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INTERVIEW

Japanese

0.8秒と衝撃。

2015年03月号掲載

0.8秒と衝撃。

Member:塔山 忠臣 (最高少年。) J.M. (唄とラウド。)

Interviewer:天野 史彬

-今って、音楽の消費速度が速いじゃないですか。音楽が、すごくインスタントなものになっている。ハチゲキの新しいモードは、それに対するカウンターにもなりますよね。

塔山:そうですね。前までだと、70年代のパンクみたいなカウンターを当てたかったんですよ。でも今は、方向性的にはTHE STONE ROSESとかTHE SMITHSとか、もっと昔でいったらTHE BYRDSみたいな感じというか。言うなれば、ある種のメランコリーでカウンターを当てたい。昔の日本のフォークもそうだったと思うんですよ。たとえば井上陽水の『氷の世界』とか。日本におけるパンクって、フォークだったんだろうなって思うんです。次のアルバムには、そういう世界観は入ってると思う。キュンキュンすると思いますよ。初めてですよ、レコーディングしていてエンジニアとこの人(J.M.)に"歌うまいんだね"って言われたの(笑)。

J.M.:塔山さん、次作の話ばっかり(笑)。

塔山:いやいや、そうだけど、「ジャスミンの恋人」と繋がってるんだって。"メランコリーってパンクなんちゃうか?"って、気づきだしたころの曲なんですよ、「ジャスミンの恋人」って。今は、ふたりでそこにどっぷり浸かりながらやってますね。ライヴのメンバーもビックリすると思うんですよ。アコギの弾き語りでもライヴできるぐらいだけど、全然バラードじゃない、ガッツガツの曲が入ってますから。今までの中で1番いいアルバムになると思う。

-"メランコリーがパンクである"っていう部分をもうちょっと掘り下げたいんですけど、今、名前を出してもらった井上陽水、THE BYRDS、THE SMITHS、THE STONE ROSES......彼らに共通するパンクさって、具体的に言うと、どういうものだと思います?

塔山:たとえばUKの話をすると、SEX PISTOLSとかTHE CLASHとかTHE DAMNEDとかって、パッと聴いて"なんか怒ってんな"ってわかるじゃないですか。パンクって言葉からイメージするような、"革命的で、それまでのオールドスクールなロックを侮辱したんだよ"っていう感じが、彼らの場合はサウンドでわかる。でもTHE SMITHSとかTHE STONE ROSESって、"フォーク・ロック"って言われてもしっくりくるぐらい、サウンドではパンクってわからない。でも姿勢自体は、Morrissey(※THE SMITHS/Vo)はJohn Lydon(※SEX PISTOLS、PIL/Vo)にも負けてないぐらいのパンクで、辛辣なメッセージは曲の中に入ってるんですよね。だから、決してサウンドじゃないというか。昔、誰かが書いてて、すごく納得したんですけど、"THE BLUE HEARTSが好きだからって、THE BLUE HEARTSと同じ音を出しているバンドをパンクだと思わない"みたいな。パンクは電子音でもできることだし、実際、KRAFTWERKはパンクだと思うし。パンクって音じゃないんですよ。メロコアをパンクだとは別に思わないし。僕の持論があるんですけど、GREEN DAYは好きだけど、他の奴らは嫌いなんです。

-うん、すごくわかります。

塔山:GREEN DAYは好きなんですよ。でも、GREEN DAYが作った方法論を"これウケるじゃん"って感じでやってる奴らが嫌いなんです。そういう意味でのパンクなんですよね。だって、泉谷しげるだって、弾き語りだけどパンクじゃないですか。あのおっさんがパンクじゃなかったら何がパンクなんですか(笑)。

-たしかに(笑)。僕が思ったのは、日本の昭和のフォークにしろ、THE STONE ROSESやTHE SMITHSにしろ、彼らのパンクさって、すごく普遍的というか、今の若者たちにも響くものだと思うんですよ。それは彼らが、聴いている人たちの心に寄り添う音楽を鳴らしていたからなのかなって。それこそTHE SMITHSやTHE STONE ROSESは、当時、サッチャー政権の支配下にあったイギリスで、虐げられて生きづらさを感じていた若者たちにとっての居場所を作ったわけで。

塔山:うん、うん。ただ僕らの音楽は、聴き手にとっての救済の場所とか、オアシスであって欲しくはないんです。それでも、"それで全然合ってるから、大丈夫やって"っていうことぐらいは言ってやりたいというか。"これって常識外れかな?"とか悩んでることも、意外と大丈夫なことなので。"入ってくる情報だけでビビらんでもええやん"っていうところを刺激したいんですよね。"傷ついたんだね、こっちにおいで"っていう感じではなくて。そういうのは好きじゃないのでね。それこそTHE SMITHSのライヴみたいに、一緒に肩組んで歌えるようなものにしたいんですよね、僕らの音源やライヴも。

-うんうんうん、わかりました。「ジャスミンの恋人」って、ハチゲキが持っているメロウな要素とダンサブルな要素が、すごく気持ちいい地点で融和している曲ですよね。音楽的にはどういうものを目指して作っていたんですか?

塔山:曲って、作り出したらわかんないんですよ。僕は"U2のこのアルバムの雰囲気を狙った"みたいな作り方が好きなんです。例えば、THE SMITHSが『Meat Is Murder』を作ったとき、彼らは自分らにとっての『Revolver』(※THE BEATLESの7thアルバム)を作ろうとしていた、みたいな話があるじゃないですか。目指すべき場所があって、でも作り出したら違う方向に行って、違う方向に行ったら行ったで、カッコいい方向に行けてた、みたいな。そういう意味で、「ジャスミンの恋人」を書いてたときに1番聴いていたのは、StingとかTHE POLICEなんですよ。THE POLICEのライヴ映像を観たときに、ドラムがすごくいいなと思って。Stewart Copelandって人なんですけど。POLICEって、お洒落で、当時のSEX PISTOLSとかから馬鹿にされるぐらいのバンドだったんですけど、でもやっぱり、彼らもパンクなんですよ。すごい写真があって。THE POLICEがNHKの公開録画に出たときの写真なんですけど、ドラムのタムタムの所に"FUCK OFF YOU"って書いてあるんですよ(笑)。NHKですよ? しかも、そこに当て字で"おま○こ"って、ひらがなで書いてるんですよ(笑)。

-あはははははは!

塔山:こいつ最高だなって思って(笑)。たぶん、"これって日本語でどういう意味?"って訊いたんでしょうね。教えるほうも教えるほうですけどね(笑)。でも、それをやっちゃってる感じがカッコいいんですよね。しかも、それでお洒落なドラムを叩いてるんですよ。THE POLICEのドラムって、ほんまのレゲエの人が見たらきっと腹立つぐらい、お洒落なレゲエなんです。白人が解釈したレゲエなんですよね。それがカッコよくて。そういうのを目指して作り始めましたね。