Japanese
パスピエ
2019年05月号掲載
Member:大胡田 なつき(Vo) 成田 ハネダ(Key)
Interviewer:秦 理絵
改めて"これがパスピエです"って言えるものに触れられた。それを私たちのユーモアと呼べるんじゃないかな
-今回最初に「グラフィティー」と「ONE」を聴いたときは新しさに衝撃を受けたんですよ。"おっ、新しいパスピエだぞ"って。で、ずーっと聴いてきて、最後に出てくる「始まりはいつも」も曲調としては新しいはずなのに、スッと腑に落ちるんですよね。
成田:そう、そういうふうに作ったんです(笑)。
-さすがですね(笑)。毎回パスピエの手の上で踊らされてる感じがします。
大胡田&成田:あはははは(笑)!
-あと「始まりはいつも」は歌詞も熱が高いっていう話だと、"良し悪し見極めながらどこまでも繋いで行こう"とかが印象的でした。
大胡田:これは最後の曲だって決まっている状態で書いたから、いろいろ考えましたね。自分の想いを描くのもいいけど、言うことは言っておかないとなと思って。
-大胡田さんが言っておくべきだと思ったことを言葉にできますか?
大胡田:うーん......マイナスだと捉えられがちな言葉とか表現とかも、やりようじゃないかみたいなことかな。そういうことをあんまり恐れない方がいいんじゃないかと思ったんですよ。誰かに見せることとか吐き出すこととかも、もっと気楽にやっても大丈夫ですよって言いたかったというか。自分に対して言ってるところもあるんですけどね。
-それって、ちょっとした発言とか表現に対していちいち揚げ足を取って批判する時代の風潮もあって、言いたかったことですか?
大胡田:うん、それはあると思います。さっきの垣根の話にも通じるんですけど、そういう部分はフッと越えられるところがあると思うんですよね。......歌じゃないとうまく言えないんですけど。なので、ぜひ聴いてもらえればと思います(笑)。
-わかりました。タイトルが"more humor"というのもパスピエらしかったです。
大胡田:ちょっと回文っぽいんですよね。上から読んでも"モア・ユー・モア"、下から読んでも"モア・ユー・モア"になってて。どこかで使おうと前から思っっていた言葉ではあって、今回このアルバムに相応しいなと思ったんですよ。
-今回のアルバムではよりユーモアを大切にしたかったということですか?
大胡田:今回というよりも、"生きてて"ですよね。
成田:そうだね。
大胡田:これからまた楽しく生きていくのにユーモアがないとやっていけないっていうか。ユーモアがあって、人生は楽しいと思うんですよね。
成田:エンターテイメントってそうですよね。できあがった1の物事に対して、その裏には99ぐらいのストーリーがあると思うんですよ。歌詞ひとつとっても、限られた文字数の中でゼロから100まで伝えられるものじゃないし。音楽そのものがユーモアだなと思うんですよね。限りなく本物のようなフェイクというか。自分が、クラシックっていう1曲が30分あるところからの出身だからかもしれないけど、大衆音楽として3~5以内に収めるっていう暗黙のシステムの中で戦っていくこと自体が、フェイクでありユーモアだなと思ってるし、それがエンターテイメントをやるっていうことだと考えてるんです。
大胡田:4人になっていろいろと変わった部分もあって、今回"改めて"これがパスピエですっていうものに、完成ではないんですけど、かなり確かなところまで触れられたと思ってて。それを私たちのユーモアと呼べるんじゃないかなと。
-なるほど。今作のアートワークは、グラフィック・デザイナーのGUCCIMAZEさんと大胡田さんのコラボだそうですね。これはどういう経緯で?
成田:もともと僕らに正式なロゴがないから作りたいなっていうのがあって。GUCCIMAZEさんはNicki Minajのジャケットのタイポグラフィとかもやってる人なんですけど、その作品を見たときに、"これを作ってるのが日本人なんだ"って驚いたんです。で、"一緒に何かやれたら面白くないですか?"って言ったのが最初ですね。
-アルバムの音をイメージして描いてもらったんですか?
大胡田:そうです。"カラフルな色が欲しいです"っていうことだけを伝えて描いてもらったんですよ。そしたらファンタジーと繰り返しのイメージを受けたから、ファンシーな色を使いましたって言ってくれて。"繰り返し"は私も好きなテーマだなと思ったんですよね。そこから私も輪廻をテーマに(女の子の絵を)描いたんです。
-今作ができたことで、今後の活動について見えてきたことはありましたか?
成田:また歩んでいくっていうことですかね。この作品で撒いた種を耕してどれだけ芽を育てていけるかっていう感じかなと思います。そこに賛同してくれる人がどんどん増えたらいいなっていう。もはやね、シングルを出したら、次のアルバムを作りたいとか、フェス出たいとかは狙ってやるものじゃないなと思ってるんです。いかに自分たちが健康に音楽を生み出していくか。それが素敵なものだったらいろいろなものがついてくるだろうなって。この作品に嘘がないぶんそういうふうに思えますね。
-音楽が導いてくれる場所に進んでいきたいというか。
大胡田:本当にそれがいいですね。また何年かあとに同じような話ができたらいいですよね。
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