Japanese
PEDRO
Skream! マガジン 2021年03月号掲載
2021.02.13 @日本武道館
Writer 宮﨑 大樹 Photo by 外林健太
ベースを始めた少女が、わずか3年で日本武道館に立つ。
まるで映画のようなストーリーを歩んできたアユニ・D。それでいて、感受性が豊かな彼女の過ごしてきた人生の悲喜こもごもで、そのストーリーはどんな映画よりも濃厚なものになっていたようだ。そんなふうに思わせてくれた"日本武道館単独公演「生活と記憶」"。ライヴ・レポートとしてはずいぶん長くなってしまったけれど、あの日の記憶を記録として残すため、ここに文章としてしたためたい。
会場に入るまでは、独特な緊張感が漂っているだろうと予想していた日本武道館だが、チルなBGMが流れているこの場所は、拍子抜けするほどに穏やかだった。しかし、そんな空間を切り裂くようなハウリングを合図にセンター・ステージを覆っていた幕が外されると、空気は一気にライヴ・モードへ。これまでのPEDROの集大成とも言えるライヴに相応しく、1曲目は、プロジェクト始動と共に発表された「自律神経出張中」だ。ステージに上がるまでには相当なプレッシャーがバンドにのしかかっていたと思われるが、前週までツアー("SOX & TRUCKS & ROCK & ROLL TOUR")を回ってきたことで、バンドの状態が仕上がっていることが一聴して感じ取れた。ステージ・セットに大型モニターを設置しないあたりは"今日は音で真っ向勝負するぞ"という気概の表れだろう。実際、バンドを牽引していく田渕ひさ子(NUMBER GIRL/toddle)が奏でる、時に軽快で、時にバンドの推進力を増すギターと、それを出すぎず引っ込みすぎずに支えるリズム隊が生むグルーヴは、日本武道館に立つのに相応しい一級品の音楽だった。
ここから「猫背矯正中」、「来ないでワールドエンド」と、スタートダッシュを決めるかのように疾走感のある2曲を投下。一曲一曲が終わるたびに、温かい拍手が日本武道館を包む。この場に集った誰もが、PEDROの日本武道館公演を祝福し、かけがえのないこの時間に幸福を感じていることがひしひしと伝わってきた。ここでアユニ・Dが"PEDROです。よろしくどうぞ"とお決まりの挨拶をしてから「WORLD IS PAIN」へ。それにしても、彼女がいつも通りに挨拶し、バンドのフロントマンとして立っているこのステージは、改めて日本武道館なのだ。新代田FEVERから始まって、わずか3年でここまで来た。まるで白昼夢でも見ているような、非現実的な感覚を覚えながらも、確かにこれは現実で、その事実にはグッとくる。
集まったファンは、「愛してるベイベー」で毛利匠太(Dr)が求めた手拍子に応え、「後ろ指さす奴に中指立てる」を経て加速した「GALILEO」では大きく腕を振り上げる。パンデミックの影響で未だに声を出せない観客からも、その熱量は伝わってきた。ステージの土台にノイジーな映像演出を施し、グランジ調の世界を作り上げた「pistol in my hand」での畳み掛けるようなラストにはとにかく痺れたし、退廃的な世界観の「ボケナス青春」への流れも実にいい。そして、これらを浄化するように歌い上げられた「うた」は、個人的に中盤のハイライトとして挙げたい出来栄えだった。スローテンポなバラードに乗せたアユニ・Dのエモーショナルな歌声、田渕ひさ子が鳴らす泣きのギター・ソロ、アユニ・Dと毛利匠太が向かい合って演奏する光景、それらすべてが相まって自然と目頭が熱くなる。
"私は武道館に初めて立ったんですけど、ひさ子さんと毛利さんも初めてですか?"と、アユニ・Dが投げ掛ける。
田渕ひさ子は"PEDROで初めての武道館を迎えられて、私、幸せであります"と語り、続いて毛利匠太は"高校生の僕が初めてアーティストのライヴを観た場所が武道館で。そのときはまさかステージに立てるとは思っていなかったので、感無量です"と、想いを口にする。そんな3人を見ていると、やっぱりPEDROはひとつのバンドなんだなと再確認できた気がする。
すると"回転スターティン!(アユニ・D)"の声で、ステージが180°回転。続けて"PEDRO、日本武道館「生活と記憶」。今日があなたにとって幸せな思い出になりますように、どうぞ最後までよろしくお願いします。"と、伝えてから「浪漫」へ。光の粒が降り、それらが輪になったり、ハートの形を模したりとロマンチックな空間を演出したこの曲では、リバーブの効いたギターが心地よさと共に幸福感を生む。そこから、等身大のアユニ・Dを生のまま届けた「へなちょこ」、MVにも登場する例のケンタウロスが場を沸かせた「無問題」、薄暗いサウンドを振りまいた「Dickins」と、音楽の幅広さで感情は揺さぶられっぱなしだった。
"上京して最初に住んだ部屋が、六畳一間の部屋で。丁寧な暮らしとは真反対の暮らしをしていました。そんな、ほんのちっぽけな地球の片隅の小さな部屋で、私は、ずっとずっと大きな声で叫びたがっていました。(アユニ・D)"。そう語って披露した「丁寧な暮らし」で高らかに歌い上げた歌詞は、生で聴くとその奥底にパンク・スピリットを潜ませていることに気づく。アユニ・Dが書く歌詞はここ数年でずいぶんと内容が変わったのだが、それらがいずれも嘘のない言葉であることは、普遍的な彼女の歌詞の魅力だろう。初期の曲ながら「丁寧な暮らし」と共通のテーマがあるように思える「ゴミ屑ロンリネス」が届けられたあとは、ライヴ・アレンジのイントロでバンドの力強さを誇示した「SKYFISH GIRL」、バンドのグルーヴの高まりをよりはっきりと感じさせた「EDGE OF NINETEEN」と攻めの曲を並べる。次々に熱量のある演奏で魅せられていると、あっという間にライヴもいよいよ後半戦へ。「生活革命」では空間系のエフェクトを効かせたギター・サウンドで生み出した、幻想的な音世界の中で慈愛に満ちた歌唱を届け、「空っぽ人間」で今にも泣き出しそうな切なげな歌声を届ける。「感傷謳歌」で歌った"生きていればいつかきっと/良いことがあるらしいが/良いことは生きていないと起こらない/やってやろうじゃないか"という言葉を聴いたときには、日本武道館に至るまでの道のりが自然とフラッシュバックした。
"最後に、私が上京してアユニ・Dになったということ、アユニ・Dとして今まで生きてこれたこと、私と私の音楽をあなた方が生かしてくれたということ、そしてこれからもこの街で生きていたいということ。今の想いがすべて詰まっている曲を聴いて帰ってください(アユニ・D)"。その言葉の通り、「東京」では、今この瞬間の彼女の感情すべてが詰まったような音が、歌、ギター、ベース、ドラム、すべてから感じ取れた。アウトロのラスト一音まで感情を乗せ、本編は終了。
そうしてステージを去るメンバーを送り出していた温かくて大きな拍手は、そのままアンコールを求める手拍子に転じていった。
"円もたけなわで、今さらですが、今から僭越ながら私が乾杯の音頭をとらせていただきたいと思います。みなさまの人生を祝しまして、乾杯!!"。アユニ・Dの乾杯の発声を合図に、再び回転を始めたステージ上から、アッパーなライヴ曲「乾杯」が投下されると、アンコール1曲目にして、会場の熱量がさらに一段階高まっていくのがわかった。
"今日、こんなステージを徹夜で作り上げてくださったスタッフの方々、私の人生に革命を起こしてくれた、ひさ子さんと毛利さん、私をいつも支えてくださって、私を人間にしてくれたPEDROチーム、そしてBiSHチームのみなさん、私に愛をたくさん教えてくれたあなたたち、そしていろんな喜怒哀楽を一緒に味わって、どんな困難な日も一緒にぶつかって一緒に乗り越えてくれたBiSHのメンバー。すべてが私の宝物で誇りです。死ぬまで恩返ししてもしきれないなってつくづく思うくらいです。"
話すにつれて、感情があふれ出し、その声は震えていたが、しっかりと、感謝を伝えたアユニ・D。
"私は生活をしていくということ、そして日常を送っていくということ、記憶を紡いだり忘れたりすることを怖がらないで、大切にぎゅっと抱きしめて生きていきたいです。あなたも、どうかこの人生、元気に生きていてください。"
じっくりと心の内を伝えると、彼女の深い愛情と共に、曲が持つ優しさと、たくさんの感謝がひとつになったかのような「日常」を届ける。
そして、この特別な一夜を締めくくったのは「NIGHT NIGHT」。日本武道館に舞った銀テープのように、PEDROの3人と観客の表情は、キラキラと煌めいていた。この輝きのように、PEDROの未来は明るい。
本人の言葉を借りるとするならば、PEDROで"人間になれた"彼女は今、ようやく日々の生活と、その連なりである人生を心から楽しむことができている。そう感じた、記憶に残るライヴだった。
この日、武道館アーティストとなったPEDRO。"日本武道館単独公演「生活と記憶」"は、これまでのPEDROの集大成であると同時に、新たな始まりであることは間違いない。
[Setlist]
1. 自律神経出張中
2. 猫背矯正中
3. 来ないでワールドエンド
4. WORLD IS PAIN
5. 愛してるベイベー
6. 後ろ指さす奴に中指立てる
7. GALILEO
8. pistol in my hand
9. ボケナス青春
10. うた
11. 浪漫
12. へなちょこ
13. 無問題14. Dickins
15. 丁寧な暮らし
16. ゴミ屑ロンリネス
17. SKYFISH GIRL
18. EDGE OF NINETEEN
19. 生活革命
20. 空っぽ人間
21. 感傷謳歌
22. 東京
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En2. 日常
En3. NIGHT NIGHT
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