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INTERVIEW

Japanese

fhána

2016年05月号掲載

fhána

メンバー:佐藤 純一(Key/Cho) yuxuki waga(Gt) kevin mitsunaga(PC/Sampler) towana(Vo)

インタビュアー:吉羽 さおり

前作『Outside of Melancholy』から約1年、fhánaの2ndアルバム『What a Wonderful World Line』がリリースされた。towana(Vo)の切なくも憂いを帯びながら力強くエモーショナルな歌声で綴る、この素晴らしい世界。ピアノやストリングス、バンド・サウンドの重厚なアンサンブルで、明るく多彩なカラーで一気に染めあげていくようなfhánaサウンドは、昂揚感や多幸感に溢れている。今作は、そのパワーが突き抜けたアルバムだ。4人がここに込めた思い、『What a Wonderful World Line』というまっすぐな言葉が示すものとは何か、アルバムの制作背景をインタビュー。

-fhánaの濃いポップ性がうかがえるアルバムで、でも爽やかな風が通っている作品になっていますね。今回、アルバムのテーマはどんなものを掲げていたんですか。

佐藤:タイトルの"What a Wonderful World Line"は、"なんて素敵な世界線なんでしょう"と、今のこの世界を肯定しようというテーマでつけているんです。で、Louis Armstrongの、「What A Wonderful World(邦題:この素晴らしき世界)」という1960年代のジャズのスタンダード・ナンバーがありますが、この曲が作られたときはベトナム戦争の時代で、"世界は素晴らしい"と言い難い状況だからこそ歌われたもので。そこから何十年か経った2016年の今も理想とは程遠い状態だけど、だからこそこの世界を肯定しよう、じゃ、どういうふうに肯定したらいいんだろう?というのがこのアルバムのタイトルになっているんです。以前からよく言ってるんですが、疲弊していて(笑)。

-はい、以前のインタビューでもそういうお話がありましたね。

佐藤:最初のアルバムを作ったときにも、"疲れた"と何回も言ってましたけど、今回も本当に大変で。fhánaの規模が大きくなればなるほど、疲弊度は増していくのかもしれないんですけどね(笑)。前は、"疲れた"と言ってるだけだったけど、その疲弊自体をもはやコンセプトの中に織り込んでいったみたいな感じですね。

-といってもネガティヴな意味合いではないですよね?

佐藤:そうですね。だけど、頑張るにはどうしたらいいんだろうっていう。こうやって音楽を頑張って作っていって、何になるんだろうなということもよく考えているんです。仮にすごく人気が出て、たくさんの人が感動してくれて成功したとして、だからなんなんだっていう。音楽だけじゃなくて、人生とか、生や死に何か意味があるのかとか。もっと言えば、この世界が存在することに、何か意味があるのかということを考えていて。結論、意味なんてないと思うんですよ。もともと、そういうことを考えるのが好きなんですけど、そういう虚無感みたいなものから、アルバム作りはスタートしているんです。

-その"意味がない"というのは?

佐藤:それはたまたま、完全に解明されてないけど宇宙が生まれて、いろんな偶然が重なって、太陽と地球がちょうどいい距離だったから、生き物が生まれて。そこで生まれて死んでを繰り返して、文明が出てきては滅び、地球もそのうち滅ぶし、宇宙もそのうちなくなるし、先のことも前のこともわからない......ずっとそういうのが繰り返されていて。ひとつひとつに、意味なんてない。だからこそ、"そこに意味を与えるのは自分自身の意志なんだよ"という、一周回った希望みたいなものを表明したかったんです。

-なるほど。

佐藤:「What a Wonderful World Line」(Track.2)の歌詞に"分かりあえることなど望まない"と出てくるんですけど。人と人って、完全にわかり合うことは絶対にできないと思うんです。今は特に、過剰に表面的な共感を求めているというか、インターネットやSNSで何かを投稿して、"いいね"って共感して表面的に繋がり合ってますけど。それをひたすらやったところで、本当にわかり合うことはできないっていう。人と人とはわかり合えないんですよっていうのは普通に考えたら、不幸なことだけど。わかり合えるはずだという前提から物事がスタートすると、わかり合えなかったときに争いが起こりますよね。

-たしかに、それは問題のもとになりますね。

佐藤:なんでわかってくれないの?とケンカになるし、国と国だったら戦争になりかねない。それよりも"わかり合えないものなんです"という前提から始めて、それでもお互いに認め合ったり、共存できるように調整していくプロセスの方が大事だし、建設的ですよね、というメッセージもある。もっと深く考えていくと、仮に完全にわかり合うことができたらどうなるのかと考えると、それって他人と自分の区別がない、どこまでいっても自分ひとりしかいないような世界なわけで、孤独ですよね。わかり合えないからこそ、自分と自分以外の他者がいて、人は孤独じゃなくなる。もしかしたら傷つけ合うこともあるかもしれないけど、他者がいるからこそ孤独じゃないし、豊かに生きることができるという。そんな一周回った希望を伝えたかったし、自分もそれを求めていたのがこのアルバムの全体的なコンセプトですね。

-佐藤さんが話すようなことは、4人で共有したり、話題にしたりする内容なんですか。

yuxuki:今回、fhánaでずっと作詞を担当している作詞家の林英樹さんに依頼するときに、佐藤さんと林さんのメールのやりとりが、メンバーにも届くようになっていて。歌詞ができあがっていく過程を、みんなで見ていたんです。でも最初から今話していたように"こういうものです"というのではないんですよ。佐藤さんが"今、こういうことを考えているんだけど"っていうところから始まって、林さんとやりとりを重ねていくのを、一緒に追っていった感じです。