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INTERVIEW

Japanese

ドラマストア

2020年04月号掲載

ドラマストア

Member:長谷川 海(Vo/Gt) 松本 和也(Dr/Cho) 鳥山 昂(Gt/Key) 髙橋 悠真(Ba)

Interviewer:蜂須賀 ちなみ

関西発の正統派ポップ・バンド、ドラマストア。渋谷CLUB QUATTROでのワンマンは即日ソールド・アウト、昨年リリースのフル・アルバム『DRAMA STORE』が第12回CDショップ大賞2020"関西ブロック賞"を受賞するなど、勢いに乗っている彼らが、4thミニ・アルバム『Invitations』をリリースする。本作のテーマは"一緒に楽しむ"。リリース直後に始まる初のワンマン・ツアーへの招待状となるような作品を目指したそうだ。そんなテーマの背景や各曲のこだわりはもちろん、今バンドがやるべきことや"考えすぎないモード"の兆しについて、メンバー4人に語ってもらった。

-昨年夏のRhythmic Toy World、MAGIC OF LiFEとの3マンが、バンドにとってかなり重大な経験になったそうですが。

長谷川:そうなんですよ。なんとも言われへん敗北感を味わって。その日が"どういう姿勢でライヴに臨もうか"っていうのを改めて考えるきっかけになりました。

-敗北感というのは、何に対する、どのような敗北感ですか?

長谷川:何に対してやろ? ......実は僕、前のバンドをやってた頃に1回だけ音楽やめたいと思ったことがあって、それもリズミック(Rhythmic Toy World)と対バンしたときだったんですよ。当時のリズミックは、僕らにとって"自分たちよりもいい歌を書く人、且つ僕らと似たようなことをしているバンド"で、ライヴを観たとき"それなら俺らって存在意義あるのかな?"って考えちゃったんです。だから去年の8月のスリーマンのときも正直どこかで構えてたんですけど、一方で"いやいや、今はもう自信あるし"、"俺らならやれる"っていう気持ちもあって。で、実際ライヴを観てみたら、やっぱり先輩は思った以上にすごかったなっていう。"ポップはロックに勝たれへんのかな?"って思ったんですよね。

-そのとき、リズミックに感じた"ロック"というのは――

長谷川:お客さんを巻き込んで空気を作る力の強さですね。ただ、僕らもそうなりたいというわけではなくて。以前のインタビューでもお話ししたと思うんですけど、"ロックは伝えるものであり、ポップは共有し合うものである"という思想が僕の中には根強くあるんですよ。だから僕らは"わかるやつだけついてこい!"とは絶対に言わないし、ポップ・バンドだからそれでいいと思ってはいるんですけど、一方で、そう言ってしまえるロック・バンドはやっぱり強いよなぁと......。

-そもそもライヴハウスというのは熱いライヴをするバンドが最もカッコ良く見える場所であって、バンドが好きな人の中にはその"熱さ"を、ちょっと感情的な要素というか、泥臭さ、人間臭さみたいな部分に見いだす人が多いじゃないですか。

長谷川:わかります。

-で、そういうライヴをするのに向いてない自分たちにコンプレックスを感じたのか、あるいはライヴハウスという狭い世界ばかりを見ているインディーズ・バンド・シーンにフラストレーションを覚えたのかはわからないですけど、結果的に曲を磨く方向に進んでいったのがドラマストアというバンドだと私は解釈してて。

長谷川:たしかに僕ら、ロック・コンプレックスみたいなものはあるかもしれないですね。

松本:でも......ちょっと語弊があるかもしれないですけど、僕個人としては今、ライヴハウスにそれほど興味はないんですよ。

-もっと先を見ているということですよね。とはいえ、"あいつらバンドのくせにライヴは大したことないよな"って言われたら悔しくないですか?

松本:そうですね。その勝負から逃げるつもりもないんですけど。

長谷川:和也君の言った"ライヴハウスに興味がない"っていうのは――結局、ここがたまたまライヴハウスだったから今はロック・バンドに軍配が上がってるけど、このライヴがそのままテレビで流れたら、お茶の間のお母さんは"この人ら怖いわ~"って言うかもしれへんっていう話で。さっき言った"ポップはロックに勝てない"っていう話も、僕らとしてはそこに落としどころを見つけたんですよ。ただ、曲調の幅広さと同じように、ライヴにも幅広さがあってもいいんじゃないかとは思って。僕らは絶対"ついてこい!"とも"かかってこい!"とも言わないですけど、そういう僕らのまま、熱さのあるライヴをできるようになったほうがいいかなと思うようになりましたね。とはいえ、まだ全然答えは出てないですし、今も試行錯誤してる最中ですけど。

-なるほど。それで最初にMCのやり方を変えたそうですが、それはあまりにも流暢に喋ると器用に見えてしまう、だから情熱に欠ける、っていう話ですかね?

長谷川:おっしゃる通りです。今までは前もって(喋る内容を)決めておくタイプだったんですけど、トピックだけ決めて、あとはそのときの自分が感じたことをそのまま言うように変えて。

-演奏面では何か変化はありましたか?

髙橋:曲中に遊ぶようになりましたね。遊ぶっていうのは、アレンジを入れるっていうことなんですけど、メンバー同士で目を合わせてそういうのを結構入れるようになって。その場のお客さんの空気を見て、例えば"思ったより盛り上がってるな"って感じたら、アクセントをつけてフレーズに動きを出したりすることもあります。そういうことをやるようになったのも、今回のツアーからでしたね

鳥山:そのひとつ前のツアーはセトリも変えずに、結構ガチガチで固めていったんですよ。そこで土台が固まったからこそ、遊べるようになったっていう感じですね。

-今語っていただいたライヴに臨む姿勢の変化は、今回の作品の"一緒に楽しむ"というテーマにも影響していますか?

長谷川:もちろん影響してます。あと、次にまわるのがワンマン・ツアーだっていうのが先に決まっていたのも大きかったです。僕はもともと、曲の中で(お客さんに)手拍子をさせたり、合いの手を入れさせたりすることに対して、あんまり必要性を感じてなくて。というのも、数年前に知り合いから"手拍子をさせるということは、「手拍子をする」ことにお客さんの意識が向くということ"、"だからその間、君の歌を聴こうという意識が数パーセント削がれる。それをわかったうえで判断したほうがいいよ"って言われたことがあって。そう聞いたとき、"たしかにその通りやな。だったら手拍子するよりも歌を聴いていてほしいな"って思ったので、そういう要素を曲の中に入れないようになっていったんです。だけど「三月のマーチ」(2019年リリースの1stフル・アルバム『DRAMA STORE』収録曲)をライヴでやったとき、みんなが間奏で手拍子をしているところを見ていたら、"この子たちは本当に俺の歌をちゃんと聴いていないんだろうか"、"いや、全然そんなことないよな"って思って。

-お客さんの姿を見て、今ならきっと大丈夫と思えたからこそ、みんなで一緒に楽しむことをテーマにした曲が生まれたと。

長谷川:そうですね。曲の一部をみんな(ファン)に預けてしまってもいいかもしれないと思えるほど、みんなのことが愛しくなってきたというか、信頼できるようになりました。

-1曲目の「Dancing Dead」は派手なブラスから始まる曲で、いきなり意表をつかれる感じがあります。

松本:『swallowtail』(2018年リリースの3rdミニ・アルバム)の1曲目「三文芝居」も最初に"え、何このバンド?"と思わせておいてサビまで行くと"あ、ドラマストアや"ってわかるような曲だったじゃないですか。あれに味を占めまして、今回もそれをやりたいなと(笑)。そのうえで、"僕らがまだ手を出してない意表のつき方って何かな?"って考えたら、ギター・ロックにブラスを乗せることかなって思ったんですよ。

-ギター・ヒーロー感の強いソロといい、キメのリズムやタイミングといい、ちょっとベタなことをあえてやってる感じがありますね。

髙橋:そうですね。カッコいいとベタの間を縫いながら探っていく作業はしました。"これはダサいからやめよう"、"これはギリギリいけるかな?"って言い合いながら。

鳥山:"ダサカッコイイ"を目指していった感じですね。

松本:サウンド・イメージはB'zです