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INTERVIEW

Japanese

阿部真央

2019年09月号掲載

阿部真央

インタビュアー:石角 友香

変わりたい自分を肯定するモードは、昨年10月リリースの楽曲「変わりたい唄」以降続いているという彼女。7月26日からスタートしたNHKドラマ10"これは経費で落ちません!"主題歌でもある「どうしますか、あなたなら」は、ドラマのテーマに沿った形で日々のルーティーンを壊した先に踏み出す勇気について、さりげなく、しかしリアルに表現している。新曲を作り、ライヴを重ねることで自然と変化した自分に気づくことが多いという1年。8月末には大阪に続いて東京の野音公演も開催。そして彼女の本領発揮の弾き語りツアーも9月下旬からスタートするタイミングで、現状報告的な肉声を届けたい。

-「どうしますか、あなたなら」は、「君の唄(キミノウタ)」(2019年5月リリースの17thシングル『君の唄(キミノウタ)/答』収録曲/※映画"チア男子!!"主題歌)に続いての主題歌ですね。お題ありきの曲作りは得意とおっしゃってましたけど、今回はいかがでしたか。

得意っていうとおこがましいかもですけど、好きですね。やっぱ、お題を貰えたほうが燃えるというか。今のお話にもちょっと通ずるんですけど、やっぱり物語にある程度寄り添っていたいというのが一番あって。ストーリーにも寄り添いたいっていうミッションと、あとはタイアップしている作品が放送されたり、公開されたりしている以外の時期になったときに、私の曲は単体として残るじゃないですか。そうなったときにちゃんとファンの人とか、今後、阿部真央の歌に入ってきてくれる人にちゃんと届くものにしたいっていうのもあるんで、毎回大きなミッションがふたつあるんですよ。それをどうこなすかっていうことに、すごく燃えますよね。

-今回、女性が主人公のドラマですけど阿部さんが意識したことって?

先方の要望として、まさに主人公が私と同じぐらいの世代なので、アラサーの女子のみなさんに刺さるような歌詞とか、そういうのがいいって言われてたんですね。あと、恋愛要素も物語の中には若干あるんですけど、緩やかなヒューマン・ドラマみたいな印象の作品なので、歌詞の中に恋愛要素はあってもいいんだけど、どっちかというと人生観とか、そういうほうを歌ってもらいたいという要望もあったので、"わかりました"と。だからそこを全うできるように意識しましたね。

-何かリサーチはしましたか?

めっちゃしました(笑)。原作が小説なので、小説第5巻ぐらい出てるのかな? もうたぶん、5巻×10回ぐらい読んで、あと、漫画も出てるので漫画も読んで。で、その作者の方のインタビューもレビューも読みました(笑)。

-読者の人がどう感じてるかも掬い上げて?

はい。例えば青木(祐子)先生の"これは経費で落ちません!"って小説の物語――そのときまだドラマの脚本とかちゃんとない状態だったんで、原作からしか拾うことしかできないなって感じで一生懸命読んでたんですけど、すごくストーリーの進み方がたおやかなんです。緩急がすごくあるとかじゃなくって、人によってハイライトをどこにでも持ってこれるというか。いわゆるアメリカ的な物語の作り方、そういうダイナミックなものだったら、要約みたいなことでそこに寄り添っていけばいいけど、山をどこに作るかがたぶん人によって全然違うなと思ったので、今回は私も何回も読んだし、あらゆる人の意見が必要だったんです。プラス、青木先生はこの作品を通じて何を描きたかったのか? っていうのにすごく興味があったので、そこをリサーチしましたね。

-このタイトルが倒置法で、ちょっとぎくってなるというか(笑)。

そうですか(笑)? ドラマ・バージョンだとサビの"どうしますか、あなたなら"を"どうしますか、森若さん"って歌ってるんですよ。主人公の名前が森若さんで。これには理由があって、小説の中の第1話、2話、3話ぐらいまで、主人公が結構しっかりしてるキャラクターなんで、あらゆる場面で"どうしますか、森若さん"ってフレーズが出てくるんですよ。それは"どうしますか、森若さん"ってセリフで言う人もいれば、目で訴えてるような描写もあって、第3話ぐらいまではたぶん青木先生はこれを推したかったんだろうなと思ったし、私もすごくいいなと感じたので、"どうしますか、森若さん"って使っちゃおうかなと考えて、サビから書き始めたんです。ただCDもそのままにすると後々わかんなくなっちゃうし、ちょっと媚びすぎかなと思って、じゃあCDバージョンは"あなたなら"にしようって。ドラマ・バージョンとふたつ歌詞を書きました。

-3話ぐらいまで、主人公はしっかり者で誠実でって物語なんですね。

そうですね。裁判官みたいな感じで、常に忠実なジャッジメントを、情とかでなくて、事実を見て冷静に判断して、規律を守ってやってるってキャラなんで、それを描きたかったのかな? と私は思ったんです。でも、その"どうしますか、森若さん"ていうのも、頼るメッセージじゃなくて、"森若さん、ほんとどうしたいの?"みたいなほうに使っても楽しいかな? と思って入れたんですけどね。

-これは経理部のワーキング・ウーマンの話ですけど、阿部さんも日々何かを決めなきゃいけないことはあるんじゃないですか?

うーん、このライン上にあるかというよりは、ジャッジをしてるほうだと思うんで。てか、自分で決めちゃう? "これもう歌詞、2パターンで行こうって決めちゃえ"っていうふうに、幸運なことにデビューしたときからずっとできたんで。私って、誰の言うことも聞かないじゃない(笑)?

-そうですか(笑)?

いや、あまり聞かないんですよ、自分が納得したことしかできないから。それって、こういう会社に勤めてる方とはちょっと違うけど、ジャッジをするっていう責任感みたいなものはありますよね。普段からジャッジはね、自分のプロジェクトだからよくやってる。舵切りみたいな。

-これは一般的なワーキング・ウーマンの話ですけど、阿部さんとしては何に一番注力して歌詞に落とし込みたいと思いました?

ワーキング・ウーマンみんなにハマるかわからないんですけど、森若さんて人が私の生活はこれで完璧だって言うんですよ、最初から。完璧だって、彼氏もいないで、ルーティーンの中で生きているけど、言い聞かせてるような描写も小説にはあったんですね。ほんとはこれでいいのかな? と思うっていうか。それってもうすぐ20代も終わろうとしてるとか、年齢的なものもあるんだろうし。そこにシンパシーを感じちゃったんですよね。私もどっちかというと応用とか融通が利かないタイプというか。"自分はこういう人"とか、"自分とはこうあるべき"みたいなのをわりと決めがちなんですよ。そのルーティーンを長年続けてると、そこにいるほうが楽だったりするんですね。で、楽で全然いいと思ってやってきたけど、この森若さんで言うと、ある男の子が現れて、最初は仕事上の関係から、私情が生まれて好きになるとかしてくのかな? それで、ルーティーンを壊され始めるんですよ。自分のルーティーンが壊されてすごく嫌なんだけど、壊された先に行ってみたいなと思う自分に気づくんですね。それってすごく人としてナチュラルっていうか、主人公の彼女は私なんかよりもっと完璧主義者だろうから、苦しいし、あたふたすると思うんだけど、そこにすごく愛しさを感じるというか。

-あぁ、なるほど。

なので、"これは経費で落ちません!"のファンの人も、今後ドラマを観ていく方も、そういう森若さんにキュートさとか、魅力を感じると思うんです。私はそこがすごく好きだったし、物語自体、最終的にはそこにフォーカスしてるんだなって私は感じたんで。彼女が成長する、サクセス・ストーリーじゃないんだけど、ひとつ変わってみようとする、そのリアルさ、そこが焦点だなって思ったから、"完璧な自分を諦める勇気を"っていう歌詞を書いてますけど、これは私自身にも歌ってあげたい言葉なんです。"ダメだなぁ私"って思いながら、でもそんな自分も愛せるようになったら、もう少し楽になれたり、新しい自分に会えたりとか、もっといいとこに行けるんじゃないかな? って自分も思ってる時期だったので、それを森若さんに歌いたいし、自分にも歌ってあげたかったし、同じように悩むファンの人にも聴いてほしかったから、そこはキャラクターを通してすごく掘り下げたいと思ったポイントですかね。