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INTERVIEW

Japanese

阿部真央

 

阿部真央

Interviewer:石角 友香 Photo by 石崎祥子 ヘアメイク:橘房図 スタイリスト:HALKA

-なるほど。「君の唄(キミノウタ)」も「答」もサウンドはパワフルだし、「答」に至ってはラウド/エモ要素もあるので、ロックな阿部真央が戻ってきたなと。歌詞を作るプロセスと同時にサウンドのヴィジョンもありましたか?

そうですね、どっちもありました。「君の唄(キミノウタ)」の方は「Believe in yourself」のイメージだったので、どういうふうに音色を変えるかっていうのはアレンジャーさんにとりあえず任せて。「答」の方は、わりと得意な方向というか、昔から書きやすいタイプの曲なので、色のイメージで言うと赤黒茶色いみたいな感じでした。

-アニメ"消滅都市"は絶賛オンエア中ですが、こちらは観ました?

もちろん観ました。1話目で泣いちゃって。"ここでこう来る?"みたいな、謎のファン視点の涙(笑)。さすがに2話目からは涙は堪えましたけど。自分の曲がかかることももちろん嬉しいですけど、単純にゲームをプレイして、ゲームの世界がわかってるんで、ゲームのファンとして観てるところがちょっとあって。純粋に"ここをこういうふうに描くんだ"みたいな視点が多くて、完全にユーザー目線で楽しんでいます。

-それは大事なことかも。ゲームのファンの人はそういう気持ちでアニメを観ているわけで。

1話目から結構センシティヴなお話で。ゲームをプレイしてない人が観たら、"これはなんなんだ?"っていう問い掛けをしていく。そう問い掛けるアニメにしたいんだっていうのは、今回のアニメのプロデューサーさんが熱く語っていたことなんで、それがすごく体現されていて。だから(ゲームの)ユーザーとしてはニヤッとしちゃうというか、最初からストレートにわかりやすくしないところが私は好きだったんですけど(笑)。徐々に引きずり込むのかな? みたいな。初回放送はそういうふうに言ってる原作のファンの方も多くて、なんかいいな、と思いましたね。

-すごく現代的なテーマだなと思いました。

なので、歌詞にするのが結構難しかったです。セーラームーンがお母さんになった時代にクリスタル・トーキョーって街が登場するんですけど、最初に"消滅都市"をプレイしたり話を聞いたりするまでは、近未来的なあの感じに近いイメージが私にはあって。クリスタル・トーキョーは別に壊れてないんですけど、でも主人公のセーラームーンがお母さんになって、悩むような世界になっていて。ああいうちょっと冷たくて、文明が進みすぎている途方もないイメージだったんですよね。実際にゲームが進むとそういう世界にも行くんですけど、アニメではそこまで描かないのかもしれない。だから結末がまだ描かれてない物語に対して、曲を提供するってことだったんで、結構悩みましたね。"答"ってタイトルなのに、答えがないって曲なんです。

-"答"ってタイトルを付けたのは、曲を聴いていくとわかるから?

なんだろうな、答えなんかないのかもしれないし。でも目指す先にあるものを表現する言葉としてすごく適切だったと言うか。"未来"とかも明るすぎるイメージだし。だから"消滅都市"が持っている色に合う言葉とかをイメージにしたかったんです。"未来"とか"行き先"とかはすごく明るいもの、光の道みたいなイメージだったから、そうじゃなくてもうちょっと混沌としていて、どっちにも振れるようなもの。で、"答"って提示するとすごく絶対的なイメージというか、私の中では"数学の答"みたいな。"結果"とかだとPASTすぎるから、なんかドン! と押し印みたいにこの"答"って言葉がぴったりだなと思って。で、それが"ない"んだと。ただ、答えはわかんないけど、そこに向かっていく意志は明確にあって熱もあって、そこを描こうと、答えを描く視点を変えました。"それが何かはわからない"っていうのを前提に言わないともう成立しないな、みたいな感じだったんで、視点をくるくる変えて"何を言おうかな"、"どう言おうかな"っていうのは考えましたね。

-"消滅都市"はこれから立ち向かっていく先にいろいろな困難があるだろうことは想像できるわけで、それを人生に置き換えるという書き方なのかな? とも思います。

そうですね。打ち合わせをしたときに、制作のプロデューサーさんとゲームの開発に携わった方がいらっしゃって、"消滅都市"のゲーム自体が"それでも生きていく"っていうワードを最初に打ち出していたみたいなんですね。だから、その要素も入れたいって話を聞いて、それは人生そのものだなと感じていたんです。つらいことはいっぱいあるけど、でも止められない、進むことしかできない。"消滅都市"のゲームもずっと後ろの壁に押されるタイプで、進むしかない。なんか"そういうことか"と思ったんですよ。"それでも進むしかないんだ"って感じで書きたかったんですよね。

-そして弾き語りの「Flyaway」。これは歌詞がとてもシンプルで。

これは、カップリング用の曲を作らなきゃいけなくなって、何も浮かばなかったので息子に"ヒントをちょうだいよ"って言ったんですよ。そしたら"じゃあ飛行機の歌"って言われて"Flyaway~"って歌ったのがこれになったんです。

-息子さんは飛行機が好きなんですか?

たまたま言ったんだと思います。普段は消防車とかの方が好きなんで、"消防車の歌とか言われなくて良かった"と思って(笑)。私個人的にはこのクオリティの曲は、今までだったらボツにしてるくらいのレベルなんですよ。自分の中で捨て曲みたいなのは作りたくないから。ただ、それは嫌いとかじゃなくて、この曲だったら"サビで歌詞が少なすぎて"とか。自分の中に"曲とは"っていうのがあって、Aメロがあって1サビが来て、サビが4行ぐらいあってとか決めがちだったんですけど、10周年以降はそれを1回外そうと思ったんです。とりあえず作ったものは出してみるスタンスにしようと思って入れました。だからこれは"もっと飛びたい"、"もっとほんとの僕に向かって、今から飛び立ちたい"って内容なんですけど、歌詞の内容よりはこの曲自体を世に出すことが私の今のモードで、チャレンジするモード、なんでも出してみようっていうアウトプットのモードなんだというのを感じてほしいですね。

-鮮度みたいなものを大事にしようと?

そうですね。あと、自分のジャッジばかり信じていてもどうなるかわかんないから。デビューのときにそうだったみたいに"これ、ほんとにいいと思ってる?"と自分が思っていても人気になる曲とかもあったから、そういう感じでとりあえずできたら出すスタンスにしたいな、みたいな。それが自分にとっては、一歩先に進むことだったり、チャレンジすることだったり、飛ぶっていうことかもしれないから、とりあえずなんでもやっていこうと。この曲を出すこと自体が私のひとつの表現というか、そういうイメージですね。

-今回のシングルは間口が広がりそうですね。"この曲、誰なんだろう? あ、阿部真央って人なのか"というふうに。

そう。そうなれば理想的ですね。

-7月27日に大阪城音楽堂、8月31日には日比谷野外音楽堂でのライヴ"阿部真央らいぶ 夏の陣~2019~"も決定していますが、展望はありますか?

水分補給できるセクションを作りたい(笑)。快適にお客さんに観てもらえるように帽子を売ったり、冷たさを維持できる飲み物を売ったり。みんなが健康にライヴを観れる場を考えたいんです。全然、曲のセットリストのこととかじゃないんですけど(笑)。だから座れるようにとか、座ったときに日に当たった席が熱くなりすぎないように何か考えるとか。あんま無理してほしくない。フェス慣れしてる人はいいけど、そうじゃない人も来るかもしれないし。そこは今考え始めました。身体を大事にしてほしいです。

-優しい(笑)。阿部さんならではの野外ライヴ、楽しみにしています。