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INTERVIEW

Japanese

a flood of circle

2018年02月号掲載

a flood of circle

Member:佐々木 亮介(Vo/Gt)

Interviewer:沖 さやこ

自分がフロントマンで、このバンドの真ん中にいる限りは、みんなのアイディアを引き出せるような状態の自分でいたい


-『NEW TRIBE』をザブさんと録ったのも、渡邊さんの要望でしたよね。

今回のレコーディングにあたって、ザブとの2回のレコーディングを経て違うエンジニアとタッグを組んでみたらどうかという案もあったんですよね。でもナベちゃんが"今回もザブがいい。もう1回やりたい"というモードだったので、ナベちゃんがこれだけ言うならそれがバンドにとっての正解でしょ! ということで、今回もザブに録ってもらいましたね。このアルバムを録るにあたって、ナベちゃんのモードが大事だったから。

-というと?

ナベちゃん的には『NEW TRIBE』を録ったことで"もっとこういうことがしたかったな"というのがあったみたいだし......そのときにザブと相当打ち解けたんですよね。ナベちゃんは人見知りだから打ち解けるまでに時間がかかるんです。ここでほかの人を呼ぶとまたスタート地点に戻っちゃうから(笑)、ザブとの続きをしたい気持ちがあったんだと思いますね。

前回のインタビュー(※2017年1月号掲載)で、渡邊さんは"ザブは俺が聴いていた洋楽の音を一発で出してくれた"とおっしゃっていましたよね。

ナベちゃんはFOO FIGHTERSやQUEENS OF THE STONE AGEみたいな、アメリカの筋肉質でぶっといバンドの音に憧れていたんだけど、ザブが一発でその音を出してくれて――その快感がでかかったんじゃないかと思います。それはスタジオやエンジニアリングに頼らず自分たちで出さないといけないところでもあるんですけど、ザブはナベちゃんがそこへ向かうための扉を開いてくれたなと思っていて。ナベちゃんが楽しそうなら俺も嬉しいし、それがいいなって。

-佐々木さんのメンバーさんの意見の取り入れ方のスタンスと繋がると思うんですけど、佐々木さんは年齢や国やジャンルなどの音楽性を問わず、ひとつ筋が通った人をリスペクトしている印象があります。敬意を持っているからこそ真正面からぶつかっていく、切磋琢磨しようとする姿勢を持っているというか。それはイベントやツアーに呼ぶアーティストさんなどにも表れていると思います。

単純にそういうのが好きなんですよ。自分にとってのルール......とまではいかないけど、知らないとかわからないということを前提にしていろんなことをやっているんですよね。例えば、○○というバンドを好きな人がいるとして、その人は○○以外にも好きなバンドがいるはずだよな? と思うんです。俺の方が○○についての知識が多かったとしても、そうじゃないことはこの人の方がたくさん知っているだろう――すべてにおいてそういう前提が俺にはあるんですよね。そうするとマジで年齢とか関係なくて。年下でも俺がしたことのない経験をしているはずだし、もちろん俺はその人が経験したことがない経験をしているからその話がしたい。そうしたときに拒絶する理由はない。むしろもっと知りたいと思う。

-佐々木さんはそこに面白さを感じる。

例えば、政治のことを話すとしても"これはこうでしょ"と決めつけるよりは、"俺はこう思ってるんだけど、きっとこの人はこう思っているだろうから俺とは反対派なんだろうな。けど俺が知らない理由が何かあるはずだ"と話した方が面白いし、自分が成長できるような気がしてる。それがリスペクトなのかはわからないけれど......尊重しているということなのかな。

-AFOCの活動にも音楽にもライヴのMCにも、"主張"だけではなく"問い掛け"があるなと思うんですよね。それは尊重があるからできることなんだろうなと。

なるほど。映画でもなんでも、"これはこうだ"と答えをひとつ突きつけられるよりは、問い掛けがあるものが好きですね。主張ももちろん必要だし、問い掛けだけだと弱いからそこはバランスかな。"こういう答えが出たんだよ、でも俺はここがまだわからない。あなたはどう思う?"という投げ掛けをするのは大事かもしれないですね。"わからないこと、知らないことが面白い"という感覚は前々からずっと持っていたけど最近ようやく言葉にできるようになって。それはアメリカでソロ・アルバム(※2017年8月リリースの1stミニ・アルバム『LEO』)を作ったのがすごくでかい。アルバムを録ってくれたエンジニアのLawrence "Boo" Mitchell(通称:Boo)は人のことをすべて受け入れるタイプの人だったんです。ザブとBooの共通点なんですけど、彼らは人に機嫌をとってもらわない。自分で自分の機嫌を良くするんです。

-自分自身でしっかりとメンタル・コントロールをするということですか。

エンジニアリングの仕事にも面倒なことやつらいことはあるはずなんですけど、ダルそうな素振りを見せることがない。最初から"みんなどうだい? 楽しもうぜ!"という明るいモードで来る。だからいい空気になるし、彼らはそういうモードだから、人の話を聞くんです。頭ごなしに"それやっても意味ないよ"とはひと言も言わず、人のアイディアも全部試す。やってみて良ければ採用するし、やってみて使えなさそうだったら"だめだったね~"って(笑)。自分で自分のスイッチを入れて、みんなの意見を聞いて、みんなのアイディアを試す。AFOCも自分がフロントマンで、このバンドの真ん中にいる限りは、みんなのアイディアを引き出せるような状態の自分でいたいと思う。それはアメリカやロンドンで感じたことですね。

-そういうものは、音源にも影響してきますよね。

めちゃくちゃあると思います。険悪なときは空気が重いから何も言えなくなるんですよね。でもいい空気のときはぽんぽんいろんな言葉やアイディアが出てくるから、片っ端から試せるし。裏を返せば、険悪なときってアイディアがないときとも言えるんですよ(笑)。アイディアも何も生まれなければ、音が良くないのもそりゃそうだ、って感じ。俺たちはバンドだから、誰かのイメージ図を再現するためにやっているんじゃなくて、"イメージはもうあるから、そこからさらにみんなで、何が起きるかわからないことをやろう!"というのがレコーディングやライヴかなと思っているんです。みんながテンション高くアイディアを出し合えたらすごく面白くなるし、サブやBooとのレコーディングで改めて"想像以上のことが起こるのが音楽のいいところだな"と思いましたね。