Japanese
Academic BANANA
Skream! マガジン 2024年11月号掲載
2024.09.28 @横浜MMブロンテ
Writer : 吉羽 さおり Photographer:小山田祐介
8月28日に2nd EP『BLUE JEANS』をリリースしたAcademic BANANAが、"Last Summer Party"と題した主催イベントを9月28日に横浜MMブロンテで開催した。バンドにゆかりのあるゲストたち、Kradness、松本明人、リベラル a.k.a 岩間俊樹(SANABAGUN.)、T-iD、そしてダンサーとしてTAKAHIRO、たぬき、渡辺謙典が迎えられ、"Last Summer Party"という名にぴったりの一夜となった。今回のライヴは対バン形式のライヴではなく、Academic BANANA――メンバーの齋藤知輝(Vo)と萩原健太(Ba)、川口ケイ(Key)、白井 岬(Gt)、直井弦太(Dr)がホスト・バンド、いわば箱バンとなってゲストたちを迎え入れるスタイル。次々にゲストが登場する華やかな"ショー"の趣となった。
"「Last Summer Party」へようこそ。最後まで楽しんで帰ってください"という齋藤の言葉でスタートしたライヴは、まずはAcademic BANANAの「Tokyo Dada City」からスタート。ファンキーなサウンドに観客の手拍子が起こり、続くグルーヴィな「恋をしよう」で盛り上げていく。そして3曲目にして早くも最初のゲスト Kradnessが登場した。"歌ってみた"への動画投稿やシンガー・ソングライターとして活動し、齋藤と共にゲーム"ブラックスター -Theater Starless-"でシンガーも務めるKradness。ミドル・チューン「Diorama」から「UNLOCKED BAROQUE」、そして齋藤からのリクエストで"思い出深い曲を2人で"(Kradness)と"ブラックスター(-Theater Starless-)"の曲から「銀河鉄道を探して」を披露した。たくさんの星が瞬く映像と共に2人の繊細なヴォーカルが響く。
続いてステージに登場したのはリベラル a.k.a 岩間俊樹。挨拶代わりに「ONE」を披露。そして改めて自己紹介をするとしなやかなバンド・アンサンブルに乗って「ゆとり」へと続き、アドリブ的にバンド演奏を繰り返してステージとフロアの熱を上げていく。今回のイベントでは異色と思えるラッパー 岩間だが、その出会いについては齋藤がもともとSANABAGUN.、岩間のファンで、偶然古着屋で出会い、その後これまた偶然駅で再会した勢いで飲みに行ったのが始まりという。そして今回自らが主催するイベントで、念願の共演となったのは大きなことだろう。さらに岩間は、コロナ禍での経験や芽生えた思いを綴った「Beautiful Day」、そして「夢の最中」でステージを締めくくった。
EARTH, WIND & FIREのカバーであり、この日のスペシャル・バージョンにアレンジされた「September 28」に乗せ、ダンサー TAKAHIRO、たぬき、渡辺謙典が躍動的にステージを彩り突入した中盤は、ダンサー3人とラッパー T-iDをゲストに"ブラックスター"の「影炎」でスタートした。そして哀調のピアノと心の内をこぼすような齋藤のヴォーカルで聴かせるEP『BLUE JEANS』からの1曲「藍哀傘」が続く。このバラードのストーリーをダンサー たぬきが傘を使って表現するドラマチックなステージだ。そこに続いたのは齋藤が"松兄"と呼ぶ、松本明人が。ギターを抱え登場し、「ココロノママデ」を披露。さらにコーラスに齋藤が加わって「沈まぬ月」、そして改めて齋藤が"松兄!"と紹介すると松本は、"松兄ってあなたしか呼んでないですからね。初対面で呼んでくるんですよ?"と語る。とは言いながらも、続く「よういわんわぁ」で息ぴったりの演奏で魅せる等、良き兄弟ぶりも見せる。そしてここからは、T-iDと齋藤による合同会社Thunderboltが登場した。2022年に自分たちの活動の拠点としてマネジメントや制作を行うこの会社を立ち上げ、また合同会社Thunderboltとしても曲をリリースするという、なかなか珍しいユニットだ。そのアルバム『社歌』から「THUNDER!!!」と「LOST MY WAY」を披露、さらにT-iDの曲で松本明人をフィーチャリングした「One with Nature (feat. 松本明人)」を演奏すると、再び『社歌』から「LIFE」をプレイ。たぬきとTAKAHIROも加わって後半へと繋いでいった。
後半はホストであるAcademic BANANAが中心だ。EP『BLUE JEANS』から「CHIANTI」、そしてタイトル曲「Blue Jeans」を披露する。今回はEP『BLUE JEANS』のリリース・パーティーとも言えるイベントだが、EPでの新曲披露に加えてゲストたちの曲もAcademic BANANAアレンジで聴かせるのは、バンマスである萩原はじめバンドにとってはかなりハイカロリーなステージだと思うが、スムースに曲を進め、またそれぞれが楽しく音を掛け合うようなアンサンブルだったのは印象的だ。齋藤が"突き刺さるような歌声"と称賛するKradnessを迎えて"ブラックスター"のカバー「虹の彼方へ」、また松本明人を迎え同じく"ブラックスター"のカバー「Caprice of love」を披露すると、ラスト・スパートで昨年リリースしたフル・アルバム『Love Letter』からメロウなピアノとギターが歌を縁取る「夕暮れに染まった手紙」を、2019年のEP『ESCAPE』から「ミッドタウン」、そして最新EP『BLUE JEANS』から爽快感が抜群の「風のゆくえ」の演奏で、会場にも爽快な風を吹かせていった。ここで改めてゲストたち、齋藤いわく"音楽を通して出会えた仲間"への感謝を伝えると、観客に向けて"今年の夏はこれで終わるけど、また会えるよね? 止まらないから"と言って、ラストに「アオハル」を披露した。途中、この日への想いが湧き上がったのか、齋藤が涙を堪えるようなシーンもあったが、観客はその分も盛り上げ、歌を口ずさんで、最後はラララのコーラスが会場を包んだ。切なくも美しい夏の記憶を綴った「アオハル」の歌のように、この"Last Summer Party"もまた訪れた人の夏の1ページに刻まれた、そんなライヴとなった。
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