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INTERVIEW

Japanese

阿部真央

2018年11月号掲載

阿部真央

Interviewer:石角 友香

ヘヴィ且つ神聖な女性性が印象に残った『Babe.』、ジャズやAOR、岡崎体育のアレンジによる楽曲でエレクトロニック・サウンドにもアプローチした『YOU』。これらの近作とはまったくニュアンスの違うシングル『変わりたい唄』を来年のデビュー10周年を前にドロップする阿部真央。"もっと自分になりたい"――デビュー時の彼女の軸もそうだった。だが、10代の焦燥や闇雲な自信とはまた違う、キャリアを重ねたうえでの"変わりたい"は、より胸に迫るものがある。社会そのものもパラダイム・シフトがあらゆる場面で起こるなか、誰もが潜在的に抱える今の自分自身への問い掛け。多くの人に届いてほしいこの新作に至る道程を訊いた。

-前作『YOU』(2018年3月リリースの8thアルバム)は音楽的に多彩なアルバムで、ジャズやAOR、岡崎体育さんのアレンジによる楽曲「immorality(Arranged by 岡崎体育)」もあり。あのアルバムは振り返ってどんな存在になりましたか?

"原点回帰した"みたいなことはいろんなインタビューで言ってたんですね。それはモチベーション的なところで。でも今回の作品の方がより原点回帰感は強くて、前作は原点回帰って言ったものの通過点だったかなと今はすごく思ってますね。

-阿部さんにとって、過ぎていくものはすぐ過去になってしまうのかなと思うんですけど。

バレちゃってます? そうなんですよね。あんまり興味がなくなっちゃうというか。なんならデモ音源、プリプロがピークみたいな(笑)。楽曲に関してはですけどね。ライヴでお客さんが盛り上がってくれると、楽曲の位置づけは変わってくるんですけど、アルバムとかシングル単体で考えると、もう次のことを考えたいなって気持ちになってることが多いですね。

-さらに原点回帰したという今作ですが、自然に「変わりたい唄」を今度のシングルの表題曲にしたいと思いましたか?

いや、最初はカップリングに入っているTrack.3の「なんにもない今から」って曲をリードにしたかったんですけど、"ちょっと弱いかも。この曲だとシングルっぽくない"ってディレクターに言われて、"くそー"と思って「変わりたい唄」を書いたんですね。で、私の中では『YOU』を作った時期はもちろん曲を作ってたんだけど、去年の夏ぐらいから今年の夏まで1年間ぐらいが、スランプとも違う、"これでいいんだろうか? 身の振り方、どうしようか?"って考えてる時期で。"本当に自分が書きたいことってこういうことなのかな?"というところから、"これでいいんだ"って揺り戻しがあったりとか、結構悩んだ時期だったんですね。それが今年の夏まで続くんですけど、今回のシングルに向けていろんな曲を作らなくちゃいけなくなったなかで、"ほんとに自分がなりたいものとか、やりたいことってなんだったっけかな?"ってことを、振り返って。その中で素直に悩んで悩んで悩み抜いた末、なんか謎の感動を私に引き起こすような「なんにもない今から」が生まれて、前がパーって開けたというか、"やっと私の直感が戻ってきてくれた"みたいな感覚が強くって、もうこれを手放すまいというか、この直感を守り抜くぞみたいな。

-なるほど。

そのためには、矛盾してるようですけど、守り切るために振り切れないといけないなとすごく思って。10代の自分がそうだったように。10代のときは怖いもの知らずでできたことが、今は失敗したくないとか恥かきたくないとか、そういうものが先行して、それを塞いじゃってる気がしてたんですけど、それを取っ払う強さを持たなくちゃということを「なんにもない今から」を書いて感じまして。そこから「変わりたい唄」という曲も出てきたんです。まさに大人になったが故の蓋とか、硬くなってしまった入り口を突破するんだみたいな。そういうふうにして私は変わりたいって10年前も歌ってたじゃないかって曲ができたときに、"あぁ、10年前と同じようなことを歌っているんだ、結局"って。でもそこにはやっぱり10年間の重みがあって、いつまでも変わりたいと思っているからっていう自問的なストーリーも見えた。だから、今私が一番歌えることだし、歌いたいことである"変わりたい"という気持ちをそのままリードにしようって、この曲を選んだんです。

-自由に表現をしてるように見える阿部さんにもそういうことはあったと。

ありましたね。やっと最近ほんとになくなってきました。それの象徴的なものがあのジャケ写だと思うんですよね。面白いことが大好きだし、ユーモアある人になりたいし、どっちかっていうとそういうのをライヴでも観てもらえてる方なんですけど、逆に言うとライヴに来てる人しかそれを知らないっていうか。MCとか結構ふざけて言ったりするんですけど、そういうのをもっと表立ってやるっていうのもひとつの突破口だったと思うし。あのポーズを決めるとか、ちょっとシュールな感じを提案してくれたのはデザイナーの人なんですけど。だからこの曲を聴いて、いろんな人がそういう方向に導いてくれてる感じはしますね。