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INTERVIEW

Japanese

パスピエ

2019年05月号掲載

パスピエ

メンバー:大胡田 なつき(Vo) 成田 ハネダ(Key)

インタビュアー:秦 理絵

-今回のアルバムって、音にしても歌詞にしても、今まで以上に広い場所に届けていくんだっていう訴求力が強い作品だと思うけど、そのあたりの手応えはありますか?

成田:そもそも僕らって外に広がった精神を持ったメンバーではないんですよ。

大胡田:そうだね(笑)。

成田:今まで僕ら自身、"パスピエの音楽を好きな人だけ集まればいい"みたいな想いが片隅にあったかもしれないんじゃないかって。ともすれば、自分たちの音像をどんどんソリッドにして、そのパスピエとキャラクターの"線"に触れる人が増えればいいなと考えてたんですね。でも、今回は僕ら自身がどんどん垣根を越えることで、パスピエっていう"面"に触れる人が多くなって、パスピエを好きになってくれればいいなと思ったんですよね。

-それは、よりたくさんの人に聴いてもらいたいっていうことですか?

成田:うーん......それはちょっと違うんですよね。別に大きい会場でライヴをやりたいとか、そういうゴールではないんですよ。自分たちがこれだけ音楽が好きだぞっていうところに触れてほしいために、面が大きくなればいいなっていう感じですね。僕らは3年前からメディアで顔を出すっていうことをやっているけど、そのタイミングで自分たちが面を広くするのは違うのかなと思ったんですよ。

-あのタイミングで面を広げると、違う意味に受け止められる可能性もありましたよね。

成田:そうなんです。僕らがデビュー当時に顔を隠してたのは、本音で音楽を届けるためっていうのもあったんですけど、今はこうやって顔を出せるようになったタイミングでも、あのときと同じように本音の音楽を出せるのが大きいと思うんです。ようやく10年経って辿り着いたんですよね。正直今回のアルバムみたいなことをデビュー当時にやったとしても、面白かったかわからないんですよ。デビューのタイミングは、やっぱりソリッドであるべきだったと思うんですね。

-パスピエと言えばニュー・ウェーヴっていうわかりやすい見せ方も必要だった。

成田:うん。だから今回こういう作品ができてきたのも10年やってきたからだし、音楽は自由であるべきだっていうことも、ようやく体現できるようになったと思ってるんです。

-なるほど。この面の広さは今だからこそなんですね。アルバムの制作の話に戻すと、「だ」とか「BTB」の他に初期段階からあったものというと?

成田:これ、まだ読み方が定まってないんですけど、「R138」とかかな。

-そのあたりの曲は前作『ネオンと虎』のモードが引き継がれている感じがしますね。

成田:まさにそうなんですよ。

-中でも「だ」は遊び心のあるフレーズがふんだんに入ってて面白かったです。

成田:これは最初に作った曲だったから、今までのパスピエの更新版を作ろうっていうのがテーマだったのかな。"EDMとオリエンタルの合いの子"みたいなことはテーマにしてたけど、個人的には昭和時代のちょっとざらついた映画のイメージがあるんです。

-これに"だ"なんてタイトルが付くなんて思わなかったでしょう?

大胡田:これ、成田さんが付けたタイトルなんですよ。

-絶対に大胡田さんだと思ってました(笑)。

成田:コーラス・ワークとして"ダダダ"って歌ってるから、それで"だ"っていう。

大胡田:最初は冗談で言ってるのかと思ってたけど(笑)。

成田:この曲ってタイプとしては、他の曲に比べて昔のパスピエを引き継いだ要素が強いものだったんです。だからバンドが変わろうとしているタイミングのアルバムに入れるために、あんまりタイトルに意味を持たせたくないっていうのはありましたね。

-歌詞では"地獄に落ちろ"とか歌っててかなり振り切れてますね。

大胡田:ね(笑)。次のセッションで録ろうとしてた曲が、あんまり軽妙な感じで書けるようなものじゃなさそうだったから、ここで全部表現しました。

-で、"R138"の読みは定まってないって言ってましたけど、ルート138ですか?

大胡田:これ、"アール138"にしようって言わなかった?

成田:えっと......現時点まだ定まってないです(笑)。意味的にはルート138ですね。

-国道138号線のことですよね。

大胡田:そう、箱根の方に続いてて、うちの実家の近くに通ってる道なんですけど、私、246(国道246号)ぐらいメジャーな道路だと思ってたんですよ。だから、みんなわかるものだと思って歌詞に入れて"138"って歌ってるんですけど、誰も知らなくて(笑)。

-今までの曲で言うと、「チャイナタウン」(2011年リリースの1stアルバム『わたし開花したわ』収録曲)みたいなニュー・ウェーヴ感が強く出た疾走感のあるサウンドですけど、この歌詞にしようと思ったのは?

大胡田:今回はそこまで音に引っ張られない歌詞にしようと思ったんですよ。もちろん音に寄せた歌詞もあるんですけど、「R138」は歌詞だけ見ると曲調とはあんまり近くないと思うんです。この曲は音というより、メロディの雰囲気で浮かんだ歌詞ですね。

-あとは「煙」の深遠なサウンド感は印象的でした。

成田:この曲は「ONE」を作った直後にできたんですよ。あの曲でアルバムの軸が定まってからすごく開放されたんですよね。あれ以降曲の作り方がサンプリング的になったというか。『OTONARIさん』とかは打ち込みの要素を取り入れながらも、バンドのことをちゃんと考えてたんですけど、デモ作りの時点では「ONE」では100パーセント、バンド・サウンドを無視したんです。曲ができあがったあとでバンドに還元して、作品として面白いものを作ろうとしたら、ちゃんとバンド・サウンドとして面白いものになったから、これもそういう感じですね。ひとつの曲ができるまでに、トラックメイキングをしてからバンドでセルフ・カバーをするっていうイメージなんです。

大胡田:今回は打ち込みっぽい音楽と、今まで私たちがやってたバンド音楽の垣根を越えられたような気がするんですよ。かなり理想の形に近いんじゃないかな。

成田:「ONE」と「煙」はその感じが出てると思います。

-「始まりはいつも」も「ONE」のあとですか?

成田:そうですね。この曲には自分たちの熱がストレートに出てると思います。歌詞としても音としても。今までこういう曲は頭とか中間で置くことが多かったんですけど、今回は最後に置きたかったんですよ。まだ10年で終わりじゃないぞというか。