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LIVE REPORT

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フラワーカンパニーズ

フラワーカンパニーズ

Official Site

2013.01.23 @WWW

Reported by 石角 友香

鈴木圭介はすごいヴォーカリスト、そしてすごい詩人だ。ライヴ終了後3割増でいい男に見えたぐらいに。その鈴木がライヴ後のブログで“心臓が飛び出るぐらい緊張した”と書いている。そりゃそうだろうと思う。ゲスト・ミュージシャンに加え、コーラスとストリングスを加えた編成かつ、Ustreamで全世界に配信、しかも…この日はライヴ・レコーディングまで行われていたのだから(その旨はライヴのラスト前に告げられたのだが)。“フラワーカンパニーズの気概ここにあり”である。

ドラマ“まほろ駅前番外地”オープニング・テーマとしても話題のシングル『ビューティフルドリーマー』のリリースに伴い開催されたこのライヴ。WWWのステージ上は大量の機材が置かれ、明らかに普段とは異なるムード。そこにメンバーに加え、サポート・ミュージシャンの中森泰弘(Gt)、スパム春日井(Percほか)、渡辺シュンスケ(Key)が登場。“いつもとちょっと違うことをするので。とりあえず1曲やってこのあと説明します”(圭介)の一言から、豊かなグルーヴが生まれた「春の手前」が披露される。演奏を終えると、シングルのリリースに際して何か面白いことをやろうという話が広がり、今回のライヴに至った経緯を説明。“今日は走ったり派手な動きより、歌うことに専念する”と断言したものの、Ustreamのカメラを気にしたり、それをグレートマエカワ(Ba)に突っ込まれたりして雰囲気はいつものそれだ。「あったかいコーヒー」「日々のあぶく」と、最近のライヴではレアな曲を聴かせる、しかもフラカンならではの男泣き系のナンバーが続く。続いて女性コーラスを招き入れると、フラゲの意味についてや、ライヴへの応募が5,000人に及んだ話で会場の笑いを誘う。緊張をほぐそうとしているのか、圭介とグレートのやり取りがいつも以上に面白いのは気のせいか。そして“ハッピーじゃない ラッキーじゃない”のサビも印象的な「ビューティフルドリーマー」が、どこかのどかな序盤から徐々にソウルフルでゴスペル的な熱気を伴っていく。続いては新作「ハッピーエンド」から、打ち込みのビートがドライに響く「エンドロール」の静かな狂気と再生の物語へ突入。たて続けにフラカンの存在意義を突き詰めたような「たましいによろしく」では、渡辺のシンセも大げさに聴こえないほど、演奏全体がシンフォニックですらあった。

そして女性弦楽カルテットを招き入れると、圭介は目のやり場がないようないたたまれない素振りで、ただでさえ喉を気遣ってマイ水筒からステージ・ドリンクを飲む回数が増えている(ように見える)。“フラカンには珍しい結婚式で歌える歌”と紹介された「落ち葉」では優しいアンサンブルを展開。終盤には“この曲はCDヴァージョンでやりたかった”(グレート)と、ストリングスとの共演冥利の「感情七号線」を凄まじいエモーションで展開。圭介は指揮者のような身振りで11人を束ねてゆく。出来がよかったせいか“この後もこれで回らない?”(圭介)“破産するわ!”(グレート)というやりとりを経て、本編ラストはカントリー・フレイヴァーたっぷりに「春色の道」で締めくくった。大所帯でのリハはたった3日だったにも関わらず、見事なダイナミクスを奏でた上にそんな厚いグルーヴの中でも屹立した歌を届けた鈴木圭介のヴォーカリストとしての力量に大きな拍手が起こった。

初めてのシンフォニックなフラカンに向けてやまないアンコールが贈られ、11人のメンバー全員が再登場。照明が暗く落とされた中、圭介以外のグレートも竹安(Gt)も小西(Dr)も楽器を手にしないという驚きの展開で「深夜高速」が滑りだし、圭介以外の3人はサビにコーラスをつけ、腹の底に重いものを感じると同時にどこまでも続く道に僅かな光を見出すような深遠なヴァージョンに。彼らが再発見されるきっかけになった名曲は様々なアーティストにカヴァーされ、トリビュート・アルバムも出たが、この曲を更新するのはフラカン自身しかいない、大げさに言えばそんなアレンジだった。曲が終わると一瞬、メンバーに安堵の色が見え、グレートがここで初めて“今日のライヴ、音源になります!”の告知に場内が沸き立つ。フロアが喜びに溢れる中、最後まで渾身かつ端正な演奏、そして最後には絶叫に近い感情を圭介が溢れ出させた「サヨナラBABY」で、この日のライヴは熱く幕を閉じた。シングルのリリース記念であると同時に、変わらぬ青臭さを抱えながらも今の年齢や経験からも目をそむけることなく、フラワーカンパニーズなりのシリアスな表現を刻んだ新作「ハッピーエンド」の核心にあるものをよりリアルに届けたようなライヴ。新作収録曲を披露するのとは違う方法で、最新のバンドの姿を見せる。ストイックに曲の世界に向き合ったこの試みの意味は大きかった。