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INTERVIEW

Japanese

SEBASTIAN X

2014年11月号掲載

SEBASTIAN X

Member:永原 真夏(Vo)

Interviewer:天野 史彬

-でも、今回は今までよりは直接的に描くようになってきてるんじゃないですか? 「ぼくはおばけさ」は、おばけっていうモチーフを使いながらも、すごく今の永原さんの社会に対する想いが明確ですよね。

たしかに。例えば1stに入ってる「食卓の賛歌」は、今聴き返すと、あのころはあんなに社会に文句があったのかって思うんですよ。ご飯の歌なのに、歌詞の中に"グーグル"とか出てくるし。でも、それは1番ナチュラルなアウトプットの仕方なのかもしれない。実際、自分が嫌だなって思ったことだから主観で語れるんですよ。語れるけど......主観に溺れたくないなっていうのもやっぱりあるし。その間で表現していくのは自分のやりかたですね。

-「ライダースは22世紀を目指す」には"平和を愛してるわ/デモには行かない代わりに/猫目のアイラインで跳ねる にゃお!"っていうラインがあって、ここで出てくる"デモ"っていう単語は、もしかしたら"グーグル"以来の具体的かつ社会的な単語じゃないですか?

そうですね。やっぱりデモに関しては行く/行かないで二極化されていくから。でも、行く人と行かない人でバトってるけど、行かないけどデモの対象をアンチだと思っている人だっているし、行くけど興味ない人だっているんですよ。たぶん、それが大半だと思う。私はデモとかは参加しないけど、平和主義だから戦争は絶対に嫌だし。ほんと、この歌詞のまんまですよ。特に若いお客さんを見てて思うんですけど、どうでもいいと思ってる子の方が少ないと思うんですよ。こんなに騒がれてて、今はTwitterとか知る手段はいっぱいあるわけだから。みんな"なんか嫌だな"って思ってる。でも、デモとかに参加するのもなんか違うなって思ってる。で、その子たちなりにちゃんと表現があるんですよ。お洋服にしてもそれぞれのスタイルがあって、それこそパンクスは夏でも革ジャン着るじゃないですか。それは何かの主張なんですよ。他にも私はこういうメイクをする"とか、そういうことで表現をしている細やかな輝きっていうのを閉じ込めたかった部分はありますね。デモには行かない代わりにアイライン。私はそこにこだわりを持つっていう......そういうひとりひとりの主張が何より大事なんじゃないかなって思うから。

-さっきのポエジーの話もそうですけど、明確に言語化されない力や想いをすくい上げようっていう気持ちが永原さんの中には強いですよね。

強いと思います。それぞれの人生の、それぞれの選ぶものにポエジーがあるんですよね。それは小さな表現のひとつだと思うし、自己主張のひとつだと思うから。そういうところを汲み取りたいなって思いますね。

-SEBASTIAN Xにとって、永原さんにとって、すごく大きなテーマですよね。それが今回、『イェーイ』というSEBASTIAN Xなりのポエジーとして形にできたんですね。

そうですね。ポエジーです。

-最後に聞きたいのが、「ラブレターフロム地球」の歌詞の中に"わたし発/当たり前経由 宛名の無いこの気持ちは スクランブルしたこの星の いつ どこに着地するの?"っていうラインがありますよね。明確なメッセージじゃなく、音楽が本来持つ言葉にできないポエジーを表現していくっていうことは、それと同時に自分たちの音楽の着地点がどんどんと漠然としていくことでもあるのかなって思うんですよ。

そうですね、うん。漠然としていってる。

-ポエジーを描くことは、その漠然とした感覚すらも背負っていくことでもあると思うんですよね。こういうメッセージを届けようとか、こういう層の声を代弁しようっていうことではないから。

うんうんうん......そっちに向かおうとしてますしね。ポエジーに関しては、明確な層がないんですよ。だから、逆にポエジーがないとどこへでも行けないというか......それは、活動していく中で強く感じた部分でもあって。なんだろう......漠然としたものの中に自分の音楽をポーンと投げてみる。そしていろんな反応をする人がいて、反応があること自体が嬉しいんだけど......やっぱり、自分の中でポエジーっていうものは覚悟のひとつかもしれないし、自分が音楽の中で1番愛している部分でもあるので。そこを強く信じてやっていくっていう、すごくシンプルな話かもしれない。

-でも、そうやってたしかな層のない場所に表現を投げていくのって、僕みたいな立場の人間からすると想像を絶するというか(笑)。単純に、すごいところに向かおうとしてるなって思うんですよ。だって明確な相手が見えないわけだから。それだけ孤独で、でも大きなものを背負おうとしてるのかな、とも思うんですよね。

えー、そうなんですかねぇ。じゃあやめようかなぁ(笑)。......でも、孤独とはあんまり思ったことないかもな。結局私は"孤独だよね~"とか言いながら、たまーに友達と深夜に1杯飲んだりするのが好きなんですよ(笑)。それでいいんだと思います。"結局、生まれてから死ぬまで人なんてひとりだよね。男なんて信用できないよ""だよねー!"とか言いながら飲んだりするのが好きなので、それでいいんですよ、きっと(笑)。まだ感覚が若いけど、30代40代になれば感覚も変わっていくのかもしれないし。この先、苦味、渋みも知っていくだろうと思うし。そのとき、自分がどう思うかはわからないですけど、今はこのままでいいかなって思います(笑)。