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INTERVIEW

Japanese

PEDRO

2019年08月号掲載

PEDRO

メンバー:アユニ・D(Vo/Ba)

インタビュアー:宮﨑 大樹

BiSHのアユニ・Dによるソロ・バンド・プロジェクト PEDROが、ユニバーサルミュージック内のEMI Recordsに移籍。全国ツアー"DOG IN CLASSROOM TOUR"の開催と、フル・アルバム『THUMB SUCKER』のリリースが発表された。本作には、再録含む全20曲の制作に田渕ひさ子(NUMBER GIRL/toddle)が参加している。今回、そんな音楽ファン必聴の同作の中から新曲全13曲について、アユニ・Dに余すところなく語ってもらった。ぜひアルバムを全曲通して聴きながら、このインタビューを読んでPEDROの音楽に浸ってほしい。

-ソロ・バンド・プロジェクト、PEDROが続きましたね。待望の新作が完成しました。

『zoozoosea』(2018年リリースの1stミニ・アルバム)を発売した時点で"1回では終わりたくないね"っていう話はしていました。でもBiSHの活動もすごく忙しいので、"もうないのかなぁ、もう終わってしまったんだ"って思ってたんですけど、そのタイミングで今回のアルバムを出したいっていう話をされて。私は嬉しかったです。PEDROも楽しかったので、それがまたできるんだって思ってワクワクしてました。

-ベースはずっと続けてたんですか?

いや、全然弾いてなかったですね。ただ好きな曲の幅とかはすごく増えて、いろんな曲を聴いていました。

-今回のアルバムのサウンド面には、まさにアユニさんの音楽の幅の広がりと意志が反映されてそうですよね。

そうですね。前作(『zoozoosea』)のときはバンドの知識が本当に皆無で、好きなバンドも日本の最近のバンドとかしかなかったんです。でも前回の経験を経てからすごくいろんな曲を聴くようになって、海外のバンドとかも聴くようになりました。自分の好みの音楽がはっきりとしてきたっていうのもあって、オルタナティヴ・ロックとか、ガレージ・ロックとか、そっち系の曲が好きになっていって。今作では海外のバンドの音源をいくつか松隈(ケンタ/サウンド・プロデューサー)さんに渡して、"こういう感じがいいです"みたいなことをすごく話しましたね。

-ドキュメンタリー映像では、"車庫で鳴っている感じ"、のようなことを言っていましたもんね。たしかにガレージ・ロックのサウンド感がありました。そして今回は田渕ひさ子さんがギターとして参加したことも大きなポイントで、それによりものすごく濃い1枚になったなと。田渕ひさ子さんがアルバムに与えた影響はやはり大きかったですか?

曲のデモはSCRAMBLES(※松隈ケンタらによる音楽制作プロダクション)の方々に作っていただいたんですが、デモのトラックを作ってる人は曲によって違うんですよ。そうするとギターの個性がバラバラになるので、松隈さんが田渕さんに"この通りに弾かなくて全然いいので、田渕節を聴かせてください"みたいにお願いしていて。それで田渕さんはデモの部分も使ったり、自分のアレンジを加えてくださったりとかしていて、特にギター・ソロはほぼ田渕さんが作って弾いてくれています。"田渕さんってこんなのも弾くんだ!"みたいな、PEDROでしか聴けない田渕さんの音があって、そういうのがすごく好きです。

-たしかに今までの田渕さんのイメージができる曲もあれば、"これ田渕さんなんだ!"みたいな印象の曲もありますね。作詞の面で、前作は"誰かのために書いたとかじゃなくて、本当に自分の思うことを書いています"(※2018年10月号掲載)と話していたんですが、今回は妄想で誰かになりきって書いたり、映画の脇役になりきって書いたりしたんですよね? 作詞の仕方は意識的に変えたんですか?

そうですね、意識的に変えました。いろんな曲を聴くようになってから"こういう作詞の仕方もあるんだ"とか、"こういう歌詞を書く人もいるんだ"って思ったんです。自分も、自分のことだけを書くんじゃなくて、いろんな方向から歌詞を書けたら意味不明で面白いものになるかもしれないって。

-なるほど。たしかに1枚を通して同じ人が書いたとは思えない仕上がりですね。

わぁ、嬉しい。ありがとうございます。

-前作では、「ハッピーに生きてくれ」だけは自分の中でヤンキーのようなキャラクターを作って、元気が出るようにしたと言っていたんですよ。そういう書き方に手応えや面白みを感じた部分があったんですかね?

自分のことばっかり書くと多少恥ずかしい部分があるんですけど、他の人のストーリーを勝手に作って書くと、そういう気持ちがなくなるので歌詞が書きやすいですね。

-映画とかもたくさん観ていらっしゃるので、そういう意味ではネタはたくさんあったと。それでは早速、収録曲について聞いていきたいと思いますが、まずは今回の収録順もアユニさんが決めました?

そうですね。収録順は全部私が決めました。

-1曲目は、ある意味その作品の顔にもなるわけですけど、「猫背矯正中」を1曲目に選択した理由はなんでしょう?

単純に一番好みの曲が「猫背矯正中」だったからですね。クセが強すぎないところがいいなと。このアルバムはわりとクセが強いような気がしていて、好みの別れる曲がたくさん入ってると思うんです。その中でこの曲がキャッチーなロックっていう感じだったので、これが一番いいなと。ライヴでやるときに一番ノリやすいっていうか。

-"宴を浮き世で"の繰り返しもとても印象的で。耳に残る言葉の繰り返しは狙いました?

他の部分の歌詞は書けてたんですけど、ここだけがずっと思いつかなくて。松隈さんがデモの仮歌詞で"猫背を治して~"ってずっと歌ってたんですよ。だからもうそれ以外の言葉が思いつかなくて、どうしようかと。あまり生活してるなかで聞かない言葉を入れたいなと思って、"宴を浮き世で"にしました。

-ちなみに、この言葉はどうやって生まれたんでしょう?

猫背の根暗な人が、キラキラしたいけどできない、そんな勇気はないなっていう曲なので、好き勝手に生きたいっていう気持ちをどうやって表現したらいいかなって考えたときに、思い浮かんだ言葉です。

-なるほど。歌詞で言うと"一定数のロクデナシの存在肯定中なんです"もいいですよね。今までのアユニさんからは出てこない言葉のような気がしたんです。

そうです。完全にそうですね。PEDROをやってから人との関わりが増えたんです。人とコミュニケーションを取るのが今までは苦手だったんですけど、最近はすごく好きになってきて。人の話を聞くのってこんなに楽しいんだっていうのがわかったんです。今までは"嫌な人は嫌な人"って思っていたんですけど、その人も人間なんだって受け入れられるようになったんですよね。"こういう人間もいるんだ"って思うと、生きるのが少し楽になって。

-生きづらさが減ったと。MVも公開されてますが、曲の疾走感ととても合ってますよね。

山田健人監督に"めちゃくちゃ支離滅裂で意味不明なものにしたい"って頼んで、作ってもらいました。最初は演奏シーンのみにするか、演奏シーンは一切なしにするかっていう案だったんですけど、わがままを言い放って作ってもらったんです。BEASTIE BOYSと、ELASTICAっていうバンドのMVがめちゃくちゃ意味不明で、どっちも街中を走り回っているMVがあるんですけど、それがダサいのにカッコ良くて。そういうものにしたかったんです。

-「猫背矯正中」に続くのはフル・アルバムならではとも言える、ミドル・テンポでダークな「Dickins」です。やはりこういう曲もレパートリーに欲しかったんですか?

そうですね、「Dickins」は「猫背矯正中」とどっちをリード曲にするか迷ったくらいサウンドが好きで。最終的にはライヴを想定して「猫背矯正中」をリード曲にしました。デモのときはギターが何本か入っていた気がするんですけど、田渕さんがギター1本で全部弾いてくださってます。ギターとベースとドラムの、3ピース・バンドの音になってるんです。そういう曲はBiSHには今まで一切なかったので、自分の中ではすごく新鮮ですね。

-今までのアユニさんの歌詞とは雰囲気が違うようにも感じて。まさに誰かになりきった曲のひとつですか?

そうなんですよ。これは、"ローズ・イン・タイドランド"っていう映画に出てくる、ディキンズって男の子をテーマに書きました。私が想像するその男の子の気持ちを。

-言葉のセンスがアユニさんっぽくないのが面白いなと思っていたんですけど、納得です。特に気に入ってる部分はありますか?

"少女はつまらない大人になって くだらない音流してる"とか、"たったの人生書き出すノートは 埋まらず唸るNOとさ"とかですね。わりとお気に入りのワードです。