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INTERVIEW

Japanese

ircle

2017年01月号掲載

ircle

Member:河内 健悟(Vo/Gt) 仲道 良(Gt/Cho) 伊井 宏介(Ba/Cho) ショウダケイト(Dr)

Interviewer:山口 智男

-伊井さんのベースもかなり男らしくルート弾きで突き進んでいると思いきや、ハネるフレーズを織り交ぜるなど、実は結構凝っていますね。

伊井:ルート弾きって好きじゃないんですよ。飽きちゃうんです。だからルートで動かしつつ、どこで遊べるか、その隙を突く作業が結構楽しかったです。ルート弾きと思わせて、実はめちゃめちゃ動いているところもあるんですよ。ルート音を鳴らしながら1弦、2弦で違う音を出しているように聞こえる、楽器がふたつあるような感じが好きなんです。例えば、「覚醒」(Track.3)は基本的にルート弾きなんですけど、イントロで仲道君が先にリフを持ってきたんで、じゃあルートを弾くか、軽く8分で動くか、16分でガチャガチャやるかって考えながら、歌が入ってからもルート弾きじゃ面白くないと思ってスラップを入れて、これでどうだって。

仲道:それに対して、メンバーもいいじゃんって。飛び出ているとは誰も思わなかったです。

伊井:無理矢理ですけどね。

-いや、ポスト・パンクっぽいファンク・サウンドになってかっこいいですよ。

ショウダ:ドラムも、わかりやすい=簡単という発想じゃ面白くないから、複雑なことをいかにわかりやすく聴かせるかってところが、今回これまで以上に表現できたと思います。単純じゃないやり方で言葉だったり、風景だったり、伝えたいことをこれまでよりもわかりやすく表現できたんじゃないかな。

-ショウダさんが考えるベスト・プレイは?

ショウダ:どの曲にも、このフレーズをクリアできれば、その曲はクリアできるってフレーズを入れているんですよ。だから、中学、高校でバンドを始めて、ircleのコピーをやろうってなってくれたら楽しいと思います。難しすぎると挫折しちゃうけど、頑張って練習して叩けるようになったとき、達成感があるようなフレーズが全曲に入っているので、ぜひ挑戦してみてほしいですね。あと、今回は音色にこだわれたので満足してます。例えば、「一夜完結」(Track.5)はスネアだけにこんなにマイクを立てるかってぐらい立てて、スネアの音以外の倍音だけを狙って録ったんです。それをミックスして、序盤から徐々にその倍音の感じが強くなることで夜が深いところに行くところが表現できたんで、マニアックなところではあるんですけど、聴いてもらえたら嬉しいですね。

伊井:1回目はスネアの音が野暮ったく聞こえるかもしれないけど、聴けば聴くほどクセになる。そういうところが楽しいんですよ。1回だったらわからないけど、2回、3回と聴いていけばいろいろな発見があると思います。

-聴きながら、メンバーそれぞれにいろいろな音楽を聴いていることがわかりました。そこも聴きどころだと思うんですけど、今回、河内さんはヴォーカリストとしてどんな挑戦がありましたか?

河内:レコーディングで考えるのは、曲のイメージを再現することだけ。以前は広いイメージを作れずに、部屋でひとりで歌っているだけじゃんって感じだったんですけど、最近はそれができるようになってきたんで、音程はあまり気にせず......気にしないでもいいレコーディングをさせてもらっているから挑戦と言うよりは、そういう歌が歌えた瞬間、その曲のレコーディングは終わるんで。でも、歌を吹き込むのは楽しいですよ。昔は、どうやって歌えばいいんだろうって結構苦しかったですけど。

仲道:今回、スケジュールの都合でヴォーカル録りのために広いスタジオを取れる日が1日しかなかったんですよ。ヴォーカルを録るときは僕がディレクションするんですけど、歌っている後姿を見ながら、あ、今日1日で終わりたいんだなって思いました。そしたら6曲を1日で録り終えたんですよ。普通に考えたら無茶じゃないですか。そしたら6曲歌い切ったんで、いい精神状態をコントロールまではできないですけど、それを作れるよううまく促すことができたのかなって。

河内:ヴォーカルなんて気持ちが乗っているときじゃないと、音程すらズレますからね。今日じゃないとっていう瞬間がその日だったんですよ。

仲道:今まで以上に心の安心ができている声になった音源だと思いますよ。

-「一夜完結」のファルセットを交えながら情感たっぷりに歌い上げる歌が良かったです。

河内:歌詞も幻想的なんで、そういう空気を出せたらと思いました。夜に溶けていきそうな表現になりましたね。


ircleって金色って感じでもない。"ドブネズミみたいに美しくなりたい"みたいなイメージなのかな


-ところで、"Copper Ravens"というタイトルはどんなところから? 「Blackbird」が自分たちのバンドのことを歌っているように聞こえるから、アルバム・タイトルもバンドを象徴しているのかなと思ったんですけど。

河内:伊井ちゃんが言い出したんですよ、こんなタイトルどうかなって。

伊井:レコーディングが終わったらちょうど夜が明けるときで、カラスがいて、朝日が昇るそのオレンジ色がすごくいいなと思ったんですよ。

河内:アルバムも「orange」で始まって、「Blackbird」で終わるから"Copper Ravens"ならぴったりだってなりました。"Copper Ravens"って高校生ぐらいのころから、地元でライヴをやっていたバーの店名なんですよ。ほぼ生音で(演奏する)みたいな店だったんですけど、俺たちの走り出しにも繋がるし、それなら全部収まるんじゃないかってなったんです。そのあとこのタイトルに決めてから、"COPPER RAVENS"の店長に由来を聞いたら、"1位にも2位にもなれないカラスみたいな人間が3位の銅メダルでもいいから、しこしことみんなで頑張っていこうよって自分の手で店を作ったんだ"って言っていて、それめちゃめちゃぴったりじゃんって勝手に感動しました(笑)。

伊井:ircleって金色って感じでもないし。輝かしいバンドになりたいかって言ったら、俺、そうでもないかなと思ったんですよ。"ドブネズミみたいに美しくなりたい"みたいなイメージなのかな。その美しさって最近のバンドにはあまりないし、みんな煌びやかになっているし。

仲道:前に進むためのミニ・アルバムに昔からのゆかりのあった場所の名前がつくって、それも美しいことだと思って、4人が4人、そのときしっくり来たんですよね。

ショウダ:しかも2017年は酉年なんですよ! それを知ったとき"うぉー"ってなって、これはもう2017年を代表する1枚になるんじゃないかって思いました(笑)。