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INTERVIEW

Japanese

Academic BANANA

2024年08月号掲載

Academic BANANA

Member:齋藤 知輝(Vo) 萩原 健太(Ba)

Interviewer:吉羽 さおり

齋藤知輝、萩原健太の2人体制となって昨年10月に2ndフル・アルバム『Love Letter』をリリースし、多彩なジャンルのハイブリッドによる"ネオ歌謡曲"をより自由に広げているAcademic BANANA。8月28日リリースの2nd EP『BLUE JEANS』は夏をコンセプトに、淡く切ない夏の思い出、記憶や、リアルでハングリーな今の思い等、全7曲が並んだ。アカバナ(Academic BANANA)らしい饒舌な音楽性や歌心あり、また全編ラップによるファンクでロックな新機軸もあり、コンセプト作品という縛りはあるが貪欲に攻めた内容に、今の2人の自由度の高さや創作欲が窺える。

-EP『BLUE JEANS』はタイトル通り、爽やかさや若者らしさ、またジーンズから想起する反骨精神等が様々な曲で表現された1枚となりましたが、今作はどのような感じで制作が進んでいった作品ですか。

齋藤:毎年、配信だけじゃなくCDとして作品を出したいなという思いがあるんですけど、一昨年は1stフル・アルバム『SEASON』を、昨年は2ndフル・アルバム『Love Letter』を出して、今年はどうしようかという話のなかで、コンセプトを持ったEPを作ろうとなったんです。夏にフォーカスをして、じゃあ自分にとっての夏ってなんだろうと考えたときに、"Blue Jeans"という言葉が浮かんできて。そこからEPの全体像や、こういう曲を書いていこうというテンポ感とか楽曲の雰囲気をリスト化して、いろいろと曲を作っていった感じでした。

-そこでまずできたのがタイトル曲「Blue Jeans」ですか?

齋藤:最初にデモを上げたのは「アオハル」でしたね。いきなり夏の終わりみたいな感じの曲を作っていたんですけど(笑)。

萩原:2曲目に作ったのが「Blue Jeans」でした。

-「アオハル」はリリカルなポップスで、夏のいろんな光景が鮮やかに浮かび上がる曲ですが、ベースには切なさが宿ってますね。

齋藤:なんか夏になると青春映画観たくならないですか(笑)? 自分が小さい頃に過ごした夏のこととか、学生時代や恋愛のこと、大人になってからのこともそうですけど、そういう夏の出来事を詰め込んだ歌詞ではありますね。夏って、いろいろなことを感じるなって思うんですよね。また今日も暑いのかっていうグダ~っとした空気もありつつ、でもスカッと晴れているからよし! って気合が入るところもあるし。甲子園球児を見て、いいなぁって思ったり、夏祭り一緒に行く人いないなとかもあれば、あのときはあの子と夏祭りに行ったな、小さい頃は家族と行ったなとか。いろんな思い出や感情が湧く季節だと思うんです。

萩原:イベントが多いですよね。子供のときは夏休みっていう一番長い休みがあるから、よりいろんなイベントがあったし。

齋藤:無限に感じたもんね、子供の頃の夏休みって。自分にとって夏って特別で、バンドをやってて初めて東京にライヴで来たのも夏だったんです。それこそ健太と出会ったのも夏だったし、生まれも夏なので、特別なんですよね。

-そのエモーショナルな夏に対して、1曲目でタイトル曲の「Blue Jeans」ではまさに大人になった今の、ナウな気持ちがリアルに描かれました。

齋藤:「Blue Jeans」では今までのアカバナにない歌詞を書きたいなって思っていたんです。恋愛でもなければ、自分の日常みたいな部分を書きたいなって。これは夏の始まりですよね。僕、毎朝起きるのが本当に苦手で(笑)。起き上がってしまえば大丈夫なんですけど、起きるまでの戦いがあって。自分にスイッチを入れるためにもこれを1曲目に入れたいなっていうのはありましたね。

萩原:齋藤は起きたらすごい速いよね。起きて10分くらいで家を出られる。

齋藤:しかも夏ってジーンズ履いてTシャツ1枚着たら外に出れるじゃん?

-起きたらすぐに戦闘態勢になれるという。

齋藤:そうです。起きるまでが葛藤なので、僕の場合は。

-この曲はファンキーなサウンドに乗せて、全編がラップで歌われるというのもアカバナでは新しいものですね。

齋藤:新しいことに挑戦したかったんですよね。アカバナが2人体制となって、健太がベーシストなので、ベースが醸し出すグルーヴ感を活かせる曲を作りたくて、まずベースから始まるというのは自分のイメージにありました。ラップは、今一緒に合同会社ThunderboltをやっているT-iDがラッパーなので、ディレクションで入ってもらってしごいてもらって。

-ハマってましたよ。ラッパーではない、メロディを紡ぐ人ならではの感覚もあって、サウンドともマッチしています。

萩原:でも大変でしたよね(笑)。

齋藤:めちゃくちゃ大変でした。

萩原:普段やってないことなので、ノリの面でもなかなか難しいところがあって、デモ段階で上手くハマらないというので。それでT-iDに助けを求めて。

齋藤:特訓、特訓でしたね。勉強になったのが、ただ韻を踏むとかただラップをするとかではなく、どういう構成でやったら音楽としてまとまるのかに向き合えた感じで。普段ラップとかも聴くんですけど、実際にやってみて教えてもらってわかることも多かったですね。ライヴのことも考えると、これは言葉を詰め込みすぎていてお客さんも疲れちゃうから、間、スペースを作ったほうがいいとか。

-ラップだからといって言葉を詰め込めるわけじゃないと。

齋藤:最初は、ラップだからこそできるかな? って、言いたいこと全部言っちゃおうと言葉を詰め込んでいたんです。そしたら健太から"ごちゃごちゃしちゃってるから、もうちょっと整理したほうがいいんじゃない?"と言われて。T-iDに"こういうふうに言われているんだけどどう思う?"って話をしたら、"それはたぶんこういうことだと思うよ"って説明してくれて、改めて考えることができたし、挑戦するって楽しいなと思いましたね。

-全編がラップになるということで、サウンド面ではどういうところを意識していますか。

萩原:この曲はバンド・サウンドを大事にしていますね。最初にデモ段階では打ち込みとかもやってはいたんですけど、どうしてもノリや雰囲気を出せないということで、サポートの方々にも協力していただいて、スタジオである程度の完成形まで作っていった感じで。

齋藤:あとはレコーディングの前に1回ライヴでやったのはデカかったね。

萩原:ライヴをやる前と後では全然違って。今の形になったのはライヴでできたことが一番でしたね。実際にやってみて、お客さんの反応を見て、こういう感じでノレるんだっていうのが体感できたのが大きかった。

-はい、跳ねすぎず、でも跳ねたいっていう感じのアンサンブルのヒリヒリ感、躍動感がいいですよね。

萩原:本当にそうですね。あえて跳ねずに歌でノせてもらおうっていうのもあったんですけど、そうするとどうしても勢いが出なくなってしまうので。バンドとしては、これは跳ねすぎないほうがいいけど、跳ねようと。

齋藤:そこのバランスはめっちゃ考えたよね。

-この曲でEPが始まって、新たな感覚でグッと掴んでいく感覚がありました。先ほど夏のイメージとして"Blue Jeans"が出てきたということでしたが、齋藤さんが思う"Blue Jeans"が象徴するものはなんですか。

齋藤:どこにでも連れて行ってくれるという、乗り物のような感覚ですかね。地べたに座ったっていいし、それこそホリエモン(堀江貴文)さんとかがジーンズで仕事をする姿がメディアに映るようになって、社会も変わっていく感じもありましたしね。そういう自由さがありますね。

-続く「CHIANTI」もグルーヴィですが、こちらは叙情的で大人の雰囲気がある仕上がりです。

齋藤:これはアカバナらしさというか。ファンの方が思う"これってアカバナだよね"っていうサウンドを、よりハイブリッドに進化させて作りたいと思ったのが「CHIANTI」でしたね。僕はこの曲がお気に入りで、歌詞がAメロ、Bメロではわりとシビアなことを歌っているのに、サビがバカっていうか──。

萩原:はははは(笑)。確かに。

齋藤:サビで急に"甘いKissをしようよHoney"とか言っちゃうっていう(笑)。キャンティを飲んで、酔っ払ってるからこそじゃないですけど、気取らずいきたいなっていうのがありましたね。

萩原:サウンドもサビとサビ以外では温度差があるんですよね。サビはブラスが入ってきたりして、カラッとしてる。

齋藤:Aメロ、Bメロはどことなく切なさがあるんですけど、サビは酒飲んで楽しいな、楽しく帰りたいなっていうところが出てますね。あとこの曲はキーボード・ソロが長い!