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INTERVIEW

Japanese

WOMCADOLE

2018年04月号掲載

WOMCADOLE

Member:樋口 侑希(Vo/Gt) 古澤 徳之(Gt/Cho) 黒野 滉大(Ba) 安田 吉希(Dr)

Interviewer:沖 さやこ

-『今宵零時、その方角へ』の主人公を言葉にすると?

樋口:こいつ、どうしようもない奴なんですよ! ほんまに。カスみたいな奴(笑)! ある程度強い人間というか、俺みたいにヒョロヒョロした奴。そういう内気な奴は抱えている葛藤や怒り、喜びをあまり口に出せないと思うんですよ。ただこの13曲は俺がそういう奴らの代弁をした......というわけではなくて、このアルバムを聴いた(人生に)迷っている人に"いま進んでいる道が正しいんじゃないか"と思わせたかった。これがアルバムのタイトルの由来にもなってるんですよ。

-"今宵零時、その方角へ"というタイトルですか。

樋口:まず"今宵零時"というのは時間と方角の意味、どちらにもかけていて。"零時の方角"というのは正面を指すじゃないですか。だから"どこに向かうのも正しい"という意味を持たせてます。"迷うな。いまが正しい。そのまま行け! 行け! 行けー!"っていうことですね! どうですか、このタイトル!

安田:レコーディング終わってみんなで焼肉屋さんに行ったとき、樋口に"タイトルの意味は恥ずかしいからLINEで送るわ"と言われてポンと送られてきたんですけど、結局樋口がお酒入ってテンション上がったあと、実際口頭でいまと同じことを伝えられました(笑)。

-ははは(笑)。前回のインタビュー(※2017年9月号掲載)でも"誰かの光になりたい"とおっしゃっていましたが、その新しい方法論なのかしら。

樋口:迷っている子がいるなら、いま進もうとしている道を信じてほしい。"俺でもできたから大丈夫だよ"という投げ掛けの意味合いは、めちゃくちゃ強いっすね。「アオキハルヘ」はバーン! と照らした感覚があったんですけど、今回はロマンチックな月明かりや弱めの光とか......それで道しるべになればいいなって。強烈な光を放ってへんかもしれへんけど、この小っちゃい光が、小っちゃい破裂が、あなたにとってでっかいものであったら嬉しいし。俺らはそういう存在でありたいっすね。

-星だって、夜でないと見えないですしね。

樋口:そうっすね。みんながみんなにパーン! と光を発射するんじゃなくて......それこそフル・アルバムなんて、いろんな曲でいろんなことを思われないといけないじゃないですか。全曲通して聴いたことで、聴いてくれた人それぞれが感じる光やったり、スピード感であったりは大切にしてほしいし、大切にしたい。それをしっかり作れました。

-樋口さんは前回お話をうかがったときに"このバンドで音を出すことが「好き」ではなく「愛」に変わった"とおっしゃっていましたよね。それは今回のソングライティングに反映されていますか?

樋口:"遊び心が増えた"っちゅうのが、まさにそれやと思うんです。自分ひとりの作品ではなく、言うてしまえばセッション。WOMCADOLEという"遊び"がこのアルバムでできて――それがほんまに"愛"やと思ってるんです。もちろん好きは好きなんやけど、これは真心でやってる遊び。そういう感覚がすごくあります。

-先ほど"楽曲の中に樋口侑希やWOMCADOLEが出せてると思う"とおっしゃったのにはそういう理由があると。

安田:ひとりの主人公のいろんなシチュエーションがあるアルバムになったのは、曲調も影響してるんじゃないかなと思うんです。1本芯はあるけれど、サウンド的にはいろんな方向を向いている気がしていて。自分の中になんとなく"WOMCADOLEドラム感"というのがあって、いままではそれを目指してきたんですけど、今回は"この曲は俺の好きなあの曲に近いものを感じるから、その要素を取り入れてみようかな"とほかからヒントを得て、そこから自分なりに消化して当てはめていくことが多くて。そういう意味でも遊べてるし、セッション的なところはある気がしています。自分のドラムが遊べたのは、樋口の作った曲自体がラフやったからやと思う。

黒野:樋口が曲を上げていくたびに、俺もそれに対して勝手に夜っぽいフレーズというか、WOMCADOLEではあんまりやらない、ちょっと気持ち悪いベース・ラインを作ったりしていて。それで最後にアルバム名を教えてもらったときに、"おっ。俺意外とやるやん!"と思って(笑)。(お互い)口にせんとも意思疎通できてたんかなと思いましたね。

古澤:最近はライヴでも制作でも、自分から"エモーショナル"というものを作りにいかなくなって。なんせ僕らはライヴが多いんで、そのとき感じたエモさみたいなものを出せるようになって――そのスタンスが"愛"というものに変わってきたというか。ライヴも制作もリラックスして臨めるようになったんです。ちょっと自分の世界に入ったときに、ほかのメンバーを見て、そこから刺激を受けて......どんどんピラミッドみたいに重なっていって完成していく。そういうふうに変わったなと思います。

-そうですね。『今宵零時、その方角へ』は新しい試みもたくさんあったので、このバンドはまだまだこれから面白くなるんだろうなと思うアルバムでした。いい意味で未完成なので。

樋口:進化をやめたら終わりなんでね。なんせ俺らは化けモンなんで! 化けモン!

安田:"人間なんです"ってタイトルの曲作っといて"俺らは化けモン"て(笑)。