Japanese
フラワーカンパニーズ
Skream! マガジン 2015年06月号掲載
2015.04.18 @日比谷野外大音楽堂
Writer 天野 史彬
それは、すでに日も暮れた時間帯のこと。ライヴも終盤に差し掛かった14曲目、演奏されたのは「夜明け」。周囲は段々と暗闇に包まれていく中、照明に照らし出された野音のステージの上で、鈴木圭介(Vo)、グレートマエカワ(Ba)、竹安 堅一(Gt)、ミスター小西(Dr)の4人は、向かい合って長い長いアウトロを奏でていた。いつもはハンドマイクの鈴木もギターを掻き鳴らしていた。あのとき、あの瞬間、向かい合う4人の男たちは何を思っていたのだろう? 何を確かめ合っていたのだろう? こればっかりは正直、わからない。どんな推論も無用だろう。ただ、あのとき、音の洪水の中でフラワーカンパニーズは、何度目かの夜明けを迎えていたのだと思う。共に歩み続けた25年間を経て、26年目へ。その変化の刹那、夜から朝へと変わるとき、白み始める空を、澄んだ空気を、ステージ上の4人だけは感じていたんだと思う。25周年イヤーの最後を飾った日比谷野外大音楽堂ワンマン。もっとも美しい光景がそこにはあった――。
2年前の4月に行われた野音ワンマンは、春とは思えぬ異例の寒波に襲われたが(でもライヴは最高だった!)、今年は快晴。きっと、鈴木が前日の夜に鼻をかんだ後のティッシュで作ったという"てるてる坊主"が効いたのだろう......きっとね。ライヴは「はぐれ者讃歌」~「永遠の田舎者」の流れで勢いよく幕を開けた。この日の野音に集った、永遠のはぐれ者たる自分たちとオーディエンスを祝福するファンファーレのように、その屈強なサウンドが高らかに鳴り響く。続く「short hopes」と「地下室」は新作『Stayin' Alive』からのナンバー。『Stayin' Alive』は、フラカンの"本質"のみによって作られたアルバムだった。フラカンの本質。それはひとえに、"生きること"を巡る問いかけである。"生きているのか? そして、どうやって生きるのか?(それは、"どう死ぬのか?"とも密接に繋がっている)"――これを問いかけ続けてきたフラカンが、結成25年目にして、いや、25年目だからこその純度と生々しさを持ってその問いかけを吐き出したアルバム、『Stayin' Alive』。そんなアルバムの収録曲が土台となったセットリストだったからこそ、この日のパフォーマンスからは、"生きたい"だけじゃなくて、"死にたい"だけでもなくて、そのすべてを内包した"生きている"という実感、そして"続けてきた"じゃなくて"続いている"という現在進行形のフラワーカンパニーズが今、自分の目の前にいるのだという実感を強く得ることができた。そして、そこにはまるで、ロックンロールを演奏することで"俺たちはこう生きる"と、フラカンが彼ら自身の問いに自ら答えているような、そんな力強さもあった。
斉藤和義との共作曲「この世は好物だらけだぜ」における、鋭いエッジを立てつつも軽快なロックンロール節。あるいは、"生=祭り"とでもいうような、人生の悲喜こもごもすべてを彩る大らかさと共に鳴らされた「切符」の泣き笑い感に溢れたギター・リフ。「死に際のメロディー」、「LOVE ME DO」、そして"キリン のどごし オールライト"のTVコマーシャルで鈴木が歌っているRCサクセションのカバー「すべてはALRIGHT(YA BABY)」で見せた、ロックンロールの甘美な魅力にうつつを抜かす、大人になり切れないわがままな子供のような姿。1950年代、どんなに生活が便利になり経済的に満たされても、人には満たされない想いがあることを知った若者たちが、その想いを形にすることで発展した音楽がロックンロールなら、この日、ライヴ前半でフラカンが見せた純度100%なロックンロール・モードは、彼らが25年間貫き通してきた、そしてこの先も貫き通すのであろう"ロックンロールという生き方"を、これでもかと見せつけるような痛快さがあった。甘いメロディ、その上をゆく情けなくも必死な想い、軽やかで踊れるけど、ちょっと情けなさもあるリズム......特に「LOVE ME DO」や「すべてはALRIGHT(YA BABY)」の持つシンプルさや楽天性がたまらなかった。"LOVE ME DO"や"ALRIGHT"なんて、あまりに単純で、それでいて複雑に入り組んだ言葉を、まるで口笛を吹くかのように口ずさみながら、フラカンはこの25年間を歩んできたのだ。ロックンロールを根拠に、ロックロールのやり方で。
ライヴが進行していくにつれ、ステージ上で描かれる世界も、その深度を段々と深めていく。『Stayin' Alive』収録曲の中で最もストレートなラヴ・ソング「感じてくれ」から、"感じることだけが全て 感じたことが全て"と歌う名曲「深夜高速」の流れで投げかけられた"感じろ!"というメッセージ。"生を描くために死を描く"というフラカンならではのパラドックスを最も体現するナンバー「祭壇」。その摩訶不思議なビートと不穏なメロディ・ライン、そして鈴木のぼやくような歌唱が導いた"この世とあの世の狭間"......つまり"整理できない今"そのものの世界。そして「未明のサンバ」から冒頭でも書いた「夜明け」の、夜から朝へ、音がグラデーションを描くように目の前の景色を塗り替えていくような覚醒感。大きく大きく大きく膨れ上がった表現力と、深く深く深く"生"という命題に焦点を絞り続けてきた世界観が重なり合った瞬間が、これらの演奏にはあった。中盤から後半にかけてのこの流れが、間違いなくこの日のハイライトだった。
そしてその先は、26年目の朝に新たな1歩を踏み出すように、そして駆け出すように、再び激しく獰猛なロックンロールが日比谷の闇夜を切り裂く。本編ラストを飾ったのは「チェスト」、「脳内百景」、「星に見離された男」、「マイ・スウィート・ソウル」の超アッパー・チューン4連発。特にフラカンのポップ・エッセンスがぎゅうぎゅうに詰め込まれた幕の内弁当的1曲「星に見離された男」、そして疾走する人生讃歌パンク「マイ・スウィート・ソウル」、これら2曲の持つ圧倒的な祝祭感は、今のフラカンだからこそ生まれたものなのだと実感する。喜び、悲しみ、苦悩、希望、絶望......ひとりの男の頭と心の中を覗き込むように、人間ひとりぶん、その等身大の"生"を奏で続けてきたフラカンの音楽は、リスナーひとりひとり、それぞれの"生"の歌でもあるのだ。ステージ上の4人を見つめながら一緒に歌ったり、拳を突き上げたり、勝手気ままに踊ったり、それぞれがそれぞれのやり方で、その演奏に返すオーディエンスの姿を見て、改めて実感する。フラカンの歌は"みんなの歌"ではないかもしれない。でも、聴いた人ひとりひとりの"俺の歌"になる。そういうものなのだ。
アンコールは、東京の夜に響き渡った名曲「東京の朝」の沁み渡るようなメロディで幕開け。その後、「ロックンロール」、そして「NUDE CORE ROCK'N'ROLL」でグルーヴを加速させ、ダブル・アンコール1曲目の「ファンキーヴァイブレーション」では"日比谷、下北、吉祥寺/新宿、恵比寿、そして九段下/三茶、駒込、小川町/四谷、梅島、馬喰横山"という東京版コール&レスポンスも披露。会場中に声と笑顔が溢れる。そしてラストと言えばお馴染み「サヨナラBABY」。合唱し、手を振り合うオーディエンス。25年目から26年目へと踏み出したバンドと、その瞬間を目撃したオーディエンスたちが交わし合った約束。このあともまだまだライヴはあるけど、やっぱり約束の場所は12月19日、日本武道館だろう。武道館のような規模も存在感も巨大な場所でライヴをやること。フラカンは、言ってしまえば、そんなことよりももっと大きくて、かけがえのない大事なものをリスナーに手渡してきたバンドだ。会場が大きかろうが小さかろうが、彼らが最高のライヴ・バンドであることにもはや誰も異存ないだろう。でも、だからこそ、この日の武道館は、バンドにとってもリスナーにとっても重要なものになるのではないだろうか。本当に大切ものを与えてきたバンドだから、本当に大切なものが何かを知っているリスナーだから、その大切なものを、この日は武道館という大きな場所にみんなで持ち寄ってみないか。きっとフラカンは何も変わらないと思う。きっと僕らも何も変わらない。だから、この日は集まって、その大切なものを確かめ合ってみないか。この日は、そういうメモリアルな日になるだろう。12月19日、筆者はすでに手帳に印をつけている。必ず武道館で会いましょう、約束だ。
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