Japanese
DIALOGUE+ × 田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)× パスピエ 座談会
DIALOGUE+が10thシングル『イージー?ハード?しかして進めっ!』をリリースする。 DIALOGUE+は、田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)が音楽プロデュースを務める、女性声優8人組のアーティスト・ユニット。2019年の結成以降、発売したシングル曲すべてでアニメ主題歌を担当し、昨年はZeppツアー"DIALOGUE+ Zepp Tour 2023 「Superday |Longitude + Latitude─」"を、今年1月にはパシフィコ横浜 国立大ホールにて単独公演"DIALOGUE+ LIVE 2024 「LIFE is EASY?」"を開催と、着実に支持を集めている。今回リリースされるシングルは、アニメ"弱キャラ友崎くん 2nd STAGE"のオープニング曲「イージー?ハード?しかして進めっ!」と、エンディング曲「誰かじゃないから」を収録。ユニットとしては第1期から引き続き主題歌を担当することとなった。本作のリリースを記念して、DIALOGUE+から稗田寧々と守屋亨香、音楽プロデューサーの田淵と、「誰かじゃないから」を手掛けたパスピエの大胡田なつきと成田ハネダによる座談会を実施。楽曲の制作エピソードから、田淵がDIALOGUE+に抱く"願い"まで、"セリフ"や"会話"というユニット名の通り、じっくりと語ってもらう貴重な場となった。
DIALOGUE+:稗田 寧々 守屋 亨香
Producer:田淵 智也(UNISON SQUARE GARDEN/Ba)
パスピエ:大胡田 なつき(Vo) 成田 ハネダ(Key)
Interviewer:山口 哲生 Photographer:Kanda Yukiya
大胡田さんの歌詞って、この歌詞を歌うときにしかない感覚みたいなものがすごくあるんですよね(稗田)
-5人でこういった感じの座談会は初めてですよね?
稗田&守屋:初めてです。
大胡田:そもそも成田さんが入ってくるのが初めてだもんね?
田淵:ね? 大胡田さんがDIALOGUE+のトーク・イベントに出てくれたことは、これまで何回かあったけど。
成田:新参者です。
一同:ははははは(笑)。
田淵:私もメンバーと対談することもめったにないので。
稗田:年に1回あるかないかぐらいですね。
-貴重な機会をありがとうございます。成田さんは、今回作曲された「誰かじゃないから」で初参加されたわけですけども、最初にお話が来たときにどう思われました?
成田:田淵さんから声を掛けてもらったんですけど、"いいんですか!?"という感じでしたね。大胡田がずっと参加しているのは耳にしていたので、俺も参加しちゃっていいの......? みたいな。でも僕で良ければぜひぜひ、という感じでした。
-大胡田さんとしては、成田さんが参加することになったのを知ったときってどんな感じだったんです?
大胡田:なんていうか......"パスピエ?"と思って(笑)。
稗田&守屋:ははははははは(笑)!
大胡田:田淵さんから2曲いただいたんですけど、"1曲はこの方です。で、もう1曲は実は成田君なんです"って言われて、"嘘だろ......?"って。
田淵:こっそり進めてたんですよ。
成田:だからお互い水面下で知って。
稗田&守屋:そうだったんですね!
大胡田:"そうか......成田さんの曲の歌詞、また書くのか......"って(笑)。
田淵:年に10曲ぐらい書いてるのに(笑)。
成田:書き飽きてる(笑)。
-田淵さんとしては、最初からパスピエのおふたりにお願いしようと思って進めていたわけではなかったんですね。
田淵:そうですね。成田君に曲を書いてもらうタイミングが来たなと思って依頼したのが最初です。大胡田さんが歌詞を書くとそのとき決めていたかは記憶が定かではないんですが、ここはやっぱりパスピエコンビじゃないかっていうことで、私的なエゴとかロマンが出たというか(笑)。"このふたりの曲、聴きてぇー!"っていうところから依頼した感じでしたね。
-成田さんに曲を書いてもらうタイミングが来たというのは?
田淵:今回のシングルはアニメ("弱キャラ友崎くん 2nd STAGE")のオープニングとエンディングの2曲になっていて。1期のときは(DIALOGUE+の)曲数がまだそこまで多くなかったから、オープニング曲(2021年2月3日リリースの2ndシングル表題曲「人生イージー?」)とエンディング曲(2021年2月3日リリースの3rdシングル表題曲「あやふわアスタリスク」)をそれぞれシングルの表題にして出したんですよ。その頃は、シングルの表題は一応私が書くっていう空気があったので2曲とも書いたんですけど、今回もオープニングとエンディングをやるとなったときに、持ち曲もいっぱいあるし、DIALOGUE+のストーリーの中で、俺が両方とも書くっていうことに対しての面白さがそんなにないかなと思って。であれば、一曲入魂で俺はオープニングを書いて、もう1曲は別の人にお願いしようと。
-なるほど。
田淵:で、一緒に作ったら楽しそうな人で、僕が作れないタイプの曲を書ける人を考えたときに......私はもともとパスピエがめっちゃ大好きで、この曲がアニソンに入ってきたらめっちゃ面白いんじゃないか? ってずっと思っていたんですよ。それでなんとなく軽率にお願いしにいくときに、アルバムの中の1曲をお願いするよりは"アニメの曲です"って言ったほうが、尊敬するパスピエにおうかがいを立てやすいかなっていうところもあったりして。なので振れ幅的な意味でもそうだし、"このときのために成田君の枠を空けときました!"みたいな感じで、満を持してお願いにあがったっていう次第ですね。
大胡田:嬉しすぎますよね?
成田:うん。もう本当に。
田淵:パスピエ大好きだからね。
稗田:私たちはもともとバンドが好きで、パスピエさんも学生のときによく聴いていたので、最初に大胡田さんが作詞で参加されたときから"なんて光栄なんだろう、声優になってまさかこうやって一緒にお仕事できるなんて!"と思っていたんです。それがまさかの成田さんも来て、"もうパスピエさんやん!"って思いました(笑)。
守屋:ね!? 私も高校生のときからずっと聴いていて大好きなので、"俺得だな!"と思って、すごく嬉しかったです。
-お話にもあった通り、大胡田さんはDIALOGUE+の始動時から作詞で参加されていましたが、最初にお願いしようと思ったのはどういったところからだったんですか?
田淵:DIALOGUE+というユニットが始まって、音楽プロデューサーという立場をさせてもらうことになり、最初にミニ・アルバムを作りますとなったときに、まぁ、よくある"豪華作家陣、集結!"というか。その当時って声優音楽ではそういうのがよくあったんですよ。それよりも"全部田淵が書いてます"のほうが、曲のクオリティは置いといて、話題的には面白いかなと思って、まず自分が曲を書くことを決めたんです。でも、歌詞に関してはいろんな振れ幅があったほうがいいなと思ったときに、僕に書けない歌詞っていうところから、主に女性の方にお願いしようと。そのときに真っ先に思い浮かんだのが、パスピエの大胡田さんと赤い公園の津野(米咲/Gt)ちゃんだったんですよ。僕はもう本当にふたりの歌詞がめちゃくちゃ好きで、大胡田さんの歌詞が評価されないのはおかしい! ってずっと思っていたので、だから単純に、この人の歌詞をバンド・シーン以外のところでも俺が見たかったっていう。"こんなにすごい作詞家がいるんですよー!"っていうのを表明したかったというか(笑)。
大胡田:ありがたい。
田淵:最初はそういうこと(歌詞提供)ってやるのかなって気遅れする感じもあったんですけど、快く受け入れてくれたので、そこから調子に乗って何回もオファーして。なんだかんだで、嘘かもしれないけど、大胡田さんも楽しんでくれてる感じがあるし。
大胡田:嘘じゃないですよ(笑)。毎回かなり新鮮な気持ちでやらせてもらってます。DIALOGUE+さんってかわいいものからかっこいいものまで、曲のタイプがいろいろあるので、そのなかでやらせてもらっている感じですね。
-田淵さんは、大胡田さんが書く歌詞の特にどういう部分が好きなんですか?
田淵:やっぱり言語感覚のセンスみたいなものというか。僕が好きになる作詞家のタイプを形容するときに、"日本語の再構築"っていうのをいつぞやからよく使うようになっていて。僕はあんまり文章で歌詞を読まないし、最初に音楽を聴くときは歌詞は特に聴いていないんですけど、なぜか耳に刺さってくる言葉があって。それは語感が面白いからっていうだけだと言葉遊びみたいな感じになるけど、僕は言葉遊びっていう言葉もそんなに好きじゃなくて。
大胡田:わかる。
田淵:芸術なんですよ。"この日本語の使い方があったのか!"、"なんだ今の言葉は!"って、頭にこびりついて離れなくなる。意味として聴いていないんだけどなぜか強烈に残るっていうことが、最初にパスピエのライヴを観たときにすごくあって。そこですごい興味を持って、追いかけさせてもらってたところはありましたね。でも、言語感覚が他の人とは違うところがあるんだけど、話を聞いてみると意外とちゃんと理論もあるし、実はこういうストーリーなんですというのもあって、面白ぇ! っていう。だからDIALOGUE+で仕事するときは、"好きな作詞家のさらにすごいところを発見!"みたいな感じで、そういう新しい一面をいち早く見つけさせてもらってる感じがして。そういうのも長生きしたご褒美だと思いながら(笑)、ありがたくやらせてもらってます。
-先ほど田淵さんが"言葉遊びという言葉がそんなに好きじゃない"とおっしゃったときに、大胡田さんが同意されてましたけど。
大胡田:やっぱり自分は言葉遊びという意識ではやっていないから、ちょっと違和感があるんですよね。
田淵:言われるよね。
大胡田:言われます、言われます。韻を踏んだり、古語とか故事成語を入れたりするから、言葉遊びという評価をいただくんですけど、自分的にはちょっとしっくりきてなくて。そう捉えていただけても、そういう聴き方をしていただいても全然いいんですけど、私が意図しているところではないかなって。
田淵:"「遊び」じゃねぇんだ!"って?
大胡田:ははははは(笑)。そう言っちゃうとカッコいいんですけどね。
-守屋さんと稗田さんは、大胡田さんの書く歌詞にどんな印象を持っていますか?
守屋:私も大胡田さんの書く歌詞の世界観がすごく好きで、それにめちゃめちゃ感動して(パスピエを)聴き始めたんです。DIALOGUE+ではいろいろな曲を歌わせてもらっているんですけど、どんな楽曲でも大胡田さんの良さみたいなものがすごく出てくるなぁと思いますね。素敵な歌詞を書いてくださっているので、歌っていて楽しいですし、すごくしっくりくる感じがあります。そこは自分が好きだからというのも大きいと思います(笑)。
稗田:私も歌詞が好きなアーティストさんが結構いるんですけど、大胡田さんの歌詞って聴き馴染みがなかったり、それこそちょっと古風な言い回しだったりとか、今まで自分が口に出したことがない言葉の組み合わせだったりするので、毎回歌うたびに口が新鮮というか。
田淵:いい言葉だ。
稗田:この歌詞を歌うときにしかない感覚みたいなものがすごくあるんですよね。言葉のひとつひとつが面白いというか、ワクワクするなぁって毎回思っています。
大胡田:いやぁ......なんか、じーんとしてしまいますね(笑)。泣いちゃいそう。
稗田:学生の頃に「手加減の無い未来」(2015年リリースの3rdフル・アルバム『娑婆ラバ』収録曲)をバンドでコピーしたことがあるんです。
大胡田&成田:へぇー!
稗田:私、ヴォーカルだったんですけど、(パスピエが)好きだったので"やりたい!"って言って。
成田:あららら。
大胡田:しかも「手加減の無い未来」。
田淵:チョイスがいいよね(笑)。
成田:歌い上がった音源を聴くと、パスピエのことをいろいろ聴いてきてくれたんだろうなっていうのが、なんとなく伝わってきたりもするんですよ。そういうところは本当に嬉しいですね。
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