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LIVE REPORT

Japanese

T-iD

Skream! マガジン 2022年11月号掲載

2022.10.02 @横浜MMブロンテ

Writer 中尾 佳奈 Photo by 小山田祐介

子役としてデビューし、現在も舞台"『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rule the Stage"への出演が決定するなど活躍を続けている俳優、井出卓也。その傍ら"Takuya IDE"としてアーティスト活動も行ってきた彼が、"T-iD"へと名義を改め1st EP『New Attitude』をリリース。同作を引っ提げ、Academic BANANAとのツーマン・ライヴ"雷祭"を開催した。今年、T-iDと齋藤知輝(Academic BANANA/Vo)はともに"合同会社Thunderbolt"を設立。そんなふたりがマイクを握るAcademic BANANA × T-iDのコラボ曲「THUNDER!!!」で、この"雷祭"は幕を開けた。

本ライヴを象徴するテーマ・ソングとも言える1曲で会場を温めると、まずはAcademic BANANAのステージがスタート。ジャジーな雰囲気の「抱擁」、歌謡曲テイストの「Tokyo Dada City」に、久々の披露となった温かなポップ・ソング「コーヒー」で、アカバナ(Academic BANANA)らしい艶やかなJ-POPの世界を繰り広げていく。MCで齋藤から"今も変わらずこの街で戦っている"と"東京"という街への思いが語られると、その強い思いを乗せたピアノ・バラード「東京」へ。そして齋藤がアコースティック・ギターを持ち、より華やかさを増したサウンドで、8月にリリースされた1stフル・アルバム『SEASON』から「残り香」、「共犯者」を披露した。さらに同作より夏の曲「サイレントラブ」と秋の曲「金木犀」で季節の移ろいを感じさせると、最後は「Feel Like Sunny」を観客のクラップとともに会場一体となって奏でた。色気溢れる甘い歌声とクオリティの高いシティ感漂うバンド・サウンドが、バック・スクリーンに映し出された夜景とも相まって、よりドラマチックに横浜の夜を盛り上げた。

齋藤に迎え入れられT-iDが再び登場すると、和やかなムードでMCへ。"合同会社Thunderboltです。"とふたりで深々と頭を下げ"企業説明会"のような挨拶で笑いを誘ったり、T-iDが"もう1個閉めてほしいな"と齋藤の胸元の開いた衣装にツッコミを入れたりと、普段の関係性が窺える掛け合いで場を和ませた。

そして"せっかく「雷祭」なので"とスペシャルなコラボが実現。アカバナの楽器隊をバック・バンドに迎え、T-iDのステージがスタートしたのだ。"Takuya IDE"名義でリリースした楽曲「Black Sheep」、「Outer Heaven」を進化した強烈なバンド・アレンジで投下すると、会場は轟音に包まれ一気にドープなヒップホップの世界に。ガラリと変わった雰囲気に圧倒されると同時に、アカバナメンバーの普段の演奏とのギャップにも度肝を抜かれる。T-iDから"メタルみたいにしたい"という依頼を受けてこのアレンジを作り上げたようで、アカバナメンバーも普段は出せない激しいサウンドを生き生きと鳴らした。続いて、バンドの繊細なプレイが映える楽曲をと披露されたのは「Train」、「Gift」、「特別な星」。「特別な星」では、少し落ち着いたフロアに心揺さぶるストレートな言葉とエモーショナルな演奏が響き渡り、この5曲連続の贅沢なコラボを締めくくった。

続くMCでは"T-iD"へと名義を改めた経緯について触れ、原動力となった"ラップが好き"というまっすぐな思いを口にする。そして"絶対この1曲で始めたかった"という、ヒップホップ愛が詰まった1st EPのオープニング・ナンバー「歌の神様」へ。固い韻とともに自身の経験を赤裸々に綴ったリアルさが刺さるこの曲は、"T-iD"の自己紹介であり決意表明でもあった。そこから、飾らない言葉が心に染み入る「快晴」でフロアを揺らすと、続く「STAGE2 feat. KiDD」ではKiDDが登場。さらにそのまま「Whatever」もふたりで披露し、社会へ一石を投じる鋭いリリックはKiDDの加勢によりいっそうパワーを増して届けられた。そして「この先」、「No time to spare」と1st EPの全楽曲を曲順通りに披露し、次なるステージに立つ彼の最新版を存分に見せつけた。

クライマックスに向けAcademic BANANAが再びステージに上がると、和気あいあいとしたトークから、この日のために作ったというコラボ楽曲「180°」、「LIFE」を初披露。アカバナが作り出す甘美な世界観とT-iDの魂のラップが見事に融合した2曲に、"合同会社Thunderbolt"としての作品リリースへの期待も高まる。そしてアカバナの1stフル・アルバム『SEASON』より、彼らがともに音楽を作るきっかけになったというバラード曲「マーガレット(feat.T-iD a.k.a Takuya IDE)」でしっとりと本編のフィナーレを飾った。

アンコールを受けまず登場したのは、T-iDと齋藤。軽快なトークとともにバンド・メンバーをひとりひとり呼び込むと、"ぶち上がっていいよ"と観客を煽り、オープニングで披露した「THUNDER!!!」を再びかます。最後はフロア全体が手を挙げ飛び跳ね、バックに映し出された光る稲妻を背に、まさに祭りのような盛り上がりを見せてこの"雷祭"は幕を閉じた。

雷とは、雲と雲との間や雲と地上との間の放電によって、光と音が発生する自然現象のこと。T-iDとアカバナ、ヒップホップとJ-POPがぶつかり合い、その間に発生した雷のごとく轟く音楽は、ついにリスナーのもとに放たれた。コラボ満載のスペシャルなセットリストに、終始笑いの絶えない和やかなMC。T-iDとアカバナのコラボレーションの妙が遺憾なく発揮され、まったく異なる音楽性だからこそ生み出せる新たな可能性に満ちた夜となった。


[Setlist]
■Academic BANANA × T-iD a.k.a.Takuya IDE
1. THUNDER!!!

■Academic BANANA
1. 抱擁
2. Tokyo Dada City
3. コーヒー
4. 東京
5. 残り香
6. 共犯者
7. サイレントラブ
8. 金木犀
9. Feel Like Sunny

■T-iD
1. Black Sheep
2. Outer Heaven
3. Train
4. Gift
5. 特別な星
6. 歌の神様
7. 快晴
8. STAGE 2 (feat. KiDD)
9. Whatever
10. この先
11. No time to spare

■Academic BANANA × T-iD
1. 180°
2. LIFE
3. マーガレット(feat.T-iD a.k.a Takuya IDE)
4. THUNDER!!!

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