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LIVE REPORT

Japanese

PEDRO

Skream! マガジン 2020年11月号掲載

2020.09.24 @LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)

Writer 宮﨑 大樹 Photo by 外林健太

インタビューをするたび、ライヴを観るたびにアユニ・Dの進化には驚かされるばかりだけれど、オープニング・チューンの「WORLD IS PAIN」でベースをプレイしながら歌う彼女の佇まいを見たときには、"おぉっ"と思わず驚嘆の声を洩らしてしまった。

BiSHのアユニ・Dによるソロ・バンド・プロジェクト PEDROが全国9都市を回った"LIFE IS HARD TOUR"。もともと、3月から開催を予定していた"GO TO BED TOUR"の全公演がキャンセルになり、PEDROでライヴの場数を踏みたいと語っていたアユニ・Dにとっては、まさに念願叶ってのツアー開催だったはず。このツアーで吸収したことや感じたこと、それらを余すところなく発揮するかのようなツアー・ファイナルが、LINE CUBE SHIBUYAで行われた。

先述のオープニング・チューンで目を見張ったことがもうひとつある。それは、"PEDROのバンド感"だ。先ほどは便宜上"BiSHのアユニ・Dによるソロ・バンド・プロジェクト"という表現をしたが、今回のツアーでのライヴはもちろん、その合間の移動なども含め、PEDROとして過ごしてきた幾つもの時間で培ってきたと思われる3ピース・バンドとしての塊感がそこにはあった。集合体としてのエネルギーに後押しされるように、特に前半戦のアユニ・Dの歌唱は感情が先行してエモさを増していたように思える。

立て続けに曲を披露していく光景を見て改めて感じたのは、PEDROは曲が強いということ。粒揃いの曲たちを奏でる、田渕ひさ子(NUMBER GIRL/toddle)の空間を切り裂く鋭角ギターと、毛利匠太のコンパクトながらパワフルなドラムは実に痛快だ。新型コロナウイルス感染拡大防止のため声を上げられないオーディエンスも、腕を上げ、身体を揺らしてこれに応えていった。

アユニ・Dがノリノリで小刻みに跳ねつつベースを鳴らした疾走感溢れる「GALILEO」や、温かな音像で包み込んだ「感傷謳歌」など、曲の振れ幅も相まって見どころだらけだったこの一夜。その中でも、筆者が個人的にハイライトのひとつとして挙げたいのは「pistol in my hand」だ。深紅の照明で演出されたダークな世界観の中で、攻撃的な言葉を紡いでいくアユニ・Dの姿は、まるでロック・スターのように見えたし、畳み掛けるような曲のラストは文句なしのカッコ良さだったと言える。

さらにこの日は本編終盤の流れも最高だった。"人生は大変厳しいものでありますが、日頃の疲れを癒すべく、最後まで存分に楽しい時間をお過ごしいただきたい。私(わたくし)アユニ・Dが僭越ながら乾杯の音頭をとらせていただきます。皆様の人生と健康を祝しまして、かんぱぁーい!!"の発声でそのまま「乾杯」を投下。ライヴを意識して制作したというこの曲の持つポテンシャルが十二分に発揮され、こんな時代じゃなければアユニ・Dと一緒になって"乾杯!"と叫びたい気持ちでいっぱいだったし、きっと観客も心の声で"乾杯!"と叫んでいたことだろう。ここから間髪入れずに「自律神経出張中」へ。ラスト・スパートに相応しく、すべてを出し尽くすようなパフォーマンスで駆け抜けていくと「空っぽ人間」では、感謝や祈り、そのほかたくさんの想いを込めたであろう歌を届ける。聴き手の心を浄化するようにして本編は幕を閉じた。

アンコールで登場したアユニ・Dは、感無量な様子で"もう終わっちゃうんだ。寂しい......。"と、声を震わせながら言葉を漏らす。そうして結びの時間を慈しむように「浪漫」を届けていく。アユニ・Dの感情に呼応した田渕ひさ子はエモーショナルなギターをかき鳴らし、それを毛利匠太のドラムが支えていった。

これで大団円を迎えたかと思ったところで、"帰ってよく寝てね"と言わんばかりに始まったのは「NIGHT NIGHT」。パフォーマンスを終え、気持ち良さそうに、爽やかな表情で3人はステージを去っていった。

"生きていて良かったなって思わせてくれて、本当にありがとうございます"

これはアンコールのMCでアユニ・Dが言っていた言葉だ。

その言葉を彼女にそのまま返したい。


[Setlist]
1. WORLD IS PAIN
2. 猫背矯正中
3. 愛してるベイベー
4. 来ないでワールドエンド
5. 後ろ指さす奴に中指立てる
6. GALILEO
7. pistol in my hand
8. ボケナス青春
9. さよならだけが人生だ
10. 無問題
11. 感傷謳歌
12. へなちょこ
13. ironic baby
14. Dickins
15. おちこぼれブルース
16. 生活革命
17. SKYFISH GIRL
18. 乾杯
19. 自律神経出張中
20. 空っぽ人間
En1. 浪漫
En2. NIGHT NIGHT

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