Japanese
WOMCADOLE
Skream! マガジン 2021年05月号掲載
2021.04.08 @USEN STUDIO COAST
Writer 秦 理絵 Photo by ハライタチ
WOMCADOLEには、真っ赤なライティングがよく似合う。赤は、闘志の色、血の色、燃え上がる命の色だ。今年1月20日にリリースした最新アルバム『共鳴howRING』を引っ提げた東名阪ツアー"Novel Wonderland tour"のファイナル公演。バンド念願の地であるUSEN STUDIO COASTでも、彼らはそのステージを何度も赤く染めていた。"ロックは心で感じるもの"。樋口侑希(Vo/Gt)がMCで何度も繰り返した想いだ。そうやって心の深いところへと届けた歌は、私たちが明日からの日々を戦い抜くための勇気を奮い立たせてくれる、優しい闘志がみなぎっていた。
『共鳴howRING』でもオープニングSEとして収録されている「0」の救難信号が不穏に流れ出し、「応答セヨ」からライヴが始まった。ドラム台で立ち上がり、金髪を激しく振り乱して、スティックを叩きつける安田吉希(Dr/Cho)。一打一打に渾身の力を込めた重々しいバンド・サウンドがコースト(USEN STUDIO COAST)を震撼していく。"コーストにやってきたぜ! We are WOMCADOLE"。樋口の堂々たる名乗りに会場から一斉に拳が上がった。間髪入れず突入した「綴リ」では、マツムラユウスケ(Gt/Cho)が床を転げまわる。激しく交錯する照明の光、空間を切り裂くギターの歪み。序盤はステージの気迫に気押されたように呆然と立ち尽くしていたフロアだったが、4曲目「レイテンシー」あたりから、思い思いに身体を動かす自由な空間ができあがっていった。この日のフロアはオール・スタンディング。だが感染症対策のため、その立ち位置はソーシャル・ディスタンスが確保されたマス目で区切られている。歓声も禁止だ。新しいライヴハウスのルール内でライヴに臨むお客さんに、樋口は"感情だけ、心だけ、前に突っ込んでくれたらいい"と訴えた。
さらに、ライヴハウスを"ひとつの船"にたとえた樋口は、ノアの箱舟をテーマにした「Noah's」に入る前に、"ひとり1本のオールを持たされて、全員で漕がなきゃ意味がない。操舵手はいないぜ。てっぺんを目指そう!"と熱く叫んだ。高速で駆け抜ける推進力に満ちたナンバーで決めるスリリングなソロ回し。樋口が上着を脱ぎ捨てた「DANGER」では、黒野滉大(Ba)が低く腰を落とし、荒ぶる低音でビリビリと空気を震わせた。心に渦巻く葛藤や感情の軋みをハウリングと呼び、それを抱えた個々人同士が共鳴し合う世界の在り方を描いたノベル・コンセプトアルバム『共鳴howRING』。序盤は、その狂気的で荒々しい曲を中心にライヴは進んだ。
激しく明滅する光を浴びて、樋口がステージ端から思いっきりスライディングした「人間なんです」、"今歌いたい歌がある"という言葉から、昨年加入した新ギタリスト マツムラの存在を強く印象づけた「ヒカリナキセカイ」のあと、ライヴの空気感が変わった。コロナ禍に喘いだ春の寒さ。その凍てつく感情を滔々と綴ったロック・バラード「kate」、オレンジ色の光に包まれて、京都鴨川で黄昏に浸るミディアム・テンポ「kamo river」へと、しっとりとした曲が続く。マツムラがステージに座ってギターを弾き、ムーディなセッションから繋いだ「doubt」へ。R&Bテイストの曲でありながら、樋口がフライングVを頭の後ろにまわす派手なギター・プレイは、決して普通の枠に収まることないWOMCADOLEのユニークな違和感を目撃する瞬間だった。
コーストは、樋口にとって憧れのハコだったという。"地元のライヴハウス、彦根COCOZAっていうところなんだけど、そこの最高のロック親父が「ウォンカをコーストで観てぇ」って。高校生の俺に夢を与えてくれた"。樋口は、さらに言葉を重ねる。今、目の前にいる人たちを一生大事にしたいと思っていること、時代の変化のなかで、"それでも、胸を張って生きていいんだぜ"と言いたいという想い、そして、"これからも音楽を目の前で聴いてもらうために、あなたと無限の旅をしたいです"と言うと、新曲「ペングイン」に繋いだ。ひたすら前に進んでいくポジティヴなエネルギーが溢れたその楽曲は、新たな仲間を得て、再スタートを切ったバンドの今にも重なる気がした。
"誰かを憎むほど/君は弱くはないよ"と、戦う人を鼓舞する「軌跡」、"くたびれたぐらいが丁度いいや人生。"という哀愁を帯びたフレーズを繰り返す「馬鹿なくせして」。後半にかけて畳み掛けた曲は、歌詞に込めた言葉がより強く心を揺さぶる。イントロでひときわ大きなリアクションが起きたのは、ライヴ・アンセム「唄う」だった。これからも、あなたとの日々を歌い続けると約束を交わす歌の終わりに、樋口が小指を突き立てると、フロアのお客さんもそれに応えた。最後に"きっとみんなとなら大丈夫な気がします。ずっと「気がする」を信じて、ロックを信じて、共に歩いていきましょう"と語り掛けた樋口が、アコギに持ち替え、ふーっと大きく息を吐くと、ラスト・ソングは「またね」。包み込むようなミディアム・テンポの中で、メンバーのコーラスで届けた"Everything's gonna be all right.(=すべてうまくいく)"は、たとえ根拠がなくても、ただ"あなたを信じること"で背中を押す、WOMCADOLEの優しさに満ちた歌だった。
"声を出せる日が来るといいね。その日は俺らと爆発しよう"。アンコールの樋口の言葉は、歓声のないライヴで、どうしても感じてしまう正直な寂しさを物語っていた。だが、今はこれがベストなかたちだ。ステージに立つ4人の前にお客さんがいる。それだけで十分だ。"最大火力で着火してやるよ!"という樋口の不敵な宣言で突入した「ライター」は、本編の18曲を終えたあとにもかかわらず、その熱量はライヴが始まったときから少しも衰えていなかった。そのまま、"もう1曲やっていいですか?"と、「ワンダー」まで駆け抜けて、ライヴは終演。この日、WOMCADOLEが見せてくれたのは、あらゆる価値観が変わり、コミュニケーションの在り方が激変する世の中で、それでも人と人とが正面からぶつかることの大切さを泥臭く信じぬく姿だった。だから彼らのロックは信じられる。己の意志を貫く彼らの炎は、これからも赤く燃え続けるだろう。
[Setlist]
1. 応答セヨ
2. 綴リ
3. YOU KNOW?
4. レイテンシー
5. Noah's
6. 再生
7. DANGER
8. 人間なんです
9. ヒカリナキセカイ
10. kate11. kamo river
12. doubt
13. ペングイン
14. 軌跡
15. 馬鹿なくせして
16. アオキハルヘ
17. 唄う
18. またね
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En2. ワンダー
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