Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

INTERVIEW

Japanese

PELICAN FANCLUB

2016年06月号掲載

PELICAN FANCLUB

Member:エンドウ アンリ(Gt/Vo) カミヤマ リョウタツ(Ba)

Interviewer:松井 恵梨菜

-今作では歌詞を生き生きと聴かせたいという部分に重きを置いてそれぞれの解釈をフレーズに落とし込んだそうですが、具体的にどのようにして考えていかれたんですか?

エンドウ:例えばドラムのシミズ(ヒロフミ)君だったら、"ここにこういう詞がくるからこういうフレーズになる"とか、"ここにこのギターがあると歌詞が入ってこない"とか、そういう細かいやりとりをカミヤマも僕もクルちゃん(クルマダ)もやってましたね。

カミヤマ:前まではなんとなく作っていた部分も結構あったんですけど、今作はレコーディングの前にかなりきっちりと作り込んできて。"ここの休符はもっとずらした方がいいね"とか、アレンジのパターンをいくつも考えて、その中から選びました。

エンドウ:前作でも、僕は"本当にかっこいい、これは100点満点だ"って思えるようなことをやったんですけど、そう思っていたのがメンバー全員ではなかったんですね。だから今回は4人が100点満点だって思えるものにするために、各々のパートがすべて前に出てきて、脇役がひとりもいないようなアレンジにしました。

カミヤマ:前作も個人的にめちゃくちゃ好きなんですけど、それでやりきった感があったから、次は別の方向に進みたいなと思ったんです。だから、前作がなかったら今作は生まれてなかったですね。

-今思えば前作は、1stミニ・アルバム『ANALOG』(2015年1月リリース)からのステップに感じたんですよね。前作だと「Dali」もすごく意外だった曲で。そこで開き始めたドアが、今作でさらに開いたような印象でした。

エンドウ:なるほど。前作に入っている曲は、わりと『ANALOG』を出す前からあった曲ばかりだったので、自分たちからすると、あのタイミングで出さなかっただけっていう感覚が強いんですね。だから、アルバムごとに対になっているイメージなんです。雰囲気も、前作がふさぎ込んでいる感じだったら、今回は"裸"、みたいな。

-そんな中でもアップデートされた部分はあると思うんですが、前作のリリース以降に新たに影響を受けた音楽はありますか?

エンドウ:気持ち的に明るくなれる音楽を求めていたというのがあって......LETTING UP DESPITE GREAT FAULTSやCHVRCHESをよく聴いていました。Kanye Westの新作もめちゃくちゃ好きで聴いていましたね。あと、前作から引き続きBEACH FOSSILS。僕はその元メンバーであるZachary Cole Smithにすごく憧れを抱いていて、服装も、髪型も......その人がやっているDIIVっていうバンドもすごく好きなんですけど、そのギターのフレーズとか、作り方とか、かなり影響を受けています。今作で一番影響を受けたのはLETTING UP DESPITE GREAT FAULTSですね。でも何より僕はCOALTAR OF THE DEEPERSのフロントマンのNARASAKIさんが作る楽曲を心から愛していて、本当に影響を受けました。もう、すっごい好き!

-すっごく伝わってきます(笑)。歌われる際もNARASAKIさんを意識されてるんですか?

エンドウ:歌うときは意識してないです。歌は、COCTEAU TWINSのElizabeth Fraserさんの歌い方がずっと前からすごく好きで影響を受けていますね。でも歌に関しては、今回は影響を受けた方々がどうのっていう話じゃなくなっていました。今までは少し作ったような歌い方をしていた部分もあったんですけど、今回は言葉を吐き出すという意識を持ってレコーディングに挑んだんです。「記憶について」とか特にそうですけど、説教にならない程度に感情をぶつける歌い方をしました。

-たしかに、「記憶について」は熱っぽい歌い方になっていたのが印象的でした。中でも"目に見えない物を信じたい"というフレーズが心に残ったのですが、エンドウさんにとって"目に見えない物"のイメージは具体的になんですか?

エンドウ:脳でしか判断できないものですかね。小さなことで言えば、"熱い"って目に見えないじゃないですか? 大きなところだと人との信頼関係とか。でも「記憶について」で一番言いたい"見えないもの"は、やっぱり"記憶"なんですよね。記憶って、"もしかしたらこうだったかもしれない"って言われ続けたら"そうだったかもしれない"って思いこんじゃう場合もある。......カミヤマ、昨日渋谷にいたでしょ?

カミヤマ:いや、いないけど......。

エンドウ:いや、いたでしょ!......って言い続けたら、たぶん信じると思う。

カミヤマ:ああ、"いたかもな"ってなっちゃうかもしれないですね(笑)。

一同:(笑)

-記憶って不確かなものですもんね。

エンドウ:記憶って、"今"が作るものじゃないですか。今っていうものが過去を作ってるし、今があるから未来があるわけだし。未来も過去も、頭の中にしかないし、頭の中にしかないからこそ信じたい。でも、"信じる"じゃなくて、"信じたい"なんですよね。その違いは歌詞のとおりなんですけど、運命は言い訳でしかなくて、偶然がすべてで。運命がなんなのかわからないから、信じ"たい"なんです。でも記憶なので、最終的には"忘れないでほしい"っていう思いが強いです。いつでも頭の中にいたい。だから、今を意識したいって思うんですよね。

-今作で、「記憶について」以外に"今"への思いを特に強く感じたのは最後のTrack.8「今歌うこの声が」で。この曲によって今作で言いたかったことを総括した印象で、「記憶について」とリンクしてきれいにアルバムを締めくくる1曲だと思います。

カミヤマ:「今歌うこの声が」がアルバムの軸になっている気がしますね。

エンドウ:この曲の仮タイトルが"BALLADE"だったんですよ。だから、アルバム・タイトルが"OK BALLADE"なんです。