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Academic BANANA 齋藤知輝の"大切なことはすべてラブソングが教えてくれた。"【第9回】

2025年11月号掲載

Academic BANANA 齋藤知輝の"大切なことはすべてラブソングが教えてくれた。"【第9回】

9回目です!Academic BANANAの齋藤知輝です。『大切なことはすべてラブソングが教えてくれた。』では、僕が素敵だな〜と思ったラブソングを毎回2曲紹介させていただきます。是非楽曲を聴きながら読んでみてくださいね!
ちょっと待って!秋どこいった!?先週まで半袖だった気がするんですが一気にクローゼットの奥から冬服と極暖ヒートテックを取り出しました。もうこうなったら今回は冬曲紹介するしかないでしょ!という気持ちをどうにかこうにか押し殺しながら、雨に溶けてしまいそうな金木犀の香りを頼りに、今回はこの季節にぴったりなラブソングを紹介します。

1曲目は山崎まさよしさんの「One more time, One more chance」。僕が高校生の頃、SNSというものはほとんどなく、音楽や映画との出会いはテレビやラジオ、雑誌。そしてなにより1番効力があったのが人伝いに聴く、"どうやらすごいいいらしい"という噂。まさにその噂で、『秒速5センチメートル』というアニメーション映画が超やばいということは見る前から確信していました。そしてその主題歌の「One more time, One more chance」も超やばいと。なんだかとんでもない大恋愛ととんでもない大失恋を自分もしたかのような気持ちになる。切なくて孤独で、でも誰かを想っていて温かい。特に僕が好きな歌詞は2番。"寂しさ紛らすだけなら 誰でもいいはずなのに 星が落ちそうな夜だから 自分をいつわれない One more time 季節よ うつろわないで One more time ふざけあった 時間よ"。"季節よ うつろわないで"っていう歌詞が、ただ季節が変わっていくことや、時間が過ぎ去っていくことへの悲しさだけじゃなく、季節と時間と一緒に街の風景や人のこころのさままでも変わっていく寂しさを教えてくれたと思っています。ちなみに『秒速5センチメートル』実写映画が公開中なので是非劇場へ。




2曲目はスピッツさんの「楓」。"さよなら 君の声を 抱いて歩いていく"。この一行を聴くだけで、胸の奥が静かに締めつけられる。スピッツさんの「楓」は、恋の終わりを悲劇としてではなく、受け入れる強さを描いたラブソングだと感じる。山崎まさよしさんの「One more time, One more chance」が、まだ終われない想いを抱えたまま立ち止まり振り返る歌だとしたら、「楓」は手放す痛みを抱きしめて歩き出す物語。もし「One more time, One more chance」が想い続ける歌だとしたら、「楓」は想いを残して進む歌。どちらも愛の形で、どちらも正解なんだと思う。そして季節が巡って金木犀の香りに蘇るように、あの頃の誰かを思い出すこともまた、この時代の今日を生きていく力になるのかも。なんて思ったり。



山崎まさよしさんの「One more time, One more chance」、スピッツさんの「楓」、是非一緒に聴いてみてください。そしてAcademic BANANAの「白く」「金木犀」も一緒に聴いてもらえると嬉しいです。揺れ落ちる桜のスピードに追いつけない僕の想いが、また少しずつペンを走らせていつか手紙になって届く季節が。

Academic BANANA

2017年結成。フォーク、ブルース、ロック、ジャズ、ファンク、クラシック、フュージョン等、メンバーそれぞれが多様な音楽からインスパイアされることによって生み出される独自の楽曲を"ネオ歌謡曲"と名付ける。2023年10月に2ndフル・アルバム、2024年8月に2nd EPをリリース。来年2月14日にはチケット代"877"円のライヴ"Academic BANANA FAN THANKSGIVING 「FROM 877 TO YOU YOU」"を開催する。 ​