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INTERVIEW

Japanese

WOMCADOLE

2019年12月号掲載

WOMCADOLE

Member:樋口 侑希(Vo/Gt) 古澤 徳之(Gt/Cho) 黒野 滉大(Ba) 安田 吉希(Dr)

Interviewer:沖 さやこ

滋賀のスーパー・ロック・バンド、WOMCADOLEがついにメジャー・デビュー。2ndフル・アルバム『黎明プルメリア』は、1stフル・アルバム『今宵零時、その方角へ』で見せた各々の個性と楽曲の振れ幅を生かし、バンドとしての特性だけでなく、より"人間"というものが色濃く滲んだ、4人の化身とも言うべき作品へと仕上がった。これだけの作品を作ってしまってはこの先大変になるのでは? と思いきや、メンバーはまだまだ音楽への意欲が止まらない様子。その底知れない深みに、溺れてみるのも一興だ。

-樋口さん、上着はあったかそうなセーターなのに、足元ビーサンですか。この取材は10月末なのに。

樋口:感覚なくなってもうてるんすよ。いつもステージで裸足やから。

-くれぐれもお足元には気をつけていただきたいところですが、メジャー・デビュー・アルバム、とてもいい作品ができましたね。

樋口:常に前作を超えたいという気持ちがあるんですけど、今回もヤバいものができたと思っております。歌詞も音も、心なきものには血が流れない。楽曲の血管を強くしたいし、曲にはより栄養を与えたいと思っていて。今回も、できたときにすっきりしたんですよ。シンプルに"出せた!"って感覚があった。それがいい方向に行ってるんじゃないかなと思ってます。

-そうですね。新しいサウンド・アプローチが多々あることは理解しつつ、真っ先に思ったのは"そうそう、WOMCADOLEってこんなバンドじゃん"ということで。表現方法がさらに広がったことで、バンドのマインドをより深いところまで掘れたのではないかと。

安田:『今宵零時、その方角へ』(2018年3月リリースの1stフル・アルバム)を作ったことで各々のパラメーターを増やすことができたので、今作『黎明プルメリア』ではそれを生かせたと思います。サウンド面でもアレンジ面でもいろんなことをやったけど、『今宵零時、その方角へ』を踏まえたうえでのアップグレードをしたうえで、各々の個性を出せた作品になった気がしていますね。

樋口:『ライター』(2018年11月リリースの2ndシングル)を出した頃くらいから曲を書き溜めてて。今回は制作期間が長かったので、何曲かライヴでやって、どの曲もプリプロを2回やってから本チャンのレコーディングをしたんです。だから、曲に集中できた感はありますね。勢いはあるけれど、いい意味で頭も使えたし。今回の制作で、今までしたことがないことをめっちゃ体験できました。WOMCADOLEって人間くさいところがかっこいいし......人間を出せないとおもんないなと思ってて。「FLAG」に"不十分だった僕に十分な痛みが/教えてくれたんだ、己の鳴らし方を"、"叫び方を"という歌詞があるんですけど。

-WOMCADOLEの濃い部分が、その歌詞に詰まってますよね。

樋口:そうなんですよ。メジャーに行くなら、よりWOMCADOLEを出さなきゃいけないと思って作った曲なんです。シンプルに、魂の産声を上げたかった。「FLAG」はそれがやりたかった曲でもあるし、できた曲でもありますね。"慢心せんと、もう1回始めよう"というつもりで書きました。

-「FLAG」然り、『黎明プルメリア』の楽曲は"不安"という気持ちにフォーカスした曲が多いと思って。でも、これまでの不安を消そうともがいたり、不安を希望で染めてしまったりするエネルギーというよりは、不安と添い遂げるくらいの覚悟を感じたんです。

樋口:いつも"不安を鳴らしてる"みたいな感覚はありますね。俺の心構え的に、取り繕ったりするのが苦手で。生まれた瞬間の熱々なものを歌にしたい。今回も沸騰して出てきた蒸気をガッと集めた曲ばっかなんで、いいなぁと思ってます。......でも、いつも不安ですね。不安な気持ちで、いっぱい曲書けます(笑)。

-(笑)「R-18」や「深海ゲシュタルト」のようなダークだけど攻めた曲は、その不安な気持ちを否定せず、逆手に取ってこそできることでしょうし。

樋口:「69」(2017年リリースの1stシングル『アオキハルヘ』収録曲)以降、WOMCADOLEでないとできない泥臭いリフものを得意にしていきたくて、作り溜めてたのが「R-18」や「深海ゲシュタルト」です。遊びたいという欲でリフものを作ってました。あと、「カナリア」は"鳥かごの中にいるのは嫌だ"って気持ちを書いた曲で。ただ餌を運ばれて、ただ技を仕込まれて、されるがままで、自由を奪われるのは嫌だ。羽ばたきたいなー......みたいな曲が書けたなって。

-「カナリア」に書かれていることは、去年樋口さんが話していた苦悩の時期に抱いた気持ちとほぼ同じなので、その苦悩の渦中で生まれた曲だと思っていたけれど、違うんですか?

樋口:沖さんのインタビューでその話をしたときに"この気持ちを曲にしたい"と思ったんですよ。「カナリア」はもがくだけではなく、羽ばたきたいという気持ちまで書けたから、俺もちょっと変わったのかなって。『ライター』のツアー("己の炎を絶やすなツアー")終わりに、ほんのちょっとだけ気持ちに余裕が出てきたんです。

-あのツアー前あたり、2018年の秋は樋口さんがもやもやしてるように見えて。

樋口:そうっすね(笑)。ちょっと張りつめていたけど、あのツアーを回ったことで息が抜けたというか。"このラフな気持ちのまま、今までで感じた気持ちを書いてみよう"と思って書いてみたら、スラスラスラーっとどんどん曲ができていって、「カナリア」もその中の1曲です。でも「FLAG」と「黎」は、ある程度沈んでる樋口が書けた感じがします。

-そうですね。樋口さん、傷つきやすくて、くよくよしちゃうタイプだと思いますし。

樋口:ちくしょう(笑)! この性格は一生治らないですね......。どうしたらいいですか?

安田:なんの相談やねん(笑)。

-そのおかげでいい曲がたくさん生まれているので、不安という気持ちを受け入れたように、そんなご自分も受け入れてみてはいかがでしょうか(笑)。

樋口:なるほど(笑)。いいっすね、それでまた面白い曲書けるかもしれない。音楽やりたなってきました!