- 2025.07.06
- 2025.07.07
- 2025.07.08
- 2025.07.09
- 2025.07.10
- 2025.07.11
- 2025.07.13
- 2025.07.15
- 2025.07.16
- 2025.07.18
- 2025.07.19
- 2025.07.20
- 2025.07.23
- 2025.07.25
FREE MAGAZINE
-
Cover Artists
音ノ乃のの
Skream! 2025年06月号