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INTERVIEW

Japanese

fhána

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Member:佐藤 純一(Key/Cho)

Interviewer:吉羽 さおり

アニソンど真ん中でもなく、ロックやJ-POPにいったとしても違う。そういうポジショニングや音楽性は明確に考えていた


-よくぞまとまっているなという4人ですね。でもたしかに、いろんなバンドを見わたしてみてもfhánaは珍しいと思うんです。曲の幅広さもそうだし、かと言ってアニメのシーンでこういうバンドがいるのかと言われたら、いないですよね。

アニメ以外のシーンでもあまりいないんじゃないですかね。

-ちゃんとバンドとしての世界観を持っていながら、それぞれの作品に合ったいろいろな曲を書くことができて、且ついろんなシーンを橋渡しできる可能性も持っていると。

そういう橋渡しするということに関しては活動初期から考えていましたね。要は、競争しないっていうか。どこに言ってもちょっと土俵をずらしていて。アニソンというシーンにおいても、アニソンど真ん中じゃなくて、ちょっとfhánaは違うよねっていう感じだし。例えば"ROCK IN JAPAN FESTIVAL"とかロック・シーンに出ていったとしても、いわゆるJ-ROCKバンドとも違うし、J-POPみたいなところに行ったとしても違うし、どこに行ってもちょっとずつ違う。でもちょっとずつ被っているというか。そういうポジショニングとか音楽性は明確に考えていたし、自分がそういうものをもともと好きだっていうのもありますね。ただこのベスト・アルバムを機にメンバーについて改めて考えたら、メンバーがそもそも変わってるなということに気づいた感じでしたね(笑)。

-このベスト・アルバムには最後に書き下ろしの新曲「STORIES」が収録されました。この曲はどういうふうに作られていったものですか?

ベスト・アルバムを出すという話が持ち上がったときに、新曲は確実に入れたいという思いがあったんです。というのは、ベストはこれまでの活動をまとめたものだと思うんですけど、過去のことだけじゃなくて、未来のことも入れたいと考えていたんですよね。それに、もともとベスト・アルバムの話が出る前から、5周年の新曲を作ろうと思っていたのでちょうどいいタイミングでした。でも、どういう曲にするか、タイトルをどうするかというのはギリギリに思いついて。ベスト・アルバムのタイトルも、新曲のタイトルも"STORIES"にしようと閃いたのは、それこそジャケ写撮影の数日前でした。

-そうだったんですね。

アニメというのももちろん物語だし、fhánaの曲ひとつひとつも物語のようなものになっていて、今までの物語と、新曲というこれからの物語が集まったアルバムが、"STORIES"ということで。さらにはバンドの物語というのもあるし、これを聴いてくれるひとりひとりの物語もある。それがこのアルバムを通して交わるような、そういうイメージですね。交わって、これからも物語が続いていくっていう。そういう曲にしたいなと思っていました。歌詞についても、今お話ししたようなことを文章に起こして、こういう歌詞でお願いしますとtowanaに依頼しました。

-いつも歌詞を手掛けている林 英樹さんではなくて、towanaさんに書いてもらいたいというのもあったんですか?

5周年の書き下ろしの新曲はtowanaに書いてもらおうと思ってました。その布石として、3rdアルバム『World Atlas』(2018年3月リリース)のときに「ユーレカ」という曲で歌詞を書いてもらっていて。それがすごく良かったので、これは大丈夫だなという感じでした。

-あのときは試しに書いてもらうというか、どのくらい書けるのかなっていうのもあったんですね。

そういう意図も少しありました。今だから言える話としては、3rdアルバムを作っている時点で、そのときは具体的にベスト・アルバムを作るというのはなかったですけど、5周年の曲を作ろうと思っていて。その歌詞は、今までは全部は林君だったけど、これからの新機軸みたいなものを出すという意味合いでも、メンバーでヴォーカルのtowanaに、fhánaの中からの視点で、5年間を総括した歌詞を書いてもらいたいというのがありきでした。その伏線として、3rdアルバムでは「ユーレカ」を書いてもらいましたね。

-「STORIES」は短い曲の中に、これまでとこれからがちゃんと詰まった歌になりましたね。

そうなんです。例えば"言の葉"という言葉が使われているとか、いろいろfhánaを象徴する言葉も歌詞に入っていて、ちゃんとfhánaの歴史を総ざらいしつつも、大げさじゃないというか。サラッとしているんですよね。そのサラッとしているのがいいなっていう。

-軽やかないい曲だし、ちょっとEDM感もありつつ、でもギター・サウンドとしての面白さもある。全員の持ち味が生きている曲でもありますね。最後の最後でメロディが上がっていく、この感じもまたいいなと思いました。完結しない感じ、続いていく感じもさりげなく入っていて。

曲調や曲においても、なるべくシンプルにしたいなというのはあって。具体的にこの曲を作り始めたのはベスト・アルバムの話が動き出してからなんです。そうすると、やっぱり収録されるシングル表題曲はアニメの主題歌ということもあって、すごく情報量が多くて、めまぐるしい展開の複雑な曲が多いので、そことコントラストをつける意味でも、シンプルな曲がいいなというのはありました。内省的なちょっとアンビエントっぽいEDMサウンドの質感も取り入れながら、ギターもちゃんと入っていてという。そういう音像にしたいなというのもありました。

-アルバムのラストにいい曲が入って、次に繋がりそうなイメージもまた出てきたなと思いました。

この曲が作れて、まだまだ面白そうだなというのは改めて思ったというか。この「STORIES」の歌詞は、言葉のひとつひとつ、繋がりも全部含めて必然性があって、メロディもこうじゃなきゃいけないという流れみたいなものがあって、それに対してこうじゃなきゃいけない言葉が全部ハマっていて、かなり研ぎ澄まされた、刀のような曲になったなと。