Japanese
阿部真央
Interviewer:石角 友香
子供を産んで、大きな愛を歌うモードになるかと思ったら、ちゃんと汚いところもあってよかったなって
-そして次の「この時を幸せと呼ぼう」の"誰もすり抜けられなかった 僕の何かを飛び越えて"ってフレーズで"良かった!"と思えたというか(笑)。
あはは! 最初は不安だったけど、っていうね。
-たしかに誰もすり抜けられなかったりするじゃないですか?
全然すり抜けられない、ほんとにそう思ったんですよ。最後の壁、誰もすり抜けてないなと。だけど、すり抜ける前に飛び込んできたよね、お腹にっていう。実は妊娠中に書いた部分なんですよね、そこは。で、産まれてから書き上げたんだけど、お腹に子供が宿ったときにほんとにいろんなものを飛び越えて、実質的にも精神的にもいろいろ飛び越えてきたなみたいな、そういう感覚があったから書いたんです。
-それってすごいことですよね。恋愛や、いろいろと出会う人や、芸術とかもそうかもしれないけど、実体のあるものとして初めて飛び込んできたわけですね。
SMAPの「らいおんハート」(2000年リリースの32ndシングル表題曲)じゃないけど、誰も寄り添えなくて心の自分でも触ったことのないところに宿ったみたいな、なんかそういうイメージ。
-お子さんが産まれた女性アーティストの作品で一番、真正面からきた印象があって。Charaさんの愛の表現とかも好きですけど、阿部さんの作品から漂う真実味って、人によるかもしれないけどぶっ刺さりました。
あ、ほんとですか(笑)? わりとストレートな感じですかね? なんか私もお母さんになったらもっとオーガニックな感じになんのかな、と思ってたんですよ。
-オーガニックってすごい予想ですね(笑)。
あはは! オーガニックっていうか、全体的に少し大きな愛を歌うみたいなモードにしたくなるのかな? と思ってたんですけど、ちゃんと汚いところもあって良かったなと思いました。
-そして後半は「女たち」(Track.12)を始め、広く女性に向けてというか。阿部さんが書く曲に"○○たち"ってニュアンスはこれまでなかったと思うんです。
なかったですね。まず、これはドラマの主題歌(※高島礼子主演のテレビ朝日系木曜ミステリー・ドラマ"女たちの特捜最前線")のお話をいただいたんですけど、私すごくそのドラマが好きだったんですよ。スペシャル・ドラマとして1回放送されたものが連ドラになったんですけど。で、これは完全にしっかりと書き下ろした曲なんですね。そのドラマに合う、というか私がそのドラマから受けたインスピレーションで書こうと思って。このドラマって結構、お茶飲みながら主人公の3人の女性が井戸端会議みたいなのをしつつ、事件を解決しちゃうみたいな感じなんですけど、そのシーンが最初に思い浮かんで。女の人って人にもよるんですけど、少人数であれ大人数であれ、誰かと話してストレス発散をするっていうのが多い生き物だと思うんですね。仲の良い人とかだと、例えば電話して"いついつ空いてる?"、"あぁ、空いてる空いてる"って約束を取りつけるだけじゃなくて、"ちょっとこないだこういうことがあってさ、ま、それも今度話すわ"って感じが多いじゃないですか。その括りというか、その"明日言うね"みたいなニュアンスをサビに入れて。男の人はあまりそういうことなくないですか? でも女の子はそこのちょっと先まで言って、あとはもう会って話すみたいな、それが女性らしさだなと私は思ってて。そこからダラダラ始まっていく会話、なんかそこを出したりしたかったんだよねぇ。だから一番言いたかったのはそのへんですかね? 話すことによって解決したり、また強くなったり、発散したりしていく女性像。ドラマのストーリーにストレートに沿ってるわけではないんですけど、すごくインスピレーションを受けたそのシーンが私の中で強くて。そこで話そうとしてる女たちの中に私もいて、話そうとしてるのは"最近私がつらかったこと"みたいな(笑)。で、"腐ったとこから切り捨てる"とかが出てきて。
-"女に鎧はいらない 腐ったとこから切り捨てて 進むの"というフレーズですね。
男の人にはあった方がいいと思うんですよ。やっぱ外で戦ってる人たちだから。それが男の強さでもある、っていうところを逆にイメージして、じゃあ女の人は鎧じゃないと思って書いたんです。だからそれは"鎧はなくていい"って言いたかったわけじゃなくて、男の人には鎧があるけど、女の人はそうじゃないなぁと思ったから書いた歌詞っていうイメージかなぁ。それぞれの強さに魅力があるんだけど、私の短い人生経験の中でのイメージで女の人の強さとか、女の人の生き方みたいなのも思って書きましたね。
-アルバムを作り上げてみてどうですか?
全体的に、今までの中で一番満足してるかもしれないです。楽曲もそうなんだけど、ヴィジュアルとかに無理がないというか。だからアルバムに対しても正直に楽しく喋れる。『おっぱじめ!』(2015年リリースの6thアルバム)のときもフラットだったんだけど、よりフラットに紹介したい感じですね。前は聞かれたらフラットに答える感じだったんですけど、今回はすごく自分が無理なく"これはね"ってちゃんとお話ししたいなと思うアルバム。それだけ好きなんだと思います。
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