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INTERVIEW

Japanese

パスピエ

2019年05月号掲載

パスピエ

メンバー:大胡田 なつき(Vo) 成田 ハネダ(Key)

インタビュアー:秦 理絵

バンド結成10周年を迎えたパスピエが、前作『&DNA』から約2年半ぶりとなるフル・アルバム『more humor』を完成させた。これまでも作品をリリースするごとに自分たちの音楽性を貪欲に広げ続けてきたパスピエだが、今作ではさらにその勢いを加速。バンドの原点にあるニュー・ウェーヴやプログレという武器をさらに鋭く深化させると同時に、海外のトレンド・ミュージックにも目を配りながら新しい地平へ踏み出している。それも、斬新でクリエイティヴなユーモアをもって、だ。そんな渾身のアルバムについて、今回はメンバーを代表して大胡田なつき、成田ハネダに話を訊いた。その言葉からは、パスピエというバンドのあり方にはいつも"音楽"が真ん中にあることが伝わるはずだ。

-髪の毛ばっさり切ったんですね。

大胡田:そうなんですよ。バンドも10周年っていう区切りを迎えたから、ここでイメージ・チェンジしようと思ったんです。ずっとロング・ヘアーでやってきたので。

-とても似合ってます。

大胡田:ありがとうございます。そういうふうに言っていただけて。

成田:......。

大胡田:なんか言ってよ(笑)。

成田:いや、好きなことをすればいいと思ってますよ(笑)。

-あはは(笑)。早速ですが『more humor』、素晴らしいです。やお(たくや/Dr)さんが脱退してから改めて4人でバンドを再構築してきたけど、そこからさらに以前の自分たちを越えたっていうパスピエらしい粘り強さで掴み取った傑作だと思います。

成田:フル・アルバムとしては約2年半ぶりですからね。やっぱり活動してると、日本ではフル・アルバムの比重が大きいと思うんですよ。そこに向けて僕らが何を提示するかみたいなところはすごく大事だったし、10周年も重なったから、バンドとしての総決算というよりは、より進んでいく感じを意識したかもしれないですね。

大胡田:アルバムとかミニ・アルバムを作るたびに"あっ、いいのができたな"と思うんですよ。前作の『ネオンと虎』(2018年リリース)を作ったときも、"これ以上のものを作れるかな?"と考えてたんです。でも、全然できた(笑)。今回のアルバムは本当に気に入ってます。

-なんとなく大胡田さんが手応えを語る口調もいつもより熱が入ってる気がします。

大胡田:えっ、そうですか!? 前回までの2枚のミニ・アルバム(2017年リリースの『OTONARIさん』、『ネオンと虎』)では4人でいろいろな試行錯誤をした部分があったから、今回はちゃんとそれを生かせたのが嬉しかったんですよね。

-『OTONARIさん』では新しいサウンド・アプローチを取り入れて、次の『ネオンと虎』ではバンドのグルーヴ感を熟成させたっていう流れを経たうえでの今作っていう。

大胡田:うん、そうですね。

-今作を作るうえで、最初に考えたことはなんでしたか?

成田:ここまで10年間やってきて、自分たちの音楽の守備範囲外のこともやっていきたいなと思ったんですよね。僕ら自体、デビュー当時はバンドというストーリー、出自、キャラクターを前面に出すというよりも、音楽を一番にして出てきたところがあって。そういう点で言うと、今作はまたデビュー当時の気持ちでリスタートする感覚があるんですよね。新しい場所に足を踏み入れていくことで、今まで僕らを知らなかった人にも新鮮に思ってほしいし、地続きで見てくれてた人にも、"あ、またパスピエが新しいことをやったな"っていうのは感じ取ってもらいたいんです。

-デビュー当時の感覚に立ち返ってみようと思ったのは、やっぱり10周年っていうタイミングがあったからですか?

成田:うん、今って楽曲単体がバンド自体の評価と紐づいてくる時代だと思うんですよ。

-プレイリスト的な聴き方もしますからね。

成田:そう。今まではひとつの楽曲に対して、バンドが歩んできた道のりがセットで考えられたりもしたけど、今は良くも悪くも、ポンッて出た1曲でバンドのイメージが変えられるような時代だと思うんです。だから「ONE」のMVを観て"あ、パスピエ変わった"って思った人たちを、どこまで引きずり込んでいけるかなんですよね。

-「ONE」はパスピエの新機軸となる壮大でスタイリッシュな楽曲ですけど、このあたりの曲がアルバム制作でも最初の方にできたんですか?

大胡田:いや、どちらかって言うと最後の方だよね。

成田:その前に「だ」とか「BTB」みたいな曲から作ってたんです。で、今回のアルバムではちゃんと"変わった"って捉えてもらいたいと思ったときに、どうしようかなって悩んで。「ONE」ができあがったことで軸が定まったっていう感じですね。

-「ONE」で意識したのは、今の海外のポップ・シーンで主流になっているようなサウンド感や、リズム・アプローチみたいなところだったんですか?

成田:うーん、今まで自分たちがリード曲にしてきたのがほぼアッパー・ソングだったから、最初はダウナーでノれる曲を作りたいっていうのを考えてたんですよ。

-ここ数年成田さんの中で何度かテーマにしてることですね。

成田:そう、「ヨアケマエ」(2016年リリースの5thシングル表題曲)を作った頃以降、アッパーな曲からミドル・テンポに落としてるんですけど、そこからさらに落とそうとしたのが今回の挑戦ですね。それができたのも、4人になったことでビートに対して全員がストイックになってるのが大きいと思います。(ドラムがいなくて)バンドとして完全なピースではないからこそ、自分たちでビートメイキングに関して考えることが多くなった結果じゃないですかね。

-なるほど。

成田:最近、世界的にもロー・テンポだけどアガれる音楽が多いとか、どのジャンルにも固定概念がないんですよ。トラックなんだけど生っぽくソリッドに仕上げてるものもあるし、いろいろな手法があって。じゃあパスピエとしても、それこそ今までは大胡田の声のキャラクターを生かしたものだったり、ニュー・ウェーヴ、シンセ・ポップをやってきたりしたけど、その概念からハズれることをやりたかったんです。

-たしかに「ONE」は大胡田さんの歌声も包容力のある新しいアプローチです。

大胡田:初めて聴いたときは、どうやって歌うのか想像できなかったんですよ。最終的には上と下に分けて両方を歌ってるんですけど、結構戸惑ったんです。今回は楽器もたくさん重なってるし、そういう曲の雰囲気を意識して歌いましたね。

-この曲は"目と目を合わせたら eye"っていうサビのフレーズがいいんですよね。大胡田さんがリスナーの側に踏み込んでいく感じがあって。

大胡田:そうなんですよ。わりと『more humor』はそういう曲が多くて。近づくっていうのも、今までだったら距離を近くするって意識で書いてたんですけど、今回はもっと自然な作業だったんですよね。"自分を曝け出すから見てくれ"って言うことは、あんまり私は好きじゃなくて。それもいいと思うんですけどね。曝け出すっていう方向じゃなくて......ちゃんと自分の中から出す言葉を整えて歌った感じです。浮かんだ景色とか見たものとかからのインスピレーションを得るんじゃなくて。

-もちろん「だ」とか「BTB」みたいなインスピレーション勝負の曲もあるけれど、そうじゃない曲の割合が増えてるんですね。

大胡田:そう、そのあたりのバランスの取り方はうまくできたかなと思います。