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INTERVIEW

Japanese

フラワーカンパニーズ

2015年09月号掲載

フラワーカンパニーズ

Member:鈴木 圭介(Vo) グレートマエカワ(Ba)

Interviewer:天野 史彬

-「東京ルー・リード」には、"そういやあんた言ってたね もっと冒険してみなよって/だけどやっぱり俺は違う 死ぬまでこっちでやってくよ"というラインがありますよね。Lou Reedと言えば、やっぱり「Walk On The Wild Side(邦題:ワイルド・サイドを歩け)」だと思うんです。あの曲って、Lou Reedの代表曲である以上に、ロックンロールのひとつの価値観を象徴する曲でもあるじゃないですか。でも、そことは違う価値観でロックンロールを鳴らしてきたのがフラカンだった......この「東京ルー・リード」は、そういうフラカンのバンドとしての生き方を歌った曲なのかな、という気もしたんです。

鈴木:Lou ReedとかJim Morrison(※THE DOORSのヴォーカル。1971年に27歳の若さで死去)みたいな人に、1番ダイレクトに影響を受けていたのは、メンバーの中では俺だと思う。俺、ロックの世界のジャンキー大好きだったもん。普通に畳の上で親戚に見守られながら死ぬよりも、ひと昔前の、ボロボロになって死んでいくミュージシャンの方がカッコいいと思ってた。かと言って、自分がジャンキーだったかというと、そうじゃなくて。俺たちはそっちのタイプじゃないんだよ。俺らがバンドをやり始めたときって、まぁ、名古屋のひと握りではあったんだけど、THE DOORSとかTHE VELVET UNDERGROUNDを好きな人が多くて。そういうのを好きな人って、そっちの世界、ドラッグ・カルチャーみたいなものに惚れていくんだよね。でも俺は、その世界にどこかで憧れながらも、足を踏み出せない自分もいるっていう感じだった。何故なら、警察に捕まりたくないから。

一同:(爆笑)

グレート:名言だよ、"警察に捕まりたくないから"(笑)。

鈴木:俺、警察に捕まるのが絶対に嫌なんだよ! 法律を犯すことはなんとも思ってないし、ちょろまかしくらいなら平気で......まぁ、今はやらないけど(笑)。だけど、逮捕されるのは絶対に嫌なの。だって、今の状況で誰か捕まっちゃったら、めちゃくちゃ迷惑かけるじゃん! メンバーに迷惑かけるし、アルバムは全部廃盤になるし......だから、ありえない。そっちには行かない。でも、ずっと憧れはあったし、そっちの世界に行けなかったことに、後ろめたさも感じていたわけ。20代のころは、"ジミヘンなんて、キメて聴かないとわかんないよ"とか言われて誘われても、絶対に断っていた。クスリは絶対にやらなかったし、"じゃあ、クスリをキメたら名曲できるのか?"って......そんな話、何回もしてきた。自分が臆病だったのかもしれないし、そっちの世界に行ってしまった人は、もっと臆病だったのかもしれない。それはわからないけど、でも、溺れていく人たちに憧れてきた自分と、そっちに行けなかった自分がいるけど、この歳になるともう、そこに後ろめたさを感じることはないからね。日常を切り離すんじゃなくて、あえて日常と地続きでいることで、フラカンは始まっているわけだし。そんな自分を、この曲でやっと肯定できたかな。

-そう考えると「東京ルー・リード」は、フラカンの根源的な部分にタッチしながら、今まで鳴らせなかったものを鳴らしている曲なんですね。そして、ラストを飾るTrack.7「無敵の人」の話もしたいんですが、この曲は"頑張ってる人に かける言葉はない"と歌いながら、その実、すごく実直に"頑張れ"というメッセージを投げかけている曲のようにも思えたんです。

鈴木:この曲が最初にできたんだけど......まぁ、若い人に向けて歌った曲なんだよね。この先を作っていく人たちに向けて、というか。なんだかんだ言っても、俺たちはもう40代だからね。もちろん、自分たちが一丁上がっちゃったとは思ってないけど、でも、新しいものって、若い人たちが作っていくものじゃん。ただ、彼らに向けて"頑張れ"とは歌えないんだよね、恥ずかしくて。それに、俺が"頑張れ"って歌うのもどうかなぁと思って、いかに"頑張れ"という言葉をストレートに言わずに伝えられるかっていうことに挑戦した曲。クサいっちゃクサいんだよ。でも......やっぱ、歳取ってきたんだよ。

グレート:俺は、この曲は新しいなと思ったんだよね。今までの俺らの曲って、鈴木の日記みたいなものだったじゃん。鈴木が"俺はこうだ"って歌うのを、リスナーが自分に置き換えて共感してくれたんだけど、この曲は鈴木が自分のことを歌っているわけじゃないし、かと言って"頑張れよ"ってストレートに言っているわけでもない。でも、"頑張ってる人は それだけで未来だ"って歌っている......その感じが、すごく素直な歌だなって思った。

-今日の話を聞いていると、若い人に向けて音楽を紡いでいく意識が強くなっているように感じるんですけど、どうですか?

鈴木:その気持ちは強くなっているし、明確にあって。俺、一緒に暮らしてないけど、息子がいるからさ。息子は今、中3なのね。もう、結構大きくて。そういうのを間近で見ているから、今までは自分のことばっかり歌ってきたけど、それだけではいられなくなるんだよね。例えば憲法が変わった場合、息子が徴兵に取られるかもしれない......そんなことも考えたりするし。自分の身近に若い人がいるからこそ、若者へのメッセージは増えてきたかもしれないね。で、それが新鮮でもあるんだよね。今までは、あんまり先のことを考えなかったから。

グレート:自分たちだけの話だったら、あと20年とか30年生きて、勝手に死んでいけばいいのかもしれないけど、それだけでは終わらないものがあるのであれば、この先の世の中がよくないと困るのは自然だもんね。もちろん、自分らの好きなことをやっているんだけど、この先、10年20年30年とフラカンを続けていって、俺らみたいなバンドがもっと下の世代に対して面白い存在になれるんだとしたら、まだまだ頑張らないといかんな、とも思うし。俺らは音楽に育てられたからね。それはもう、CDが売れないとか、そういう問題ではないんだよ。音楽が上の世代から俺らの世代に受け継がれて、また下に続いていく......それは文化的に見て最高なことだと思うから。それを、俺らは俺らのやり方で伝えていけたら面白いんじゃないかっていうのはあるよね。

鈴木:あと、前のアルバムの「マイ・スウィート・ソウル」って曲もそうだったんだけど、大層なことを言っているように見えるけど、実はそんなことでもなくて。単純に、自分の息子に面と向かって"頑張れよ"って言うのは恥ずかしいから、曲を使って言っているんだよ(笑)。新譜作ったら聴いてくれるだろうし、わかってくれるだろうって。俺は一緒に暮らしてないから、余計その想いは強いだろうね。